金沢を代表する観光地「ひがし茶屋街」にある「蕎味 櫂(キョウミ カイ)」。完全予約制の蕎麦屋であり、大正初期に建てられた町家が超カッコエエ。ミシュラン1ツ星。
夫婦で営む座席数は10ほどの小体な蕎麦屋です。田尻淳シェフは仙台出身ながら調理学校は東京、山形や東京で腕を磨き、奥様の故郷である金沢で独立。
まずは桃の白和え。暑い1日だったので、スカっと気持ちの良くなる味わいです。白酢の風味がスタッカートになっているのもすごくいい。
夏野菜にウニ。フレッシュなお野菜に心地よいウニの旨味。やはりサッパリとしたジュレが爽やかな味覚を演出します。お椀は合鴨のツミレにマツタケ。わおー、蕎麦屋でこんなにしっかりとしたお椀、しかもマツタケを起用するお店は世界でもココぐらいでしょう。マツタケはエリンギのように気前の良いサイズで思わず笑みがこぼれる。白眉は合鴨のツミレ。ゆるふわ系の食感に濃密な合鴨の風味。ここ数カ月の間で最も印象に残ったお椀です。
八寸もかなり気合が入っていて、岩もずくに白エビ、夏鹿のロース肉に煮穴子の蕎麦寿司、子持ち鮎と、ちょっとびっくりする仕様です。夏鹿のロース肉にはやられたなあ。フワっと柔らかく、これが鹿肉かと頭を抱える美味しさです。
そばがき。ああ、そうだ当店はそういえば蕎麦屋だった。と思わせるほど蕎麦前(?)のクオリティが高杉晋作。ちなみにこのそばがきも面白くって、薄挽きで粒が残っており、然るに空気をたっぷり含んでフワフワな食感なのが面白い。調味としても酒粕を用いており、ちょっと普通でない、記憶に残るそばがきでした。
天ぷらはダブルの才巻海老に新ぎんなん。カラっと揚がって身はジューシー。ほっくりネッチョリした食感のぎんなんも乙な味。
〆というか真打というか、フィニッシュは蕎麦です。問答無用。これまでの料理の質から察するに、どう考えたって美味しい蕎麦でした。甘味は水ようかん。品の良い甘味にイチヂクの熟した旨味。大人のデザートです。
以上を食べ、お会計はひとりあたり8,800円。え!8,800円!?ちょっと信じられない何て尊い費用対効果なんでしょう。正直訪問前は蕎麦屋で8,800円かよと斜に構えていましたが、終わってみれば〆の食事に蕎麦が出る王道の日本料理店であり、このクオリティでこの価格設定は驚きしかありません。都心で気前よく蕎麦を食べればそれだけで5千円も超えるもんなあ。蕎麦の本質的な価値とは、と、色々と考え込んでしまったランチでした。
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日本料理はジャンルとして突出して高いです。「飲んで食べて1万円ぐらいでオススメの日本料理ない?」みたいなことを聞かれると、1万円で良い日本料理なんてありませんよ、と答えるようにしているのですが、「お前は感覚がズレている」となぜか非難されるのが心外。ほんとだから。そんな中でもバランス良く感じたお店は下記の通りです。
- かどわき/麻布十番 ←人生で一番の日本料理かも。
- と村/虎ノ門 ←季節を切り取る、究極の旬を楽しむエンターテインメント。
- しのはら/銀座 ←予約困難となって当然だ。
- 温味/すすきの ←旨い!多い!安い!完全無欠の三ツ星日本料理店。
- 龍吟/六本木 ←モダンスパニッシュとさえ感じる前衛的な日本料理。外人にオススメ。
- いち太/外苑前 ←フランス料理のように多層的な味わい。
- おぎ乃/赤坂 ←赤坂にミラクルな店が爆誕しました。
- 比良山荘(ひらさんそう)/湖西(滋賀) ←鮎をたらふく食べ、熊肉に舌鼓を打ち、マツタケをザルのように食べてこの支払金額はお値打ち。
- 木山(きやま)/ 丸太町(京都) ←京都で一番好きなお店。
- 田がわ/御幸町(京都) ←幸村卒業。近い将来、星獲得間違いなしのリーズナブルな日本料理。
- 又吉/祇園(京都) ←雰囲気のある街並みに溶け込む費用対効果抜群のお店。
- カモシヤ クスモト/福島(大阪) ←独学でもトップに立ててしまうのか。
- 島之内 一陽/難波 ←カジュアル日本料理の最高峰。
- 和やまむら/奈良駅 ←ミシュラン3ツ星。料理が抜群に旨いガールズバー。
- みつき/鳥取駅 ←この質のカニをこの価格で提供できるのは地の利。
- 季節料理なかしま/白島(広島) ←同じくミシュラン三ツ星日本料理にしては圧倒的な安さ。
- 馳走 ?啄一十(ちそう そったくいと)/広島市 ←中国地方、いや日本全体を含めてもトップクラスに好きな日本料理店。
- 御料理 まつ山/黒崎(北九州) ←北九州の旅程に是非とも組み込みたいお店。
- 日本料理 幸庵 ←こちらも費用対効果が素晴らしい。ミシュラン三ツ星って実はお買い得?