馳走えん/福井市

福井駅から車で10~15分ほどの住宅街にある「馳走えん」。店主の実家が越前町の魚屋「小松鮮魚店」であり、その日に水揚げされたばかりの旬の魚介類を楽しむことができます。ミシュラン1ツ星。
カウンター席はもちろんあるのですが、我々は個室に通して頂きました。個室が結構あるようで、親族のイベントや会食での利用に使い勝手が良さそうです。

小松辰平シェフは福井生まれ。西天満「割烹 由多嘉」や紀尾井町「福田家」などで腕を磨いたのち、独立。
先付は茶豆のムース。写真からは見辛いですが、豆の風味が活き活きとした逸品。組み込まれた貝類の歯ごたえや思いきりの良い酸味での調味などで出しは快調です。
お造りはシマアジにカマス。シマアジは緊張感のある歯ざわりで美味。カマスは生で食べる機会が少なく乙な味。あん肝の脂のノリはまだまだですが、これからの季節に期待を持たせる味覚です。
クロムツ幽庵焼きにナスの胡麻和え。クロムツはちょっと味付けにパンチが無いかなあ。他方、ナスは胡麻の逞しい風味が印象的で心に残りました。
マツタケの土瓶蒸し。秋の勘所といった美味しさであり、量もたっぷり。スープが多くお魚も投入されており、食べ応えのあるひと品でした。
イチヂクの胡麻味噌和え。とても美味しいのですが、先のナスと似た方向性の味わいであり、どちらかを違ったアプローチで楽しんでみたかった。
牛しゃぶに万願寺唐辛子。上質な脂がたっぷりでとろけるような甘みがある。一方で、幽庵焼きと同様に穏やかな調味であったため、味濃いめ原理主義者の私にとっては少し物足りない。まあこのあたりは人それぞれでしょう。
お口直しにフグ皮の湯引き。ゴリゴリと厚みのある食感であり美味。クッキリとした酸味が内蔵をリフレッシュしてくれます。
〆のお食事は昔ながらのおくどさんでで炊き上げる土鍋ごはん。この日の具材はシャケのハラスなのですが、、、
仕上げにイクラをドバっとぶちかましてくれ、一気にその場が華やぎます。イクラの美味しさは当然として、ハラスの脂が米の一粒一粒まで行き渡り、上質なチャーハンのように舌先でパラパラとほぐれていく。持ち帰り前提の量のようでしたが、夢中で完食してしまいました。
デザートはマンゴーのブランマンジェ。おお、こいつは美味しいですねえ。濃密ながら優しい生地の風味にマンゴーの強い甘味、パッションフルーツのアクセント。並の日本料理店では中々出会うことのできない味わいでした。

お食事が1万円にノンアルコールビールやら税サ(?)やら何やらでひとりあたり1.4万円。このクオリティの素材ひいては料理を食べてこの支払金額はお買い得。場面でテンポが悪いところがあったので、時間に余裕をもって訪れると良いでしょう。次回は是非とも越前ガニの季節にお邪魔したいと思います。

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