アルシミスト(Alchimiste)/白金台

9年連続で1ツ星を維持していた「アルシミスト(Alchimiste)」が白金高輪から白金台へと移転。以前は乃木坂みたいな紫のコーポレートカラーが印象的だったのですが、其れは其れは重厚なエクステリアに変貌を遂げています。ちなみに以前は「シエル エ ソル(CIEL ET SOL)」があった場所です。
外観同様、建物内部もメキメキとグランメゾン化が進んでいます。どこか大きな資本でも入ったんかなあ(以上、写真は食べログ公式ページより)。1階の個室が下関条約のように豪奢であり、接待やお祝い事にピッタリ。

山本健一シェフは大阪府出身。京都のフレンチレストランで経験を積んだのち渡仏。各地の名店で腕を磨き、帰国後2011年に当店をオープン。
アミューズから手が込んでいます。いずれもパンチのある味覚でありシャンパーニュにぴったり。特に筒状のイワシにアユが詰まった座布団みたいなやつが美味しかった。苦みが効いて大人の味わい。
続いて日本産で当店で調味したキャビア。蕎麦粉のワッフルならびに泡と合わせて最強タッグです。畢竟、キャビアとはシャンパーニュである。
根室のウニに菊芋のエスプーマ。下層にウニが敷き詰められているのですが、それに辿り着く以前の菊芋の時点で相当に美味しい。
こちらはスイカのスープ(?)に車エビ。甘味は抑えられており、時折ピリっと感じるスパイシーなニュアンスがプロの巧緻を感じます。
パンが美味しいですねえ。天然酵母を用いたパンドカンパーニュであり、フランスのブーランジェリーでそのまま提供できるレベルの高さです。やはりフランスでの生活が長いシェフの店はパンが美味しいな。美味しいというか、不味いパンなんて絶対に許せないんだろうな。日本料理店のライスがそうであるように。
ハモ。淡路島帰りの私としてはハモについて一家言あるつもりなのですが、なるほど彼の地では見られないセンスを感じる調理です。特にソースが好きだなあ。ちょっと青臭くって爽やか。
こちらは千葉の天然アワビをケンタッキー調にフライします。衣はジャンクで暴力的な味わいですが、アワビそのものは魅力的な弾力を奏でる最上級のもの。なんとも贅沢で背徳的な逸品です。
先のアワビの肝を用いたリゾット。アワビの美味しさが全集中したエキスと黒いダイヤの競演。先のKFCでアワビは完了と思わせつつ、腕ゴールテープで引き留められたようなトキメキがありました。
クエ。このクエは美味しいですねえ。ブルンブルンとした弾力にムッチムチな舌ざわり。バリっとした皮目からのゼラチン質な食感と、なるほど料理とは5感であると再認識させてくれるひと皿です。クエにポルト酒のソースという組み合わせも斬新。
メインはビュルゴー家のシャラン鴨。これはもう、王道中の王道の料理であり、問答無用の美味しさです。当たり前の料理を当たり前に出すお店は意外に少ないですが、フランス料理愛好家は素朴にこういうものを求めていたりするものです。
デザートにつき、まずはブドウと赤紫蘇の冷菓でお口をリフレッシュしつつ、、、
濃厚なバナナのアイスでマエストーソに締めくくります。このバナナアイスがバナナよりもバナナの風味が強く、そんなバナナな美味しさがありました。途中でタピオカを組み込んだパッションフルーツをソースに味変するのも楽しかった。
焼き菓子がべらぼうに美味しい。それ専門にフーニエがいるんかなあ。このまま高級焼菓子店でも開業できそうなほどリッチで本質に迫るものがありました。
菊芋茶で〆てごちそうさまでした。割としっかり飲んだのでお会計はひとり5万円を超えましたが、ノーマルな飲みっぷりであれば4万円を割り込む支払金額でしょう。ランチコースは1.2万円と大そうお得なので、まずはそこから始めてみるのも良いかもしれません(数日後、友人におすすめしておいたら、すっげぇ良かったと言っていた)。

以前の店舗はポップにフランス料理を楽しむという雰囲気でしたが、移転し陣容も厚くなり荘厳なグランメゾンへと変貌を遂げています。印象は「アサヒナガストロノーム(ASAHINA Gastronome)」に近い。予約困難を演出する軽薄なフランス料理屋が雨後の筍の如く増え続ける中、こういったバリバリのグランメゾンの新装開店は貴重。ハレの日にどうぞ。

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