こざっぱりとした店内。L字型カウンターは10席ほどであり、テーブル席もひとつありましたがカラスミが山のように干されていたので、実態として1~3人で訪れると良いでしょう。
立石修二シェフは長崎県の壱岐出身。海と美味なる魚に囲まれて育っただけあって魚のセレクションは抜群です。この日は夜のツマミ付きのコースをランチにお出しして頂きました。
ビールは千円を切り、日本酒も一合千円強~と悪くない価格設定です。まずはオコゼ。ガチガチっとした食感が逞しく、幸先の良いスタートです。
タイ。オコゼに続いて逞しい味覚であり、塩をちょんちょんと付けて日本酒をクイ。
煮タコ。外観はホワイトですがしっかりと炊かれており、程よい歯ごたえを残しつつもしとやかな食感です。日本酒をクイ。
梅干しの茶碗蒸し。特大の梅肉がトッピングさせれており、清涼感に満ちた塩味を感じさせるひと品です。中にはイカにや魚やらゴロゴロと詰まっており、かなりの食べ応えです。
白エビにカラスミ。大量の白エビを丼にあけ、ザラザラとカラスミを和える様は見ているだけで生唾が溢れてきます。シロエビの幼い甘さにカラスミのビターな旨味が調和する。日本酒をクイ。
ちなみに卓上の皿には自家製のキュウリの漬物とワカメが常時接続されており、インターバルに食べるに都合の良い存在です。にぎりの場面ではガリも配され、付け合わせが充実した鮨屋である。
アラはステーキと見まごう程のナイスカットであり、そのへんのiPhoneよりも容積が大きいかもしれません。ギュっと旨味が縮まり皮目のゼラチン質なんてもう最高。
アワビはコリムチとした歯ごたえであり深みのある味わいです。プルンプルンと弾けるかと思えば舌にぴったりと貼りつくツンデレなツマミです。
にぎりに入ります。まずはサワラ。厚めのスライスでムシャムシャとした食べ応え。穏やかながら複雑な大人の味わいです。
ハガツオ。え?これがカツオ?とビックリする外観ですが、このあたりではよく食べられるカツオの一種らしいです。旬は秋から冬であり、いわゆるカツオ的なレッド色ではなく、カツオとサワラの間に位置するような味わいでした。
4番サード、大間。これはもう、情報としても実体の味覚としてもどうやったって美味しいでした。
ギョクはいわゆる出汁巻きタイプであり、昨今のケーキみたいなゆるふわな玉子とは一線を画す力強い味わいです。出汁の風味が強く、ついつい酒に手が伸びてしまいます。
天草のコハダ。あっさりとした〆であり、さっぱりとした酸味がお口直し的な活躍を見せてくれます。
ヅケ。キラキラと光るその様はまさに赤いダイヤモンド。私はとりたててマグロが好きというわけではないのですが、それでも絶対的に美味しいと思わせるタネ、それがマグロ。
ウニ。迫力のあるポーションであり、軍艦では納まりきらず手渡しでパスしてくれます。私はとりたててウニが好きというわけではないのですが、それでも絶対的に美味しいと思わせるタネ、それがウニ。
今朝、スジコを分解し朝から漬け始めたイクラ。なるほど冷凍モノとはダンチなフレッシュさであり、嫌な塩味などは微塵も感じさせない清澄な味わいです。
特大のハマグリ。カボスをシュと振りかけるだけなのですが、ハマグリそのものの味覚ポテンシャルが幅広く、圧倒的な旨味を誇ります。ちなみに「味覚ポテンシャル」という言葉は今わたしが適当に作った単語です。
茹で上がったばかりのエビ。目の前でバキバキと殻が剥かれていき、その様を見ているだけで私のバイブスは爆上げです。口いっぱいにムシャムシャと頬張り至福のひととき。
「アオサの味噌汁です」とか言ってサラっと出してくるくせに、その実、魚介の旨味が爆発します。外観からは全く想像のできない複雑な旨味に大興奮。
アナゴ。よく固体を保っていられるな、と感心するほどの柔らかさであり、口腔内で米のひと粒ひと粒と混ざり合う。
〆の巻物はネギトロ。どでかいマグロの身からスプーンでゴシゴシと削ぎ落し、目の前でジャカジャカネギを切りつつドップリとシャリに塗りたくります。既に液状化現象が生じた巻物であり、危うく天に召されそうになりました。
デザートはヨーグルト風味のアイスにパイナップルでサッパリと。いやあ、よく食べた。ごちそうさまでした。
おまかせをひと通りに軽く飲んでお会計はひとりあたり1.7万円。銀座で同じものを食べれば倍請求されることは間違いなく、その費用対効果を脇に置いたとしても大変満足したランチでした。
博多は有名な鮨屋が多いですが結局のところ東京のゲストを向いている店も多いので、そういうんじゃなくて、もっと地元地元を指向したお店を探している旅行者にうってつけのお店です。地物の魚をたっぷりどうぞ。
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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
- すし匠/ワイキキ ←このお店の真価が問われるのは数十年後のはず。
- 鮨m(すしえむ) ←東京という街が必要とする鮨屋。
- 照寿司(てるずし)/北九州 ←世界で最も有名な鮨職人。
- すし宮川/円山公園(札幌) ←人生でトップクラスに旨い鮨。
- 鮨さいとう/六本木一丁目 ←価格設定に色々と考えさせられる。
- 鮨 在(ざい)/広尾 ←これこれ、鮨とはこれですよ。
- 東麻布天本/赤羽橋 ←欅坂46のような鮨。
- 初音鮨(はつねすし)/蒲田 ←西の照寿司、東の初音鮨。
- 鮨 猪股(いのまた)/川口 ←にぎりのみの男前鮨を喰らえっ!
- 鮨舳/瓦町(高松) ←真っ当な江戸前。銀座の半額で何度でも通いたい。
- 天寿し/小倉 ←何度でも行きたいし、誰にでもオススメできるお店。
- 鮨 一幸(いっこう)/すすきの ←真摯に鮨に取り組む好青年。
- 鮨処木はら(すしどころきはら)/函館 ←鮨屋の答えは函館にあったのです。
- 鮨 十兵衛/福井市 ←福井への旅行が決まれば最初に予約したいお店。
- 鮨 大門/魚津(富山) ←東京の鮨はもうオワコン。
- 小松弥助/金沢(石川) ←「まごころでにぎる」を体現する鮨屋。
- 乙女寿司(おとめずし)/片町(金沢) ←私的北陸一番鮨。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。