トレゾニエ(Trésonnier)/富山

3年ぶりの「リバーリトリート雅樂倶(がらく)」。かつては「レヴォ(L'evo)」という名のメインダイニングを擁しフーディーたちの聖地となりましたが、「レヴォ(L'evo)」は利賀村へと移転し、弟子たちが「トレゾニエ(Trésonnier)」として再出発。
ゆとりのあり、密とは程遠い座席配置。ビジターの利用も受け入れているのかなあ。こちらが心配になるほど贅沢な空間づかいでした。
前回お邪魔した際はペアリングで相当楽しませて頂きましたが、今回はグラス泡→ボトル白→グラス赤→グラス赤という試合運びに。ホテルのダイニングながら値付けは悪くありません。
アミューズが凝ってますねえ。旧レヴォ新レヴォで内容が丸かぶりだったため色々と心配したのですが、こちらはワタリガニ、白エビ、とうもろこし、赤万願寺唐辛子、鶏レバーと多彩な演出であり、いずれも泡がグイグイ進む魅力的なお口取りでした。
トマト主体のひと皿。トマトの風味ひいては酸味が強い。連れは美味しい美味しい言うてましたが、わたし的には胃液っぽく感じてしまったため、そのあたりは人それぞれなのでしょう。
ボタンエビに白エビ、ケール、キュウリ。素材それぞれは美味しいのですが、ややこねくり回しすぎている嫌いがあり、もうちょっと素朴でいいのにな。
アラにツルムラサキ。このお魚は美味しいですねえ。婀娜っぽい味覚にしっかりとした土台を感じるお出汁。ややもすると和食的な味わいです。
パンが美味しい。米粉のパンに始まり都合3種を頂いたのですが、いずれも素朴ながら深みのある味わいです。
青バイガイ。こちらは並外れて美味しいですねえ。バリっと炙られた貝の香りにジャクっとした歯ごたえ。お出汁にはムール貝やピーマンが用いられており、文句のつけようのない一品です。こればっかしは日本酒でも良かったかもしれません。
こちらは焼き茄子のアレンジ。焼いて皮を剥いでソースにして、、、と手が込んではいるのですが、いわゆる日本料理の焼き茄子を超える何かは見当たりませんでした。
こちらは鶏肉。皮目がバリっと焼かれていて美味しいのですが、やはり焼鳥の域は出ておらず、ナスと同様に諸々と瓦解した印象です。無理に皿数を増やさずドーンと塊で出した方が記憶に残るのにな。
ノドグロはいいですね。ポーションが大きく、いま何を食べているのかがわかり易い調理。ノドグロの旨味を塗布したズッキーニも名脇役です。
メインはイノシシ。ぐわー、この料理にはやられました。ガガっと焼いただけのシンプルな調理ですが、兎にも角にも単刀直入に旨い。脂も焼き目も何もかも旨い。素晴らしい。記憶の全てを持っていかれました。
デザート1皿目は白桃に、、、何だろ。なんだかドロドロしててよくわかりません。
続く梨のデザートもパっとせず、料理に比して甘味が貧弱と判断せざるを得ません。当館のカフェで普通にアントルメとか用意されているのに、この、ドロドロとした出で立ちは何を意図しているのだろう。
食後のお茶に小菓子などは付帯せず、テンサゲなままフィニッシュです。うーん、当店のシェフはあんまり甘いモノ好きじゃないんかな。随分とそっけない。デザートをオマケと考えている時点でフランス料理としてどうなんだろうと私は思うのだけれど。

とはいえお食事は1.5万円に酒が1万円で、3万円でお釣りが来る価格設定はリーズナブル。泡やタレが多く過剰な表現で技術を弄し過ぎるきらいはありますが、旅籠のメシと考えれば最高レベルに美味しいディナーです。ビジターでなく宿泊でどうぞ。

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日本フレンチ界の巨匠、井上シェフの哲学書。日本でのフレンチの歴史やフランスでの修行の大変さなど興味深いエピソードがたくさん。登場する料理に係る表現も秀逸。ヨダレが出てきます。フランス料理を愛する方、必読の書。

