道玄坂のかなりいかがわしい戦闘地域にある「月世界 (げっせかい)」。中国の醤(ジャン)に注目した中華料理店であり、恵比寿で「中村 玄(なかむら げん)」などを手掛ける株式会社イイコの経営。看板は無く、軒先に並べられた食材やセイロが怪しさを増幅させています。
店内はバリバリの中華料理店というわけではなく、シンガポールあたりにありそうなコスモポリタンな居酒屋の雰囲気。価格帯が価格帯なだけにカジュアルな雰囲気であり、若者が手を叩き合って大笑いする騒々しい空間です。
今回は3,200円の「水煮肉片コース」を注文。「このまえ麻酔して胃カメラ飲んだけど、酒が強いからか効きが悪く殆ど意識が残っていた」と豪語する連れと訪れたので、+2,000円で飲み放題を追加。ビールはプレミアムモルツで、きちんとサーバーがメンテナンスされていてグラスも薄く、飲み放題とは考えられないほどのクオリティの高さでした。
アミューズに「酔っぱらいボタン海老」。いわゆる海老の紹興酒漬けでありドロリとした味覚に病みつき。3,200円のコースの前菜にボタン海老が出せるってすげえな。
葱油鶏。鶏肉を酸味のあるソースでヒタヒタにし、これでもかというほどネギをぶち込みます。私は野菜ではネギを最も好むので、どうあがいても幸せな状況でした。軒先のセイロでもくもくと蒸されていたお野菜。かなりのボリュームであり、鍋に着手する前のベジファーストとして嬉しい。竹炭塩や生姜醤で食べるのもナイスです。
主題の「水煮肉片」。肉を唐辛子や花椒を主体としたスパイスでグツグツ煮込み、仕上げに油をぶっかける豪快な四川の料理です。ぐわー、これは美味しいですねえ。ただ辛いだけでなく発酵調味料の奥深い味わいが折り重なり、実に重層的な味覚です。肉は牛・豚・鶏・羊から選ぶことができ我々は羊をチョイスしたのですが、その独特の肉の香りと相俟って内臓をゴン攻めしてくれました。
〆の中華麺。麺にもこだわりがあるのか、高名なラーメン屋の上質なムチムチ麺のようであり、〆の麺というよりも麺料理として完成された美味しさです。鍋の底に溜まった具材やスパイスなどをグリグリと混ぜ合わせ、悪魔的に旨い。
いやあ、楽しかった。適度に辛いので飲み放題のアルコールが自然と進み、自動的に酔っぱらってしまうというエンターテイニングなお店。雑な店と思いきや、紙エプロンはもちろんトングや小皿をジャンジャン持って来てくれるので、ややこしい鍋を食べるにあたってのストレスも全くありませんでした(人生で最もトングを使った日かもしれない)。
次回は鍋でなく、グループで訪れてアラカルトで色々注文しよう。「中華バル 池湖(いけこ)」にせよ、道玄坂にはいい中華料理屋が沢山あるなあ。
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それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。
- チャイナハウス龍口酒家(ロンコウチュウチャ)/幡ケ谷 ←東京の10,000円以下の中華だとダントツ好き
- サエキ飯店/目黒 ←切れ味抜群
- ShinoiS(シノワ)/白金台 ←めちゃ美味しいんだけれど高いんだよなあ
- 4000 Chinese Restaurant/西麻布 ←王道中の王道の中華料理ですげえ旨い
- センス(Sense)/日本橋 ←あれだけ香港に通い詰めた結果、日本の飲茶が一番とは実に複雑な心境
- 南方中華料理 南三(みなみ)/四ツ谷 ←素晴らしい、何も言うことは無い
- 蓮香(レンシャン)/白金高輪 ←日本人が一般に想像する中華料理のイメージを打破する多彩な魅力
- 中華バル 池湖(いけこ)/渋谷 ←度を越した費用対効果
- 飄香/麻布十番 ←十番のランチではトップクラス
- 紫玉蘭/麻布十番 ←税込800円は神のなせる業
- 開化亭(かいかてい)/岐阜駅 ←過剰なものは何も無く、足りないものも何も無い
- Mott 32(卅二公館)/中環(香港) ←この中華料理はちょっと東京には無い
- Lung King Heen(龍景軒)/中環(香港) ←総合力という意味では香港における飲茶で私的ナンバーワン