ビクターズ(Victor's)/恵比寿

ウェスティンホテル東京のメインダイニング「ビクターズ(Victor's)」。コロナのせいで早じまいしなければならないそうで、急ぎ17時台に入店したのですが、夕方から夜にかけてのマジックアワーの景色を堪能することができ、これはこれでありよりのありです。
しかしながら店内は見捨てられた町のようにがらんとしており、営業日も木・金・土・日のみと珠理奈のように辞め時を失っています。私としてはきちんとしたホテルのメインダイニングなので、ハラハラドキドキめくるめくスリルを期待していただけに残念。
ホールスタッフにも覇気がなく、本日の鮮魚料理の内容を尋ねても「スズキです」とぶっきらぼうに答えるのみであり、いやあんたの名前じゃなくて料理について詳しく教えてよ、と危うくツッコミそうになるほどのテンションの低さでした。
アミューズはサーモン。これはまあ、良くも悪くも一般的なサーモンであり無難に美味しかった。
プリフィクスコースだったので、前菜にニース風サラダを取ったのですが、なんか、こう、美食の瑞々しい気配がなく、盛り付けにも迫力がありません。ニースの人にこの料理を食べさせたとしても、まさか自分たちの郷土料理をテーマにしたものだとは気づかないことでしょう。
パンも色んな種類を用意してくれるのですが、どうにも覇気が感じられません。1種類でいいのでガチなものにチャレンジして欲しい。
アジのマリネ。魚は汚染された三角州のような色合いであり、味もポーションも予算をケチった披露宴のようです。
追加料金を支払って選択した「ブイヤベース マルセイユ風」。こちらも冷凍の魚介にタレをチョロリとかけただけのひと皿であり、大きな忘れ物をしたような違和感を覚えます。マルセイユの人にこの料理を食べさせたとしても、まさか自分たちの郷土料理をテーマにしたものだとは気づかないことでしょう。
肉料理は追加料金を支払って選択したラムのグリル。お、これは普通に美味しいですね。とは言えそのへんの手の込んだビストロと大差ないクオリティであり、きちんとしたホテルのメインダイニングのメインディッシュとしては煢然たる存在感でした。
デザートにはトマトのコンポートとフレッシュチーズのカクテル仕立て。おお、これはめちゃんこ旨いぞ。これまでの料理が視力0.01だとすると、レーシックを受けたくらいの印象の違いがあります。
お茶菓子も見逃せない美味しさです。きっと菓子職人たちはコロナだろうが何だろうが活躍の機会は山ほどあり、今でもフル稼働しているという所作でしょう。それほどテンションの高さというか何というか、現役感を感じました。そういえばロビー階のビュッフェのスイーツも、ビュッフェなのにきちんと美味しかったなあ。
ということで、デザートを除いては徹頭徹尾、砂を噛むような食事であり、厨房やサービスの情熱が全く伝わってきませんでした。コロナを理不尽な出来事として処理したい気持ちはわからないでもないですが、やはりホテルのメインダイニングはどのような条件下にあっても輝いていて欲しい。恵比寿の街の揺籃期から全盛期まで見守ってきた身としては、うら寂しい思いをしたディナーでした。

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