明庵 (みょうあん)/徳川町(名古屋)

名古屋の高級住宅街、白壁・徳川町エリアにある「明庵 (みょうあん)」。マンションの1階ながら竹矢来が仕立てられており、風情のあるエクステリアです。ミシュラン2ツ星。
店内はカウンターが中心で、トータルでは10席ほどでしょうか。店中に並べられる酒器が今夜は飲むぞという気持ちにさせてくれます。しかしながら飲み物メニューはなく、全て女将と相談しながら注文するというスタイル。値段も全く不明であり、最終的な支払金額が丸い数字だったので色々とモヤモヤしました。
まずはウニにアワビ、ナス、金時草。初っ端から高級食材のオンパレードであり、料理というよりも素材を楽しむひと皿でしょう。
大ぶりのハマグリは天ぷらに。ハマグリを天ぷらにして食べるのは初めてですが、まるで牡蠣のようにジューシーな口当たりであり美味しかった。
天然の鰻を白焼きで。問答無用で美味しい。しかしながらこの日は予約の取り違え(?)か何かで来店してから人数がひとりプラスというアドリブ対応となり、既に仕込みは済ませておりどう考えても一人当たりの取り分減るやんか。美味しいだけに陽が強く当たって、出来る影もまた濃い。
アスパラのすり流しに具材は伊勢海老。やはりどう考えても既に仕込みは済ませている系であり、被害者意識の強い人生を送ってきた私としてはまさにぴえんといった状況です。その場で異議を申し立てても良かったのですが、他のゲストの手前、牽強附会されて終わるだろうと涙を飲むしかありませんでした。
ケンサキイカには生のバチコが組み込まれており、日本酒無しでは生きられない逸品。
マグロには冷凍して解凍した(?)卵黄。ヘヴィ級のマグロの味わいにどろりとした生命の源の味わいが良く合う。
鮎の塩焼き。美味しいのですが、いわゆるフーディーたちはこの時期毎日毎日あゆを楽しんでいるのである種のTraumaです。
お肉料理の前のお口直し。ねっとりとしたイチヂクにリッチな胡麻のクリームで、まるでスイーツのような存在感です。
メインはドライエイジングしたイチボをフライに仕上げます。うーん、これはこれで美味しいのですが、能年玲奈に思いきり厚化粧したような、ちょっとやりすぎ都市伝説という印象も否めません。素材が良いだけにもっとシンプルでいい。
〆の炭水化物につき、まずはじゅんさい蕎麦。この蕎麦は美味しいですねえ。専門店に比肩する味わいであり、ツルっとしたじゅんさいの舌ざわりと相俟って爽やかな逸品です。
続いて鮎ごはん。先の塩焼きとは産地(?)が異なるのか、また違った魅力があって美味しかった。
香の物が素晴らしい。全体を通して高級食材で攻め通す芸風でしたが、なかなかどうしてこういった素朴な皿も美味しいじゃないですか。
水菓子は太陽のたまごにメロン、プラム。もちろん美味しいのですが、こんな高級品を満腹に近い状態で食べるのは正直勿体ないなと思います。
そんなに飲みませんでしたが、お会計はひとりあたり4万円弱。この立地でこれはちょっと高杉ですね。もちろんどの皿も当然に美味しいのですが、この価格設定であれば当たり前だよねという印象であり、高くて美味しいは安くて不味いと同じ意味です。東京の人であれば京都まで行ってしまった方が何もかもが良いなと思いました。

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