姫沙羅(ひめしゃら)/円山公園(札幌)

すすきのから円山公園エリアに移転した「姫沙羅(ひめしゃら)」。北海道でも屈指の人気を誇る鮨店です。ミシュラン2ツ星。のれんに掲げられた「鮨」の字が「魚米旨」をガッチャンコさせたもので面白い。
黒を基調とした店内はカウンター席が8席ほど。17時と19時半の2回転。こういったスタイルのお店にはオラついったオッサンと港区女子が集いがちですが、この日はとても客層が良く、皆まじめに鮨に向かい合っており居心地が良かったです。
席に着くと既にスタンバっている小鉢たち。ガリは置かず、浅漬けなどでお口の中をリセットさせようという試みは斬新。
1品目はウニに長芋、もずく。サッパリしたもずくの味覚に濃密なウニの風味が纏わりつく。
いきなりトロタクがやって来ました。シャリ少な目トロ多めというセパージュが嬉しい。たくあんのアクセントに海苔の香り。がっちりと胃袋を掴む出だしです。
ケンサキイカ。ねっとりとした甘味が特長的で、加えて包丁が細かく細かく入っており、ベロにしっとりと吸い付くさまが官能的です。
ムラサキウニを軍艦で。この、始まったばかりだというのに既にフィニッシュのような構成が面白いですね。メメントのように逆回しで鮨を食べているかのような気分。
ヅケは過剰にヅケヅケしておらず、赤身の美味しさがしっかりと伝わる仕様です。ちなみにいきなりにぎりから始まるスタイルは、お酒で酔っぱらう前にしっかりと鮨を味わって欲しい、という思いを込めての構成のようです。
トロとウニがテンコ盛り。冒頭のトロタクも良いですが、大量のウニが投下されたことに味覚にリッチさが増しました。筧美和子のように豊満な味わいです。
にぎりは一休み。道産素材のオツマミセットで飲ませにかかります。夏のおせち料理とも言うべき豪華さであり、車で訪れたためノンアルコールを強いられることがとても悲しい。中でもアブラボウズ(深海魚の一種)を炙ったものにウニの塩辛、ホタルイカ、クジラのベーコン、アンキモが心に残りました。
握り第二幕。ここでチップ(ヒメマス)。品の良い赤い味わいが好印象。
肉厚のホッキ貝。やはり貝類は厚ければ厚いほど旨い。口いっぱいに広がる磯の香りに至福のひととき。
メヌケは脂が多く、噛みしめるために甘味が増すのが印象的。
スペシャリテの「えびの全部のせ」。シャリにボタンエビとその味噌・卵がタワーとなって登場します。意匠登録まで済ませた面白い造形であり、味もエビエビしてて美味しかった。
ニシン。北海道ならではのタネですが、やや酢がききすぎているように感じます。しかしながら連れは絶賛していたので、好みは人それぞれなのでしょう。
さっきからどんどんウニが出ますねえ。こちらはバフンウニで海苔は巻いておらず、ウニそのものの旨味が直線的に楽しめます。
お椀はアオサの味噌汁なのですが、エビの風味が強烈で和風ブイヤベースさながら。本日の名脇役。
太巻きもかなり凝っていて、まずは茶色い部分をひとくち、残りをふた口目でと味覚のグラデーションが設計されています。一般的に太巻きは消化試合的な位置づけにあることが多いですが、当店のそれは主役を張れるほどの存在感がありました。

以上を食べ、お食事だけで約2.5万円。札幌の鮨屋としては高価格な部類に入りますが、これだけのウニとマグロを出してこの支払金額は寧ろ割安ではなかろうか。お酒も1合千円かそこらなので、しっかり飲んでも3万円。東京のちょづいた鮨屋に行くよりも満足度は数段上でしょう。「魚米旨」というコンセプトに従いにぎりが多いのも好印象。札幌でしっかりとにぎりを食べたい際にどうぞ。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。