メゾン フジヤ ハコダテ(maison FUJIYA hakodate)/函館

神戸や長崎と同じく港町特有の空気を孕む函館。海から二十間坂を登って正面にある真っ白な邸宅が「メゾン フジヤ ハコダテ(maison FUJIYA hakodate)」。私の知る限り、日本でも屈指の眺望を誇るフランス料理店です。
1階はウェイティングスペースで2階がダイニングという贅沢な造り。白を基調とした上品な内装であり、大きな窓から望む函館の海が実にロマンチック。くどいようですが、この眺望を誇るレストランは中々ありません。
藤谷圭介シェフは北海道の料理人の中で有名な存在で、フランスの「アラン・サンドランス」などで腕を磨き札幌の「バンケット(Banquet)」ではスーシェフを務め、「コートドール」や「オプトゥニールK 」でシェフを務めた後、2020年に当店をオープン。北海道フランス料理界の語り部と言えるでしょう。
ワインが安い。加えて私好みのものが多数取り揃えられておりボトルで注文するか否か20分ほど悩んだのですが、結局ペアリングでお願いしました。料理に寄り添うセレクションであり量もたっぷり。結構酔っぱらったぜ。
アミューズに函館産バフンウニ。のっけから高級食材を投入し何と懐の広いお店なのでしょう。パイ生地の心地よい食感にウニの甘味、トリュフの香り。草間彌生調の皿。何ともゴージャスな幕開けです。
続いて紫蘇の冷製スープ。トマトの甘味と爽やかな紫蘇の風味と共に、、、
ボタンエビ。トロンとした舌触りに迫り来るエビの甘味。このとき私は絶頂に達しました。
カスベのコロッケ(?)。カスベとは北海道の方言でエイのことであり、コラーゲン主体の魚というか何というかカスベです。イカスミで外観を遊び、ガラムマサラで意外性を付与する面白い料理でした。
パンが美味しい。プレーンなバゲットの素朴な味わいに続き、ジャガイモを練り込んだ優しい味わいのものなど記憶に残るものがありました。
フォアグラは煮たルバーブにダークチェリーをトッピング。美味しいのですが甘味が強くスイーツ寄り。思い切ってデザートで出してしまうのもありかもしれません。
鮎はキュウリやスイカなど瓜系食材と共に楽しむのですが、スイカのソース(スープ?)はちょっとやりすぎ感がありました。畢竟、鮎とは塩焼きなのかもしれません。
毛ガニを詰め込んだ花ズッキーニは当然に美味しいのですが、前の皿からのインターバルが長すぎた。フルにゲストが出揃うと途端にテンポが悪くなる運用は今後の課題と言えるでしょう。
ヒラメも悪くないのですが、やはり前の料理からのリズム感が無く、心なしか口当たりもボソボソに感じました。
メインは帯広のラムを選択。魚介類の進捗の悪さから我々のテンションは下がり切っており、美味しいのですが凝り性であり飽き性な私の心には響きませんでした。
気を取り直してデザートに参ります。
チョコレート系のスイーツ。どっしりと重く、チョコ食ったなあと思わせる存在感。ノワゼットの香りと食感が絶妙なアクセントを奏でます。
焼きたてのマカロンならびに種々のマカロンがハイクオリティ。なるほど五稜郭に洋菓子の専門店をオープンしただけあって、デザートのレベルが妙に高い。
ハーブティで〆てごちそうさまでした。

以上を食べ、かなり飲んでお会計はひとりあたり3万円弱。函館の飲食店としては気合の入った値付けですが、それに見合う価値があると言えるでしょう。今回、序盤の試合運びが素晴らしく終盤が崩れてしまったのは合縁奇縁。たまたまです。今度はランチに来てみようかな。

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