クッチーナ(CUCINA)/大垣(岐阜)

岐阜県大垣市では初のミシュランの星を獲得した「クッチーナ(CUCINA)」。2021年4月という地獄のタイミングで大垣城すぐ近くに移転を果たしました。
店内は天井が高く圧のある音楽が流れておりクラブのような雰囲気。空間デザインはインテリアデザイナーのムッシュ森田恭通が手掛けており、壁一面に貼られた調理器具など記憶に残る内装です。

田中照道シェフは大垣市出身。ピエモンテの料理学校を卒業後、イタリア各地の名店で腕を磨き、帰国後に当店を開業。ブライダル系のレストランの料理長も兼ねるなど八面六臂の大活躍。
お酒はペアリングでソムリエールに全てお任せ。きちんとシェフの味覚の意図を理解した上でのペアリングであり、日本酒などワイン意外のお酒を起用するタイミングもセンスが良かったです。
まずはエンジェルヘアー。細い細いパスタにバジルの風味が組み込まれており、ウニの甘味と共に頂きます、ジュンサイのヌルっとした舌ざわりが面白いアクセント。
ピーナッツ型の最中(?)の中にはフォアグラとピーナッツのクリーム。見た目以上に味が重く、すっかり酒が進んでしまいました。
地元で獲れた鮎のエスカベッシュ(南蛮漬け)。日本料理店だと塩焼き一辺倒の素材ですが、こういった欧米系の調理もいいですね。
小さなおつまみ、続く。手前の飛騨牛のタルタルが絶品。色んな部位が手切りで組み込まれており、軽く炙って香りを挽きたて、官能的な脂の旨味に酔いしれます。島らっきょうと口中調理して味わいの変化を楽しむのもいとをかし。
イカの春巻き。イカがこれでもかというほどギッチギチに詰め込まれておりイカんともし難い美味しさ。イカスミのソースもイカした味わいであり、本日一番の料理でした。
コハダのテリーヌ。札幌「霜止出苗(シモヤミテナエイズル)」のそれよりも、よりコハダの味覚を前面に押し出しており、熟成させた山廃と痺れるほどよく合います。付け合わせはカリフラワーをガリっぽく仕上げたガリフラワー。
ホワイトアスパラにはカルボナーラ風のソースをたっぷり。塩気担当として生ハムを添えておりヘヴィ級の美味しさ。それにしても、シェフはあの巨体でこのような繊細で愛らしい料理をクリエイトし続けるのが面白い。お皿選びもとても可愛い。
メロンを天ぷらにし、新しい形での生ハムメロンを提案します。一見ゲテモノに聞こえてしまうかもしれませんが、熟したメロンが熱を持ち、トロっとした食感に化けているのが滅法旨い。サツマイモのソースも味わいに土台を与えており、記憶にのこったひと品です。
パンも凝っていて、シラスをたっぷりのせたブルスケッタ。このひとつで序盤の小皿料理に匹敵する美味しさです。
カツオの藁焼き。モクモクとした香りが食欲をそそり、鉄を連想させるメタリックな味覚が面白い。ピンポイント起用された行者ニンニクもビビッドな風味で美味。
トリュフを混ぜ込んだスクランブルエッグに更にトリュフをトッピング。お隣にはパルミジャーノの鳩サブレ。連れの腹が膨れて来たらしく「半分食べて」とのことで引き受けたのですが、あろうことか上半分のトリュフの部分だけ食べて寄こしやがった。
メインはフランス産の鴨。岐阜は郡上市で生産される味噌で漬け込んだ後に火を入れます。フランスと岐阜の邂逅。だがしかし当店はイタリア料理店。そういったジャンル分けなど意味がないと気づかされるほど不思議と味噌と鴨がマッチした味わいです。
〆の炭水化物は白子のリゾット。米よりも白子の方が量が多いのではなかろうかという嬉しいアンバランス。そういえば、ここまでかなりの品数を食べてきましたが、意外にもローカーボだったかもしれません。
デザート1皿目はクレマカタラナ。これはもう味覚を語るよりもまずはその驚愕のプレゼンテーションでしょう。ネタバレになるので詳述しませんが、皆さまお楽しみに。
続いてベリー系のお菓子だったっけな。飴細工の取り扱いに苦労してスイーツそのものに意識が向きませんでした。
グランマルニエ香るチョコレートでフィニッシュ。こちそうさまでした。

以上、腹いっぱいになるまで食べ、アルコールのペアリングをつけてお会計はひとりあたり1.9万円。東京のアホでトレンディなイノベーティブ系のレストランの半額に迫る価格設定です。費用対効果の素晴らしさはさておき、料理そのものがきちんと美味しくシャレも効いていてセンスがある。イタリア料理店というよりは何でもアリの旨いもの屋。札幌「霜止出苗(シモヤミテナエイズル)」に通じる楽しさがありました。岐阜を訪れた際には是非どうぞ。

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