恵比寿えんどう/恵比寿

恵比寿駅の西口を出て坂を上がったビルの最上階にある「恵比寿えんどう」。キムチの美味しい「韓国食堂 入ル 坂上ル(いる さかあがる)」と同じビルです。
カウンター8席のみの小さなお店。最上階で窓のある変わった誂えであり、鮨屋にしては珍しく店内の採光が素晴らしい。

遠藤記史シェフはご実家がお鮨屋さんであり、18歳から25歳にかけてはイギリスにサッカー留学し、現地のクラブチームでもプレーしたという猛者。帰国後は銀座「鮨 水谷」六本木「鮨さいとう」広尾「長谷川稔」などの超有名店で腕を磨きました。
エビスの小瓶は800円、クラフトビールは千円~と悪くない価格設定なのですが、なぜか日本酒にだけ価格が記載されておらず、最終支払金額が思いがけず高くついたので、つまりそういうことなのでしょう。
てっさ。ビンビンにいかっているトラフグの刺身であり、マッチョな噛み応えを楽しみます。
ホタルイカと上等なもろみを叩いて混ぜ合わせます。大至急日本酒を注文しました。
天草産の鰻。思いきりバリバリに炙って、クリスピーな食感を楽しむ逸品。
ただのキュウリなのですが、細かく細かく包丁を入れ、塩麹とあご出汁とスダチ’(だっけ?)を用いて爽やかな味わいへと昇華させています。うーん、これが、料理だ。
カラスミは粒感がありタラコのような舌ざわり。カチカチに凝縮感のあるのも良いですが、こういった優しいタイプも良いですね。
メジマグロの炙り。これはもう、どっちゃくそ旨いですねえ。フレッシュなのにコクがあり、脂のバランスも完璧。まさにメークドラマと言える味わいです。
にぎりに入ります。まずはキンメダイ。先ほどのメジマグロに方向性が似通っており、私はときおり失神した。
マグロは中トロのみ。最近は泳ぐダイヤモンドとも言うべきマグロを連発する鮨屋が増え、結果として客単価の上昇に繋がっていると思うのですが、当店の一点集中型には好感を持てました。
ガリは歯ごたえを残すタイプであり私好み。にぎりのスタイルにつき、シャリを筆頭に全体的に小ぶりな仕様であり、色々食べたいけど量は食べれないワガママ女子などにも向いていることでしょう。
赤貝も一口サイズ。昨今は手榴弾のようなサイズの赤貝を用意することが主流となっていますが、なかなかどうして小粒に食べる赤貝も上品で美味しいじゃないですか。
クジラ。丁寧に下処理されており臭みなどは一切なく、上質な馬肉を食べているかのようです。
アオリイカもシンプルの極致ともいうべき味わい。
クルマエビもふたつにぶった切る特大サイズではなく、やはり一口で愉しむスタイル。甘味が強くバッチグー。
ノドグロもバリっと炙り、皮目のサクっとした食感からジューシーなエキスへとグラデーションを楽しみます。
ホタテの磯辺焼き。生で食べるのも好きですが、熱を入れ味わいが凝集し、それを包み込む海苔の風味も磯っぽくて魅力的。
イワシはジトっとした脂が響き滅法旨い。内側にネギ(?)が忍んでおり、イワシの余韻を上手く断ち切っています。
白エビもプリプリというよりはシットリとしたニュアンス。純白な甘味に目尻が下がる。
コハダ。このタイミングで出るのは珍しいですが、その場面に相応しい熟度でありしみじみとした味わいです。
鰻が再登板なのですが、先の鰻とは調理が全く異なりフワッフワのホロッホロでまるで別物。あちらは酒のツマミによし、こちらはにぎりにピッタリです。
巻物トロたくで。シャリ少な目の肉多めという正義の配合です。
ハマグリのお椀で〆。ごちそうさまでした。

一通りを食べ軽く飲んでひとりあたり3万円強と、思ったよりも高くつきました。それでもマグロとウニとイクラをバカみたいに盛り付けてインスタに媚びる、みたいなことはしない姿勢が好印象。最近流行のフォーマット化された鮨屋とは一線を画す、信念を感じるスタイルです。昨今の鮨ブームに一石を投じる店。玄人好み。上級者向け。同性の友人とシッポリどうぞ。

食べログ グルメブログランキング


関連記事
鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。