店内はかなり広く、別館を含めると100席を超えるのではなかろうか。カウンター席にテーブル席、座敷に掘りごたつとバラエティに富んだ座席構成です。
新島健一シェフはご実家が民宿業を営んでおり、幼少時より料理へのアクセス良し。京都の割烹料理店で経験を積んだのち、淡路島で独立。
揚げたての鱧南蛮漬け。ハモ料理専門店ならではの勇ましい料理です。揚げたてのハモにジュワっと甘酢が飛び掛かり、ビールが欲しくなる逸品です。
鱧のお椀。ハモの身やら骨やらから出たエキスと共にしっとりと頂きます。なるほどカツオや昆布とはまた違った野趣あふれる味わい。淡路島産のズッキーニとアスパラも野菜としての味が濃く美味。
ハモのお刺身。ハモやウナギ、アナゴなどのニョロニョロ系の血液には毒が含まれており、一般的に生食はご法度。そこを丁寧に下処理し毒抜きし刺身へと辿り着いた努力の一皿です。淡路島産のタマネギを用いた玉ねぎ醤油に良く合う。
鱧の八寸。鱧の落としの美味しさは当然として、淡路島産のモズクが抜群に美味しいですねえ。ラーメンで言えば中太麺ほどの太さがあり、どっしりブツブツと食べ応えのあるモズクです。ハモと万願寺唐辛子の天ぷら。くわー、こんなに肉厚で食べ応えのある威風堂々なハモは初めてです。というか、知らずに食べればこれがハモだと気づかないのではなかろうか。歯を入れるとブッツリと切れ、ムッシャムッシャと咀嚼する。このとき私は絶頂に達したのです。
鱧寿司は白焼きと蒲焼の2種。炭の香りが食欲をそそり、先の天ぷらと同様に抜群の食べ応えを誇ります。ハモって日本料理屋が夏のマターとしてとりあえず出している印象が強い食材でしたが、なるほどハモ一本で主役を張れるほどの魅力に溢れた食材だったのですね。
お待ちかね、メインディッシュのハモしゃぶです。やはり肉厚のハモの正肉(?)がドカンドカンと。左下の丸っこいのは卵であり夏だけの珍味。左上のはハモの内蔵。牛のホルモン同様にゴシゴシと噛み応えのある珍味です。
先のハモの身をハモ出汁にたっぷりとくぐらせて頂きます。じっくり焼かれたハモの頭やら骨やらから煮だしたエキスに昆布にカツオ、そして淡路島産のタマネギ。恐らくハモと玉ねぎを合わせて食べるのでは世界広しと言えども当店ぐらいですが、これが不思議と合うのです。
〆は先のお出汁で雑炊を。米の一粒一粒がハモの風味をたっぷりと吸って、フリーサイズに袖を通したような居心地の良さを感じるフィニッシュでした。デザートは黒糖きな粉(?)のシャーベット。地味な一皿ですが、これが旨い。京都の上級な黒蜜系カキ氷の美味しい部分のみを凝縮したような味わいであり、見た目以上にドッシリと食べ応えがありました。
以上、ハモ尽くしのコースは1万円ポッキリ。これだけのハモをたっぷり食べてこの価格というのは実にリーズナブル。加えて秋に入れば仕入れ価格も下がるので、より安価に楽しむことができるとのこと。ちなみにAWには松茸、冬にはフグ、春にはアナゴと季節ごとに楽しみ方が変遷していく魅力的なお店。距離さえ許せば3ヵ月ごとに通いたいお店です。
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日本料理はジャンルとして突出して高いです。「飲んで食べて1万円ぐらいでオススメの日本料理ない?」みたいなことを聞かれると、1万円で良い日本料理なんてありませんよ、と答えるようにしているのですが、「お前は感覚がズレている」となぜか非難されるのが心外。ほんとだから。そんな中でもバランス良く感じたお店は下記の通りです。
- かどわき/麻布十番 ←人生で一番の日本料理かも。
- と村/虎ノ門 ←季節を切り取る、究極の旬を楽しむエンターテインメント。
- しのはら/銀座 ←予約困難となって当然だ。
- 温味/すすきの ←旨い!多い!安い!完全無欠の三ツ星日本料理店。
- 龍吟/六本木 ←モダンスパニッシュとさえ感じる前衛的な日本料理。外人にオススメ。
- いち太/外苑前 ←フランス料理のように多層的な味わい。
- おぎ乃/赤坂 ←赤坂にミラクルな店が爆誕しました。
- 比良山荘(ひらさんそう)/湖西(滋賀) ←鮎をたらふく食べ、熊肉に舌鼓を打ち、マツタケをザルのように食べてこの支払金額はお値打ち。
- 木山(きやま)/ 丸太町(京都) ←京都で一番好きなお店。
- 田がわ/御幸町(京都) ←幸村卒業。近い将来、星獲得間違いなしのリーズナブルな日本料理。
- 又吉/祇園(京都) ←雰囲気のある街並みに溶け込む費用対効果抜群のお店。
- カモシヤ クスモト/福島(大阪) ←独学でもトップに立ててしまうのか。
- 島之内 一陽/難波 ←カジュアル日本料理の最高峰。
- 和やまむら/奈良駅 ←ミシュラン3ツ星。料理が抜群に旨いガールズバー。
- みつき/鳥取駅 ←この質のカニをこの価格で提供できるのは地の利。
- 季節料理なかしま/白島(広島) ←同じくミシュラン三ツ星日本料理にしては圧倒的な安さ。
- 馳走 ?啄一十(ちそう そったくいと)/広島市 ←中国地方、いや日本全体を含めてもトップクラスに好きな日本料理店。
- 御料理 まつ山/黒崎(北九州) ←北九州の旅程に是非とも組み込みたいお店。
- 日本料理 幸庵 ←こちらも費用対効果が素晴らしい。ミシュラン三ツ星って実はお買い得?