西麻布の交差点から路地をチョイチョイと入った所にあるいイタリアン「トルナヴェント(TORNAVENTO)」。ネット上の口コミでは「写真撮影厳禁」「マダムの接客が独特」と賛否両論でZ世代にはハードルが高い感がありますが「味は最高」という評価は一致している面白いお店です。その謎を解明すべく我々は西麻布の奥地へと向かった。
テーブルが3卓に個室がひとつと小体なお店。ゆったりと静かな雰囲気やテーブル間隔の広さなどニューノーマルに適した誂えです。
さて論点の「写真撮影厳禁」「マダムの接客が独特」ですが、何のことはない、普通に感じの良い接客です。我々ふたりとも一見のド素人客であり、当店とは何の利害関係もないのですが、撮影の可否を確認すると快くOKでありホスピタリティも充分。みんな何に不満を持っているのかと拍子抜けしました。
さて当店はピエモンテ地方の郷土料理が自慢であり、ワインも勿論かの地のものが多い。ボトルの値段は幅広く下は6千円台、上は無限大と楽しいワインリストです。美しい前菜。ベースはサワラで色とりどりのお野菜にキャビアでスマッシュ。さっぱりとしながらもグイグイと泡を飲ませる、トップバッターとして最適なひと皿です。
パンが絶品。モチっというかネチャっというか、独特の食感であり、チーズを始めとした様々な風味も酒を呼びます。イタリア料理店としては最高峰のパンの美味しさ。
フワっとした生ハムの中にはゴルゴンゾーラのムースにハチミツのブルスケッタ(薄切りのパン的なやつ)。生ハムとゴルゴンゾーラの塩気にハチミツの心地よい甘味。バランス感覚。今度おうちで真似してみよう。
ホワイトアスパラガスにはトマト風味のスクランブルエッグ的な料理。アスパラのジューシーなエキスに卵のコク、トマトの酸味が愛くるしい。先のネチャもちゃパンでソースを拭って恵比須顔。
手打ちのタヤリン。カップヌードルの麺を死ぬほど美味しくしたような口当たりであり、粗く挽いた肉のソースと良く合う。パスタ料理ながら酒の進む逸品です。
これは何という料理なんだろう。羊とブルーチーズにナッツやら何やらを塗して揚げ焼き(?)した肉料理。チーズの香りと塩気、様々な食感、羊の脂の独特の甘味と、構成要素は単純ながらも素人には真似できない完成度が伺えます。
デザートはイタリア風のアップルパイ「ストルゥーデル」。生地そのものの味わいやリンゴの凝縮した甘味など、手作りならではの深みを感じるスイーツでした。ハーブティーで〆てごちそうさまでした。
1万円のコース料理にボトルをふたりで1本、グラスで1杯づつ飲んで、お会計はひとりあたり2万円と少し。イタリア料理としては高い部類に入りますが、重厚な客層に軽やかなサービス、確かな品質の料理を考えれば妥当な価格設定でしょう。駅から遠くネット予約を受け付けてないのも不便ですが、そのおかげで客層が保たれているとも言えるかもしれません。接待とかにええんとちゃうかな。素敵な大人がシックにイタリア料理を楽しみに行くお店でした。
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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
- ウシマル(Ushimaru)/山武市(千葉) ←ちょっとした海外旅行に来たような満足感。
- ヴィラ・アイーダ(Villa AiDA)/岩出(和歌山) ←我が心のイタリアン第1位。
- プリズマ(PRISMA)/表参道 ←高価格帯のイタリア料理という意味では東京で一番好きなお店かもしれない。
- TACUBO(タクボ)/代官山 ←ポイントは二番手の存在。
- ロマンティコ(Romantico)/白金台 ←鉄壁の料理観。
- アロマフレスカ(Ristorante Aroma-fresca)/銀座 ←好き嫌いを超えた魅力。普遍性。
- ザ・ひらまつ ホテルズ&リゾーツ 仙石原/箱根 ←最高の家畜体験。
- ひまわり食堂/富山市 ←こねくり回すことなく、いま何を食べているのかハッキリとわかる味と量。
- プリンチピオ/麻布十番 ←こんなに有意義な6,800円があるか?
- ロッツォシチリア/南麻布 ←雰囲気良く客のレベル高し。ウイキョウのパスタが秀逸。
- ポンテ デル ピアット (PONTE DEL PIATTO)/広尾 ←少量多皿でどれも旨い。
- サローネ2007/元町 ←ランチのポモドーロは絶品。グラム数が指定できるもの最THE高。
日本のイタリア料理の歴史から現代イタリアンの魅力まで余すこと無く紹介されており、情報量が異常なほど多く、馬鹿ではちょっと読み切れないほどの魅力に溢れた1冊です。外食好きの方は絶対買っておきましょう。