バンケット(Banquet)/西18丁目(札幌)

札幌の中心街からかなり西にある「バンケット(Banquet)」。昼夜2組づつのみのフランス料理店であり、ミシュラン1ツ星を獲得。食べログでは百名店に選出されています。
店名に相応しい開放的な雰囲気のダイニング(写真はポケットコンシェルジュ公式ページより)。どーんとでっかいテーブルがひとつに個室がもうひとつ。ここでワイン会を開催できればとても楽しそう。

若杉幸平シェフは長い期間をフランスで過ごした実力派。〆に3ツ星「ミッシェル・ゲラール」で魚部門のシェフを務めた凄腕です。かといってちょづいたところは1ミリもなく、恰幅が良く快活で気持ちの良い好人物。電通の営業にいそう。
まずはアンチョビバターを挟んだチーズのサブレ。シンプルな味覚ですが今後の展開を期待させる美味しさ。禁酒法の時代であり、シャンパーニュと共に味わえないのがとても残念。
ホワイトアスパラのパンナコッタにバフンウニ。このウニが本当に美味しくって、ホワイトアスパラの少し土っぽい風味にピッタシカンカン。鮨屋の軍艦巻きを凌駕するポーションにも悶絶。
続いてガルビュール。肉や野菜をくたくたに煮込んだ具沢山のスープ。道産の野菜とフランス産の鴨が手と手を取り合い、姉妹都市宣言をしても良さそうな組み合わせです。
パンも美味しい。道産小麦を用いた自家製のものであり、やはりフランスに長く滞在した料理人のパンへのこだわりは相当なものです。日本人の米へのこだわりがそうであるように。
野付産のホタテはシンプルにポワレ。ホタテの味そのものを楽しむ調味ですが、セリのオリエンタルな風味がアクセントにちょうど良かった。
函館産神経締めの真ソイ。ソイが主役なのですが、共に組み込まれたヤリイカやアスパラのクオリティもかなりのもの。白眉はソース。シャンパンを用いているそうで、思いきりの良い酸味が心地よく、こういったメリハリのきいた味わいはフランス料理の美点である。
地元のカブを用いたかぶら蒸し。クネルというかさつま揚げというか、かなりしっかりとした泡の食感が面白い。中には甘海老が山ほど詰め込まれており、また、甘海老とオマールのソースも圧倒的な美味しさ。この一皿で、そんじょそこらのフランス料理店とは歴然とした違いが感じ取れるでしょう。
メインはミッシェル・ゲラールへのオマージュとした料理。ひな鶏のムネ肉にフォアグラを挟み込み、ひな鶏のモモの皮で巻きこむというややこしい調理です。これが、旨い。瑞々しく味のハッキリとした肉であり、フォアグラのコクが上手に寄り添います。ホワイトアスパラの味も濃く、マックのてりやきソースを感じさせる懐かしく濃厚なソースが全体を取りまとめます。
デザートはレモンのクリームとバニラアイス。いずれも王道といった味わいであり、濃厚ながらスルスルと胃袋に落ちていく美味しさです。「乙部町の水のジュレ」という謎の物質も体に溶け込む爽やかな味わい。
上質なお茶菓子とハーブティで〆。ごちそうさまでした。

お会計はお食事だけで1万円強。仮にワインを楽しんだとしても2万円に収まるであろう価格設計であり、見事な費用対効果です。全体を通して明るい料理で陰影がハッキリしており、味覚のインフラがしっかりしているという印象。グルメ仲間と大テーブルを囲んで楽しくワイワイやるにうってつけのお店でした。

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