肉屋 雪月花 NAGOYA(せつげっか)/名古屋駅

東京にも進出し、その勢いはとどまる事を知らない「雪月花(せつげっか)」グループの総本山「肉屋 雪月花 NAGOYA」。名古屋駅近くのビル地下という使い勝手の良い立地。食べログでは4.35(2021年3月)と高得点でシルバーメダルも獲得。
店内はズラっと長いカウンターにテーブル席。トータルでは20席ほどでしょうか。接待的なニュアンスで訪れている人が多いように感じました。

田中覚シェフは精肉店の3代目。10歳から包丁を握ってきたサラブレッドであり、一大お肉グループを築き上げました。
お食事だけで4万円弱もするので色々と覚悟していたのですが、思ったよりも酒は高くはありません。例えばこの瓶ビールなどは800円かそこらと良心的。0次会で結構飲んできたので、この食事においてはあまり飲みませんでした。
生肉から始まります。ミョウガなどの薬味がたっぷり巻き込まれておりサッパリ。ただし肉の温度が低すぎるきらいがあり、お肉そのものの味わいは良くわからなかった。
続いてハマグリ。下にはロワール産の白アスパラガス、頂上にはキャビア。いや、別に美味しいけど、こんな金満を見せびらかすような料理作ってて楽しいのかね。私のATフィールドが強く展開し始めた瞬間です。
続いて山菜のおひたし。謎である。負のマグヌス効果が生じました。
お造りは神戸牛のトモサンカク。美味しいのですが、見た目以上の驚きや発見は無く、高級食材を楽しんだという印象です。
松阪牛のタンのお椀。これは面白い一品ですね。厚切りのタンが上品に炊かれており、旨味たっぷりのスープと共に唯一無二の味です。
ランプ肉を松前漬けにしてシャリにのせました。こちらも美味しいのですが、映えそうで映えないけれども草は生えるといったワンパターンなプレゼンテーションです。
神戸牛のサーロインをしゃぶしゃぶにて。かなり厚めのスライスであり食べ応え抜群。ただやはり見た目通りの味でもあり、4万円の食事としては気づきがありません。
お口直しに冷麺。ドングリの粉を用いた麵でありグニグニした食感が特長的。スープは肉のお出汁を起用しており、興味深い麺料理です。
メインは神戸牛のシャトーブリアンのステーキ。もちろん美味しいのですが、結局ステーキかよと、引き出しが少ない印象は拭えません。もう少しジタバタして欲しかった。
お食事に入ります。お米は「銀の朏(みかづき)」という岐阜のブランド米なのですが、このご飯はめちゃくちゃ美味しい。大粒で米そのものに味がある。本日一番のお皿です。
〆のカレー。料理人は「日本一美味しいカレー」と胸を張っていましたが、少なくとも私はこのカレーよりも美味しいカレー屋を10軒は知っている。もちろん美味しいですが、カレーという料理の深淵に迫るというよりも、ええ肉に頼ってはりますなあ、というジャンルのカレーです。
デザートはパッションフルーツ半切れ。もちろん美味しいですが、4万円の食事のフィナーレとしては心が冷えるフィニッシュです。
くどいようですが、お会計はひとりあたり4万円強。4万円と言えば4万円である。全体を通して大部屋女優的な味わいが続き、素材そのものを除いては印象に残らず、ミシュランが星を与えていないのにも大いに納得したディナーでした。祇園「にくの匠 三芳(みよし)」人形町「おにく 花柳(かりゅう)」とは別世界。悪い店があるから良い店が引き立つのだと自らに言い聞かせながら東京へ戻りました。

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