小松空港やJR小松駅、北陸自動車道小松ICから車で5~10分ほどに位置するミシュラン1ツ星の「料亭 まつ家(まつや)」。地方の豪奢な料亭としては便利な立地です。このあたりは安宅町(あたかまち)と言って、古くは北前船の寄港地でもあり、漁港もあって海の幸に恵まれています。
店内は沢山の個室が。檜の香ただよう見事な純数奇屋造りに加え、窓外には風光明媚な景色が広がっており雰囲気は抜群です。大きなお部屋もあって、大人数での集まりにも対応できそうです。
お料理開始。まずはシャインマスカットの白和えでしょうか。瑞々しいブドウの甘味に白和えのジャパンな風味がよく合います。八寸の美的センスが抜群。季節を感じさせる盛り込みであり、味についても申し分なし。とりわけ貝柱とトンブリの和え物と鴨ロースが心に残りました。
チンチンに熱された石でフレッシュなアカイカを焼きつけます。このアカイカは造りとして食べても充分にイケる仕様であり、サササと軽く炙って頂きます。私は運転があるので飲めませんでしたが、連れが日本酒と合わせて実に旨そうに楽しんでおり、思わず喉が鳴りました。
お造りが豪華。このあたりは暖流と寒流が混じり合う日本有数の好漁場であり、先述の通り安宅漁港はすぐそこに。加えて橋立港や金沢港も使い分け、ここまで近海物のラインナップに秀でた料亭は珍しいでしょう。中でもオコゼがひときわ輝いており、フグを濃密にしたような味わいです。
石川県のご当地グルメ「カニの甲羅揚げ」。カニのほぐし身と鶏卵(?)を甲羅に詰め、そのまま衣をまぶして豪快に揚げてしまいます。香ばしい甲羅の香りにカニの旨味、卵の優しい甘味と私の好みの絨毯爆撃です。おシャンパーニュでも合いそうですな。
お食事はクリやキノコなど秋の味覚の炊き込みご飯。お椀はオコゼのアラ汁であり、ごはんの添え物としてはリッチであり、これ1杯でひとつの料理として成立する存在感でした。
デザートには石川の種々のブドウのゼリー寄せ。ベーシックな味わいですが素直に美味しい。以上を食べ、8千円のコースに税サとノンアルコールビールなどでひとりあたり1万円強。おおー、これはこれは見事な費用対効果です。立地や建物、お部屋の誂えも見事であり、何より海産物が美味しい。小松空港にも近いので、石川に来る方も離れる方も、当店を旅程に組み込めば素敵な思い出となること間違いなし。次回は空港からタクシーで来てしこたま飲もうっと。
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日本料理は支払金額が高くなりがち。「飲んで食べて1万円ぐらいでオススメの日本料理ない?」みたいなことを聞かれると、1万円で良い日本料理なんてありませんよ、と答えるようにしているのですが、「お前は感覚がズレている」となぜか非難されるのが心外。ほんとだから。そんな中でもバランス良く感じたお店は下記の通りです。
- かどわき/麻布十番 ←人生で一番の日本料理かも。
- と村/虎ノ門 ←季節を切り取る、究極の旬を楽しむエンターテインメント。
- しのはら/銀座 ←予約困難となって当然だ。
- いち太/外苑前 ←フランス料理のように多層的な味わい。
- おぎ乃/赤坂 ←赤坂にミラクルな店が爆誕しました。
- 比良山荘(ひらさんそう)/湖西(滋賀) ←鮎をたらふく食べ、熊肉に舌鼓を打ち、マツタケをザルのように食べてこの支払金額はお値打ち。
- 木山(きやま)/ 丸太町(京都) ←京都で一番好きなお店。
- 田がわ/御幸町(京都) ←幸村卒業。近い将来、星獲得間違いなしのリーズナブルな日本料理。
- カモシヤ クスモト/福島(大阪) ←独学でもトップに立ててしまうのか。
- 島之内 一陽/難波 ←カジュアル日本料理の最高峰。
- みつき/鳥取駅 ←この質のカニをこの価格で提供できるのは地の利。
- 馳走 卒啄一十(ちそう そったくいと)/広島市 ←中国地方、いや日本全体を含めてもトップクラスに好きな日本料理店。
- 御料理 まつ山/黒崎(北九州) ←北九州の旅程に是非とも組み込みたいお店。
- 日本料理 幸庵 ←こちらも費用対効果が素晴らしい。ミシュラン三ツ星って実はお買い得?