中國菜 李白(RIHAKU)/恵比寿

恵比寿のウェスティンすぐそばにオープンした「中國菜 李白(RIHAKU)」。四川料理と香港の飲茶文化の掛け合わせという、ありそうでない試みです。
席数はそれほど多くなく、テーブルがいくつかに個室といった陣容です。ちょっとした飲み会なら貸し切れちゃうかも。

佐藤剛シェフは都内の中華料理店はもちろん、四川や上海の店で腕を磨き、四川大学にまで留学したという求道者。帰国後は代々木上原「虞妃(ユイフェイ)」のシェフを務め、2021年7月に当店を開業。
覚悟していたほどお酒は高くありません。ブラウマイスターは850円であり、ちょっとしたクラフトビールであっても千円以下。ワインも絶対価格が控えめであり、多彩な味わいに合わせてかなり飲ませる中華です。
アミューズは筆に見立てたひとくちパイ。みんな大好きカレー風味。
タコに発酵唐辛子のタレ。奥行きのある辛味であり、ビールを乾杯。
ウズラとチキンの焼売。ピリ辛で複雑な味わいのタレにバードたちの風味がよく合う。中にはウズラの卵が詰め込まれており、滑らかな卵黄の味覚が印象的。ところで点心を担当されている方は、すぐそばのウェスティン「龍天門(リュウテンモン)」で経験を積んだ点心師だそうです。
サンマの春巻き。サンマの程よい苦みが食欲を刺激し、山椒風味(?)の緑のソースとサンマの脂が心地よく溶け合います。
米粉のラザニア的なものを葉ニンニクと共に炒めます。究極の焼きうどんとも言うべき確立された味わいであり万人受けする美味しさです。
スープ餃子。まずはスープをそのままで頂き、徐々に餃子を崩しながら味の変化を楽しみます。カニの旨味にフカヒレのツルっと感、ベースとなる干し貝柱のコク。思わず身悶えする美味しさです。
北海道産のホタテを野菜と共に炒めます。紫蘇の風味がとてもキレイであり、初夏を思わせる爽やかな味わい。ロワールあたりと合わせるのも良いかもしれません。
一方、にら餃子は思いきりジュジュっと焼きつけており、大口でかぶりつくとジュバっと旨味が爆発します。これは旨い。発作的に旨い。
和牛のしゃぶしゃぶにハタ(だっけ?)のワンタン。見た目こそ温和な味わいに見えますが、思いのほか辛味が強く汗が噴き出てきます。どちらかというとタイ料理的な味覚であり、多彩な味覚を繰り広げる当店の懐の広さを垣間見ました。
お口直しは糸ウリとネギの炒め物。お口直しと言えば雑な氷菓を出す店がほとんどですが、当店のような塩気と旨味を感じさせるお口直しはアイデア賞。
〆のお食事はピリ辛牛肉麺とチマキの2種からの選択なのですが、連れとひとつづつ注文し2人で分け合いました。やはりただ単に辛いだけでなく複雑で奥行きのある味わいであり、その中にヘヴィ級の牛肉が塊でぶち込まれており、存在感のある〆のお食事です。
他方、チマキは優しい味わいであり、モロ炭水化物のみではありますがスイスイと食べ進めることができます。どちらも美味しいですが、どちらかひとつを選べと言われれば牛肉麺かなあ。
デザートは杏仁風味のお汁粉に栗の月餅。杏仁豆腐でなくお汁粉というのが捻りがあってすごくいい。月餅も、私は中国人ほど月餅に思い入れはなくシーズン中に付き合いで貰うけど甘くてそんなに食えねえよ、という印象のスイーツだったのですが、当店のそれは仄かに温かく何とも品のある甘味に思わず目を閉じてしまいました。

軽く飲んでお会計はひとりあたり1.3万円。このクオリティの料理をこれだけ食べてこの価格はリーズナブル。赤坂「四川DINING 望蜀瀘(ぼうしょくろ)」のように、絶好調のサンシャイン池崎的な四川料理も楽しいですが、当店のダイバーシティーに富んだ味覚は「こんな四川料理もあるんだ」と気づきを与えてくれます。「中華料理なんてどこも大体同じでしょ?」と斜に構えた方にこそ食べてもらいたい、面白い中華料理でした。

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それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。
1,300円としてはものすごい情報量のムック。中国料理を系統ごとに分類し、たっぷりの写真をベースに詳しく解説。家庭向けのレシピも豊富で、理論と実戦がリーズナブルに得られる良本です。