我逢人(がほうじん)/中州(福岡)

福岡を代表する鮨屋「鮨さかい」の2号店「我逢人(がほうじん)」。中洲川端駅から歩いて10分ほどのスタイリッシュなビルの3階に入居します。店名は「人と人との出会いの尊さ」を表す禅語とのこと。ちなみに「鮨さかい」は2階です。
歓楽街ど真ん中とは思えないほどの空間づくり。7席ほどのカウンターのお部屋がふたつあり、それぞれムッシュ堺のお弟子さんが大将としてにぎります。

ところで、たまたまかもしれませんが当店は客層がめちゃんこ悪いですねえ。この日のゲストはウォータービジネスの方ばかりで香水がギンギラギン。キャバ嬢A・キャバ嬢Bがそれぞれ異なる芳香を放っており、LUSHの店内のような香りの強さ。部屋が小さいので余計に匂いがこもります。
気を取り直して食事に入ります。まずはタラの白子のおひたし。繊細な味わいで、香水の匂いがよく響きます。
志賀島のタコ。こちらも素材の味を活かした控えめな調味であるため、香水の匂いにうっかり酔ってしまいそうになりました。
今日スジコからほどいたばかりの生イクラで小丼を。柔らかな塩味が心地よい。
生ガキはたっぷりのネギと共に頂きます。ぷっくりと太りクリーミーな舌ざわりが印象的。
ボタンエビもネットリとした食感でセクシーです。ところで当店のタネは近海物は少なく、全国各地からのお取り寄せが殆どですね。そういう意味では旅行者ではなく博多在住の方のほうが楽しむことができるかもしれません。
スペシャリテの「フグのお造り」。トラフグにアンキモのソースをたっぷり絡め、実に濃厚。香水の強さに負けない味わいの強さがありました。
ワタリガニはカンジャンケジャンのような仕立てであり、どろりとした食感に病みつき。日本酒泥棒な美味しさです。
焼き物はノドグロ。関東の人間からするとノドグロと言えば北陸地方の専売特許に思えますが、対馬の辺りでも獲れるらしいです。
マツタケのスープ。繊細なお椀であるため、お察しの通り香水の匂いしかしませんでした。
にぎりに入ります。「ウチはにぎりの温度を大切にしているので、すぐに召し上がってくださいね」と大将が選手宣誓。予約はさかいグループで一括管理しており当店の大将に香水臭い連中を追い返す権限は恐らく無いでしょうが、鮨職人個人としての矜持は感じました。
春子鯛。デリケートな味わいであり、香水の(ry
ブリ。このあたりからお喋りとインスタに夢中な同伴客のにぎりが渋滞し始め、大将が「どうぞお早めに」と牽制球を投げるのですが誰も聞いていません。
カワハギ。身の美味しさはもちろんのこと、肝のソースが堪りません。先のアンキモソースと共に当店の二大巨頭と言えるでしょう。
コハダはさっぱりとした締め方であり私好み。
マグロ3連単。有名マグロ専門仲卸「やま幸」からの仕入れであり、産地は八戸。このあたりの方向性は東京の鮨屋と完全に一致しています。
ところでシャリが美味しいですね。マグロとの相性を最重要視した設計であり、ビビッドな赤酢の風味と硬めの炊きあがりが美味しい。
大トロ。こういうタネはキャバ嬢たちも出されてすぐにパっと食べる。見方を変えると鮨に対して最もシビアに取り組んでいるのは彼女たちなのかもしれません。
ドカンと大きい車海老。きっと大将も思うところがあるのでしょう、用意されたいくつかのエビのうち、何でもすぐにパクパク食べる私に最もイケてる個体がまわって来ました。ハートが通じ合った瞬間です。
バフンウニ。ウォーターさんたちはお喋りに夢中で目もくれないのですが、さすがに軍艦の放置は海苔が湿気って崩落の恐れがあり、大将がとても悲しそうな表情を浮かべています。だが時すでにおすし。戦艦陸奥よろしく右舷から横倒しに沈没するのであった。
くどいようですが、お椀は妙な香りしかしません。君のドルチェ&ガッバーナのその香水のせいだよ。
アナゴ。ゆうべのアナゴはムキムキマッチョでしたが、今夜のアナゴは液状化しそうなほど柔らかい。面白い素材です。
ネギトロ。このあたりで大将は渋滞客に見切りをつけ、パクパクとテンポ良く食べる私に、渋滞客の分をまわしてくれるようになります。これはこれでお得である。
かんぴょう巻き推しの私として、追加注文でなくデフォでコースに組み込まれているのが嬉しい。
ギョクでフィニッシュ。ごちそうさまでした。

以上を食べ、お会計はひとりあたり4万円弱。香水との辛い辛い闘いでした。美味しい美味しくないは人それぞれの主観ですが、この香水臭い環境は鮨屋としてスタートラインにも立てていないでしょう。知人が当店を訪れると聞いたら私は積極的に止めます。同伴客前提のそういうお店です。どうしても行きたいのであれば貸し切りでどうぞ。君のドルチェ&ガッバーナのその香水のせいだよ。

とにかく大将が気の毒な夜でした。彼が独立した際は、きっと硬派な鮨屋になることでしょう。すごく応援したい。福岡の鮨業界はやはり荒れているのかもしれません。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。