中州の川沿いの屋台の並びにある有名店「紀文(きぶん)」。東京で最も予約の取れない鮨屋のひとつである「東麻布天本」のお父様のお店です。
まさに屋台といったざっくばらんな雰囲気。基本的には常連客のみを相手にした商売だそうで、一見客は席が空いていたとしても追い返されたりする場合もあるそうです。もちろん私は人懐っこく可愛らしい兄ちゃんなので、初めましてでしたがスっと輪に加えて頂けました。一次面接は100%突破するタイプです。まずはビールにおでん。博多の屋台で飲み食いするのは10年ぶりぐらいなのですが、これが屋台かと驚くほどのクオリティの高さです。ビールも数種類を取り揃え、いずれもキンキンに冷えています。火元はもちろん洗い場もあり、このあたり屋台の設備の仕組みはどうなっているのでしょう。
ところで天本ファミリーはそっくりであり親子揃って好人物。快活な雰囲気や場を盛り上げるイケイケな空気感などを含め、DNAの偉大さが身に沁みました。「長男坊の店は親ですら予約できん」と、冗談交じりにこぼしていたのが何だか可笑しかったです。
「お!ロールキャベツ!」と盛り上がる常連たち。何でも仕込みが面倒な品らしく、滅多にお目にかかることはできないとのこと。「食べて食べて!」と、私の前にもひと皿まわってきました。これは大将からのサービスなのか他の常連客のオゴリなのかは不明ですが、いずれにせよ精神的に絶品です。
イワシの明太子焼き。十番「おにまる」のオリジナル料理かと思いきや、博多では割とメジャーなひと品らしいです。明太子が丸々イワシの腹に収まっておりビジュアル的にずるいです。
ところで私は両サイドの常連客に随分と可愛がってもらっていたのですが、その片方に対して大将が「昔からん大切なお客が今から来るけん、そろそろ帰ってもらえんね?」と爆弾発言。私はびっくりして固まってしまったのですが、「ああ、これはいつものことやけん。博多の屋台は長っ尻はせんばい。いくらお金ば使うていようと、長居すると追い出しゃる。客も慣れたもんたい」と、逆サイドの常連客に解説して頂きました。ちなみに本稿における博多弁は全て私のイメージです。
海老の天ぷら。屋台で天ぷら、しかもこんなに巨大な海老天にありつけるなんて。中目黒「キッチンパンチ」もかくやというサイズ感です。
けっこう飲み食いしたのにそのへんの居酒屋よりも全然安く、屋台という設備ハンディキャップを考えればびっくりするほど美味しかったです。加えて私は国内外問わず他人から話しかけられる天才なので、ソロで訪れたというのにすっかり楽しませて頂きました。独りの夜に、また来よう。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。