五反田駅から歩いてすぐ、目黒川沿いの「リバーライトビル(通称:五反田ヒルズ)」という飲み屋ビルの地下1階に入居する「食堂とだか」。レトロな飲み屋ながら2年先まで予約でいっぱいという、五反田屈指の人気店です。お向かいには2号店である「立呑みとだか」も。コートは店外に吊るす形式なので、高価なものを着ていくのは避けましょう。
居酒屋というかスナックというか独特の雰囲気。「孤独のグルメ」SEASON6の12話で「東京都品川区五反田の揚げトウモロコシと牛ご飯」として紹介され人気に火が付きました。現在は1日4回転(日に拠る)の一斉スタート形式で、お食事に飲み放題が付いてで1.2万円とシンプルな価格設計です。ただ、確かに飲み放題ではあるのですが、ビールやサワー、ハイボールなどの炭酸系が主力であり、そうは飲めない。日本酒もカジュアルなものが中心なので、それほどお得というわけではありません。加えて食事の量がとんでもなく多いので、神泉「産直屋たか」のように、お酒目当てで訪れるのは少し違うような気がしました。
さっそく看板メニューの「ウニ・オン・ザ煮玉子」。上質な半熟煮玉子にウニとイクラをトッピングするというわかりやすいひと皿であり、当然に美味。
お皿にこぼれたウニとイクラは続くお料理「ずんだおこわ」で再利用。美味しいのですが、お凌ぎにしては迫力があり過ぎるポーションなので、後続工程における胃袋の処理能力が気にかかります。
お椀は海老のしんじょう。小ぶりのエビがブリブリに詰まっており単刀直入に旨い。鹿児島のブリは厚切りにしてバリっと炙ります。薬味たっぷりで上質な和風海鮮サラダのよう。そうそう、戸高雄平シェフは鹿児島県出身で、鹿児島と東京で料理人として尽くした後に当店を開業したそうです。
「とだチキ」。とだか風のチキンです。これはまあ、見ての通りの料理です。シャインマスカットの白和えの風味が優しい。「サンマと茄子の包み焼き」。脂たっぷりメタボ体質のサンマをバリっと炙ってジュワジュワしながら頂きます。厚みのある日本酒が進む進む。
「鶏つくねとレンコン豆腐の揚出し」は見た目以上にパンチのある味わいであり、不思議と鶏の唐揚げを液状化したかのようなニュアンスが感じられました。
長芋そうめん。シャキシャキとした歯ざわりにサッパリとした調味。たたきオクラのヌルヌルと共に胃袋にストンと落ちていきます。
冬瓜かにあんかけ。バリっと揚げた冬瓜にセイコガニで作った餡をドロリ。やはり外観通りの率直な味わいであり、カニってそんなに高級なものでなくても充分旨いじゃないか、と思わせてくれる味覚です。
続いてひつまぶし風にお茶漬けも。うっぷ、さすがに満腹だ。
お食事は「ウナギの炊き込みご飯」。土鍋に隙間なくレイアウトされた鰻に嬌声が上がる。そういえば鰻の水揚げ量が最も、そしてダントツに多い都道府県は鹿児島県であることを思い出しました。「うなぎの美鶴」旨かったなあ。
3合を8~9席で分け合います。腹くちくなった方は持ち帰りもOK。梅干しとキュウリをトッピングして、まずはそのままで頂きます。続いてひつまぶし風にお茶漬けも。うっぷ、さすがに満腹だ。
〆の食事がもうひと品「梅つけ麺」があるとの宣言があり、嬌声から悲鳴へ。当然に女性陣は少なめポーションで、その分の割り当てが男性に廻され、そのボリューム感にあられもなく動揺する。それでも梅のサッパリとした風味が食欲を後押しし、何とか食べきりました。
〆は「ブドウ大福」。こちらも持ち帰り用に丁寧に包んでくれるのですが、この断面を見せられてはこの場で食べるしか他ありません。2021年最も腹が膨れた食事と相成りました。
以上を食べ、お酒も好きなだけ楽しんで1.2万円ポッキリの明朗会計。なるほど根っからのショーマンが主宰するお祭り騒ぎの食卓を堪能してこの支払金額はお値打ち。ただ、ネットに神経症的に貼りついて近未来の予約を入れるのは当店のコンセプトと少し違うような気もしました(店側も疑問に感じているように見えた)。このあたりはSNSの功罪と言えるかもしれません。もう少し常識的な予約距離に落ち着いた際に改めてお邪魔したいと思います。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。