樺太食堂/ノシャップ岬(稚内)

極北の地、稚内。一般人にとって稚内とは桃鉄で次のゴール稚内かよダリィ、という印象の街ですが、ライダーやサイクリストにとってはまさに最終目的地。その稚内の市街地から車で10分ほどの距離にある「樺太食堂」はバイク乗りの間でも評判のお店です。営業しているのは夏季の朝から昼過ぎまでというのもレア感をそそります。
店内はに紅白の感想ノートが華やかに敷き詰められており選挙事務所さながら。テーブル席と小上がり席があり、家族連れもOK(幼児向けメニューあり)。母ひとり子ふとりのような地元客が多いのが微笑ましいです。
注文して数分で「うにだけうに丼」が着丼。4,950円です。「うにだけ」と言いながら、トッピングをイクラ・カニ・ホタテの中からひとつ選択することができ、こちらではイクラをチョイスしました。このイクラが決してオマケのクオリティではなく、プチプチとしっかりとした歯触りに濃密な海の香りと、トッピングとは思えぬ存在感を主張しています。
主題のウニは全て地元産のムラサキウニを使用。このあたりのムラサキウニは昆布を食べて育っており、甘味と旨味が口腔内に燎原之火の如く広がり、そのひとかけらひとかけらが安めぐみのように柔らかい。昨日の「海鮮丼 魚常」のウニ丼にも大満足でしたが、当店のそれはウニ丼業界のゲームチェンジャーと成り得る迫力があります。
お味噌汁も(恐らく利尻の)とろろ昆布が組み込まれており、磯の香りが強くウニまみれになった味蕾を再起動してくれます。
続いて「二段式生うに丼」は5,500円。メニューに記載された写真は真上から撮られていたためその高さまでは把握できませんでしたが、燎原之火を通り越してこれでは山火事ではないか。
見て下さい、この3D感覚を。まさに海鮮丼業界のラーメン二郎。この設計図が中国あたりの裏社会に流出すればあっという間に3Dプリンタで再現されてしまうので気を付けたいところです。
こちらはウニ・カニ・イクラの面。ウニ・イクラの解説は前述の通りである中、カニの塩味と旨味が思いのほか強く、この巨大な丼に醤油などの調理料を不要とさせるほどです。福井の「川㐂(かわき)」のようなハリウッドスターのようなカニも良いですが、漁師町の無名のカニも充分に旨い。
コチラはイカの面。イカそうめんを超え、やはり二郎のような極太の麺であり、イカだけで腹が膨れるのではないかと心配になるほどの贅沢な悩みを抱えてしまいます。
トビコの面。そのまま食べてもよし、ライスに飛び込ませて新手の混ぜご飯とするもよし。いずれにせよ、この超弩級の山を支える御殿場ルートのような玄人好みの味わいです。
おや、食べ進めていくうちにライスの中からウニが出てきました。この写真は一見グロですが私の食べ方が汚いわけではなく、スプーンでそっと切り開いた状態がもうこれなんです。つまりそれぐらい内部にもウニが敷き詰められているということ。そういえばこの丼のネーミングは「二段式生うに丼」だった忘れてた。
「うにだけうに丼」は4,950円、「二段式生うに丼」は5,500円と、価格だけを見ればかなりの値段のブランチですが、その量および質を考えれば寧ろ割安と言えるでしょう。函館の「うに むらかみ」などは反省するように。

特に「二段式生うに丼」は見た目以上の食べ応えがあり、一般的な成人男性が単独・無酸素で登頂するのはほぼ不可能。同伴者の丼のサイズを小さめにしてもらって、シェアしながら食べると良いかもしれません。もちろん極北の地にまでウニ丼を食べに来る奇特な方がミニサイズを注文するとも思えませんが。

