乃木坂しん/乃木坂

赤坂は乃木神社近くの「乃木坂しん」。フランスレストラン畑の飛田泰秀ソムリエが手掛ける日本料理店であり、和食ながらガッチリとワインを合わせるお店ということで話題となりました。ミシュラン1ツ星。
乃木坂にこんな空間があるんだと驚く数奇屋風の店内。6席のカウンターが特等席ですが、個室も3部屋あります。贅沢な宴会といった趣きで個室を謳歌していた旦那衆が実に楽しそう。

石田伸二シェフは徳島の料亭で15年を過ごし、銀座「小十(こじゅう)」腕を磨き、系列のパリ店の立ち上げに参画。2016年より当店の厨房を預かります。
ワインのペアリングは1万円と、この手のレストランとしては良心的な価格設定です。料理との組み合わせも上手くって、その辺の創作和食屋がノリでワインを置いているのとはワケが違う高次元な仕上がり。量もたっぷりで、ビンジドリンキングとは言わないまでも、かなりしっかりと杯を重ねることができ、すっかり酔っぱらってしまいました。
まずは蒸したイチジクに日本の紅茶。箸でホロリと崩れるほど繊細な出来栄えであり、今後の展開への期待が膨らみます。
ハモの茶碗蒸し。ペールカラーで柔らかい印象の外観ですが、出汁がしっかりときいており中々の食べ応え。茶豆ソースがいぶし銀の存在感。
ウニ・焼きナス・フルーツトマトの白和え。どことなくフランス料理的なひと皿であり、それでいて素材の風味も活きておりグッド。
お椀のタネはトウモロコシのしんじょう。しかしながら主題はあくまで出汁であり、鼻腔をくすぐるカツオとコンブの香りがしっとりとした雰囲気をクリエイトしてくれます。
キリっと冷やしたミズガイとアワビ。ソースはアワビのキモであり、独特のセメント色が実にセクシー。アワビの旨味が際立っており、ニョキっと固く感じる食感が堪らない。残ったソースに日本酒を注いでクイっとやるのも魅力的な演出です。
お造りが可愛い。ただ切って出すというわけではなく、それぞれキッチリと仕込まれた味わいであり、お酒がグイグイと進みます。
八寸はカラっと揚がった鮎にアナキュウ、そうめんカボチャ。アナキュウがいいですね。アナゴの弾力的な食感にキュウリの爽やかな風味が良く合います。何もドロドロのツメを塗りたくるだけがアナゴではないのだ。
牛肉と牡蠣のコラボ。蛮勇とも言うべき組み合わせですが、これがべらぼうに旨い。すき焼き風にヘヴィな味付けの肉と牡蠣の強烈な磯の香りが不思議と良く合う。コッテリとした日本酒も攻めの姿勢。肉・牡蠣・酒とパーフェクトな組み合わせでした。
賀茂茄子の田楽。先のアグレッシブなひと皿から一転、内蔵に寄り添う優しい味わいでクールダウン。
〆のお食事はハモごはん。お出汁でシッポリと炊かれたライスにフワフワのハモの身が溶け込みます。千切りのワサビも程よいアクセント。
デザートひと皿目はスダチのジュースにわらび餅。ややもすると退屈になりがちな日本料理の甘味にシュっとした差し込みが入る瞬間です。
スイカのジュレに塩アイス。まさにスイカに塩の組み合わせであり夏真っ盛り。志村けんの早食いを思い出しました。

以上を食べ、ガンガン飲んでお会計は3.5万円ほど。おおー、これはこれは随分とお値打ち。先に記した通りワインのペアリングが実に魅力的なので、酒好きは必ず注文するように。そういう意味で下戸の民とはお店に対する印象を異にするかもしれません。肝臓を整えてから訪れましょう。

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