金沢屈指の高級料亭「つる幸」が閉店し、当時の料理長が新たにオープンさせた「金澤せつ理」。場所は近江町市場近く元「つる幸」の超ご近所。オープンして日が浅いためか、食べログの口コミは10件以下でした。
入店して笑撃。カウンター真正面に超巨大なテレビがかけられています(写真はポケットコンシェルジュ公式ウェブサイトより)。このクラスの日本料理店としてはかなり珍しい誂え。映像はオリジナルのものだそうで、石川県の観光地の紹介が静かに流れています。
河田康雄シェフは大阪の「味吉兆」を経て「つる幸」の2代目料理長となり、「料理の鉄人」や「情熱大陸」にも出演した経験があります。
酒は選べばかなり安い。例えばマスターズドリームは700円であり、この価格で飲める日本料理店はかなり珍しい部類でしょう。日本酒も1合千円~であり、それほど商売っ気は感じませんでした。
温かい液体を飲むと空腹感が紛れると何かで読んだことがあるのでお味噌汁を瞬でがぶ飲み。腹減った。
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和食は料理ジャンルとして突出して高いです。「飲んで食べて1万円ぐらいでオススメの和食ない?」みたいなことを聞かれると、1万円で良い和食なんてありませんよ、と答えるようにしているのですが、「お前は感覚がズレている」となぜか非難されるのが心外。ほんとだから。そんな中でもバランス良く感じたお店は下記の通りです。
黒木純さんの著作。「そんなのつくれねーよ」と突っ込みたくなる奇をてらったレシピ本とは異なり、家庭で食べる、誰でも知っている「おかず」に集中特化した読み応えのある本です。トウモロコシご飯の造り方も惜しみなく公開中。彼がここにまで至るストーリーが描かれたエッセイも魅力的。
まずはサクラダイ。かなり厚めに切りつけられており、グニグニとした食感を楽しみます。ウニの起用方法も嫌らしくなく、サクラダイに磯の風味を添加するに留めるというバランス感覚を感じました。
八寸。中央の茶碗蒸しが斬新。ベースは一般的な茶碗蒸しに具材はホタルイカなのですが、イカスミのシャーベットを差し込むという荒業をやってのけ、前衛的な欧米系料理、そう、例えば広尾「Ode(オード)」のような創造性を感じました。
お椀はアワビのしんじょうにアワビ茸。なるほどアワビの風味が強く大人の味わいです。「ねえ、あの『シイタケ嫌い』ってヒトさ、こういうキノコも苦手なわけ?」知るか。でも本当にシイタケだけがダメで、他のキノコは全部大丈夫とも言っていたよ。
お造りは地アラ、サヨリ、アマエビ、シマエビ、ボタンエビ。「地アラ」とはこの辺りでは一番の高級魚で、いわゆる「アラ」とは異なりスズキの仲間だそうです。なるほど確かに風味豊かで王者たる風格を感じました。
焼き物はアマダイ。ぶつ切りのカラスミを調味料代わりにして酒の進む味わいです。身の厚さも中々のものです。
ノドグロのしゃぶしゃぶ。コッテリとしたものが多い魚から程よく脂が抜け、タケノコと共に若竹煮のように奥ゆかしい味わいを楽しみます。
お漬物が届きました。上品で美味。でも、あれ?もうおしまい??なんかすっげえ少なくない?もちろんランチ1万円のコースなどであればまあこんなもんかという食べ応えですが、お食事だけで2万円を超えるにしては胃袋がガラ空きである。温かい液体を飲むと空腹感が紛れると何かで読んだことがあるのでお味噌汁を瞬でがぶ飲み。腹減った。
アカイカにコノワタを纏わせた丼。文句なしに美味しいのですが、もっと皿数が多いと勝手に信じ込んでおり多めに酒を発注してしまっており、残った日本酒を飲み切るラストチャンスでした。
〆のお食事はもうひと皿。自家製のカレーです。もちろん美味しいのですが、なんだか上手く丸め込まれたような気もします。
イチゴにオレンジ、ブルーベリーをマスカルポーネと共にごちそうさまでした。
以上を食べ、ビール1杯に2合を飲んでひとりあたり2.4万円。東京で同じものを食べることを考えれば割安ですが、私のスイートスポットには刺さりませんでした。どの皿も美味しいのですが淡々と進捗し盛り上がりに欠け、記憶には残らなかったというのが正直な感想。「つる幸」出身と言えば「片折(かたおり)」が話題ですが、同じくピンとこなかったことを考えると、このあたりの好みは人それぞれなのかもしれません。
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和食は料理ジャンルとして突出して高いです。「飲んで食べて1万円ぐらいでオススメの和食ない?」みたいなことを聞かれると、1万円で良い和食なんてありませんよ、と答えるようにしているのですが、「お前は感覚がズレている」となぜか非難されるのが心外。ほんとだから。そんな中でもバランス良く感じたお店は下記の通りです。
- かどわき/麻布十番 ←人生で一番の和食かも。
- と村/虎ノ門 ←季節を切り取る、究極の旬を楽しむエンターテインメント。
- しのはら/銀座 ←予約困難となって当然だ。
- 温味/すすきの ←旨い!多い!安い!完全無欠の三ツ星和食店。
- 龍吟/六本木 ←モダンスパニッシュとさえ感じる前衛的な和食。外人にオススメ。
- いち太/外苑前 ←フランス料理のように多層的な味わい。
- おぎ乃/赤坂 ←赤坂にミラクルな店が爆誕しました。
- 比良山荘(ひらさんそう)/湖西(滋賀) ←鮎をたらふく食べ、熊肉に舌鼓を打ち、マツタケをザルのように食べてこの支払金額はお値打ち。
- 木山(きやま)/ 丸太町(京都) ←京都で一番好きなお店。
- 田がわ/御幸町(京都) ←幸村卒業。近い将来、星獲得間違いなしのリーズナブルな和食。
- 又吉/祇園(京都) ←雰囲気のある街並みに溶け込む費用対効果抜群のお店。
- カモシヤ クスモト/福島(大阪) ←独学でもトップに立ててしまうのか。
- 島之内 一陽/難波 ←カジュアル和食の最高峰。
- 和やまむら/奈良駅 ←ミシュラン3ツ星。料理が抜群に旨いガールズバー。
- みつき/鳥取駅 ←この質のカニをこの価格で提供できるのは地の利。
- 季節料理なかしま/白島(広島) ←同じくミシュラン三ツ星和食にしては圧倒的な安さ。
- 馳走 啄一十(ちそう そったくいと)/広島市 ←中国地方、いや日本全体を含めてもトップクラスに好きな和食店。
- 御料理 まつ山/黒崎(北九州) ←北九州の旅程に是非とも組み込みたいお店。
- 日本料理 幸庵 ←こちらも費用対効果が素晴らしい。ミシュラン三ツ星って実はお買い得?