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舟蔵の里(ふなくらのさと)/石垣島

石垣島の中心地から西へ車で5分ほどに位置する「舟蔵の里(ふなくらのさと)」。3千坪もの敷地を誇る施設(?)であり、レストランやカフェ、イベントスペースにお庭、ギャラリーなどが点在します。駐車場もたっぷり。
我々はランチにお邪魔したので「郷土料理棟」へ。座敷にテーブルと座席にバラエティーがあり様々な用途に使えそう。ディナータイムには歌三線と八重山舞踊のライブパフォーマンスもあるそうです。
あぐー豚のトンカツ定食。ちなみに同敷地内には「只喜」という、鰻とカツの専門店もあり、トンカツ料理はお手の物といったところでしょう。
主題のトンカツ。石垣のはずれで食べる定食と侮るなかれ、変な表現ですが、普通に美味しいです。肉質の良さはもちろんのこと、こんがりと揚がった肌理の細かな衣など堂に入ったものがあり、都心のヘタなトンカツ屋よりも全然美味しい。
お椀は澄まし汁で、島豆腐とアーサが入っています。このあたりの食材使いはさすが沖縄といったところ。
こちらはランチ一番人気の「具沢山ちゃんぷる汁そば」。「前田食堂」的に豪快な汁そばであり、海産物がたっぷり入っていることもあって、長崎ちゃんぽんを想起させる味わいです。
麺は当店で手打ちされる八重山そば。いわゆる沖縄そばとは異なり丸麺でスパゲッティのような形状であり、その形からか余計に長崎ちゃんぽん感が熱くなります。もうちょっとコシがある麺のほうが私は好きかな。
いずれのランチメニューも千円前後であり、テーマパーク級に巨大な敷地に大小様々に雰囲気のある古民家を楽しんでこの価格は良心的。ハコが大きいので混雑しないのも旅行者には助かります。夜メニューのツマミ類も魅力的だったので、次回は夜に飲みに来たいな。

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1年で10回沖縄を訪れることもあります。1泊15万円の宿から民宿まで幅広く手がけています。
TACが世に出した一風変わった沖縄本。もはやガイドブックではなく参考書の域です。非常に情報量が多く、かつ、うまく整理されており読みやすい。大判ではないので持ち歩きやすいのも素晴らしいです。オールカラーの割に高くない。数多ある沖縄ガイドブックの中では突出した存在です。

日本料理 舞(まい)/恵比寿

恵比寿のウェスティンの2F階にある日本料理「舞(まい)」。いわゆる都市型ホテルに必ずひとつはある和食店であり、中華料理「龍天門(リュウテンモン)」のお隣です。
寿司に天ぷら、日本料理と和食であれば何でも出します形式であり、それに合わせて座席も寿司カウンターにテーブル席、個室とバリエーションに富んでいます。テーブル席からはお庭がチラりとうかがえます。
ドリンク付きのコースでお願いしていたのですが、スパークリングワインが酒屋で1本千円かそこらのものであり、ウェスティン様でお出しするワインとしてはいかがなものか。今後、当館でワインを愉しむのはちょっとアレだなあと判断した瞬間です。

「ねえねえ、夫婦別姓についてどう思う?」うーん、どうも思わないねえ。ふたりで話し合って好きに決めたらいいんじゃない?どちらかの姓にまとまったほうが幸せならそうすれば良いし、そうでないなら事実婚なり内縁のままでいるなりすればいい。
まずは前菜。ランチのセットメニューにしては結構いろいろ出てきます。いずれの料理もきちんと美味しく、予約が取れない系の日本料理店の八寸に比肩するクオリティです。

「そういう意見ってさ、苗字が変わらない男性サイドの意見とは思わないの?」うーん、別に僕は自分の苗字にこだわりなんて無いけどね。明日からタケマシュラン・ディカプリオになったり、タケマシュラン・ゼタ=ジョーンズなったりしても、僕は僕だよ。苗字なんて、僕の本質に何も関係が無い。

「ふうん。まあ、合格ね」合格?なんだよそれ。意味がわからず問い質そうとする前に彼女は私を制して言う。「あたし、夫婦別姓を訴えている女とか、ほんとムカつくんだよね」
メインに天ぷらか豚肉かキンメダイかを選べたので私は天ぷらをチョイス。海老が2本にアスパラ、オクラ、レンコン、ミョウガ、枝豆とトウモロコシのかき揚げと、これまたランチセットの天ぷらとしては豪華な仕上がりです。

夫婦別姓を訴えている女がムカつく?穏やかじゃないねえ。それって世論の流れと真逆に向かってる危険思想なんじゃないの?フェミとかポリコレとかヤバイんじゃないの?「違う違う。夫婦別姓はね、マウンティングの一種なのよ」
お食事が面白くって、白米か素麺か野菜寿司かの3種から選択できます。珍しいので野菜寿司をチョイス。なるほど野菜をタネにした寿司であり、海外の和食店を訪れたかのような目新しさがありました。

マウンティング?「そう、あれは絶対にマウンティング。『私たちは結婚できる上に女性の権利まで主張できちゃうのよ』っていう自慢話」なるほど確かに彼女はいわゆる「結婚できない女」である。

「結婚した上でさらには自分らしく生きたいだ?ふざけんじゃないわよ図々しい。誰でも結婚できるって思わないでよ。苗字変わりたくても変われない腐女子も沢山いるんだからね。『結婚できないのは高望みしてるから』だ?『現実を見ろ』?何よ偉そうに。現実なんて、夢を諦めた人の専売特許でしょ?」
デザートはずんだ餅にスイカ。これまた珍しい組み合わせであり、当店の料理長は中々ひょうきんな方なのかもしれません。

まあまあ喧嘩は止めなよ。きみが結婚できないのは彼女たちのせいじゃないし、彼女たちが結婚できたのはきみのおかげでもないよ。多分そいつら、今ごろパフェとか食ってるよ。婚姻関係の有無に関係なく、きみはきみで魅力的なところもあるんだから、弱みを嘆くより強みを示そうよ。人生は短いよ。

お会計は6千円。ホテルのランチとしてはこんなものでしょう。個室を始めとする空間づくりに注力しており、会食や親族のイベントなどに使えるお店。グルメ仲間でワイワイやったり恋人とガチデートとは少し違う(本気で飲み食いしたいなら1階の「ザ・テラス (THE TERRACE)」がオススメ)。「シティホテルの和食店」という存在意義をキッチリと抑えたお店です。

正義を主張しているつもりでも、思わぬところで人をイラつかせていることもあるんだな、と、勉強になったランチでした。

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恵比寿も十番に負けず劣らず良い街ですよね。1度住んで、片っ端から食べ歩いてみたいなあ。よそ者ながら印象に残ったお店は下記の通り。
恵比寿を中心に話題店が整理されています。Kindle Unlimitedだと無料で読める。それにしては圧倒的な情報量。スマホやタブレットに忍ばせておくと出先で役立ちます。

悟空(ごくう)/宇都宮

宇都宮は宮島町の「餃子通り」は、その名の通り餃子の名店が立ち並ぶ県内屈指の観光地。「みんみん」や「正嗣(まさし)」が特に有名ですが、その二大巨頭に挟まれる「悟空(ごくう)」もかなりの行列です。回転が悪くかなり待たされるのが難点。
いわゆる餃子屋・ラーメン屋といったカウンター主体のカジュアルな店内。栃木のおばちゃんがテキパキと店内を取り仕切り、様々な国籍の若者が一致団結して宇都宮で中国料理を作るという光景は中々にシュールです。
酒はどれも500円前後といった価格設定であり良心的。なるほどこれは餃子をツマミについつい長居してしまいそうである。
おばちゃんからは「特製肉餃子とジャンボ餃子が人気」との案内がありましたが、我々は全ての焼き餃子が1皿にのったセット的なものを注文。「特製肉餃子」「ジャンボ餃子」「野菜餃子」「しそ餃子」が盛り付けられており、なるほど「特製肉餃子」「ジャンボ餃子」が別格に美味しく感じます。

とりわけ「ジャンボ餃子」は小籠包もかくやと思うほど肉汁に溢れており、一種類しか選べないとするのであれば、私は「ジャンボ餃子」を強く推奨します。
私は「餃子なんて味の素の冷凍のやつで充分じゃね?」という考えの持ち主でしたが、なるほど当店のそれは専門店ならではの圧倒的な存在感がありました。宇都宮にお立ちよりの際は是非どうぞ。

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