西欧料理サヴァカ(Cava.k.)/菊川市(静岡)

静岡市と浜松市の間にある菊川市。東京の人にはあまり馴染みのない土地であり、ミシュランも食べログもノーマークなのですが、ゴ・エ・ミヨで高得点を記録したお店があります。その名は「西欧料理サヴァカ(Cava.k.)」。タクシーという文明の気配を感じさせない山奥にあるため、静岡駅や掛川駅からレンタカーで訪れるのが良いでしょう(写真は公式ウェブサイトより)。
建屋は純日本建築なのですが、屋根が高く窓が大きく解放感抜群。神咲豊多香の別荘に遊びに来たかのようであり、ちょっとした海外旅行気分です。

山口祐之シェフは大阪「ルポンドシエル」で腕を磨いたのち渡仏。パリ 「オテル・ド・クリヨン・ド・パリ」にて経験を積み、帰国後いくつかの名店の厨房を預かったのち、独立。もともとは大阪で開業する予定だったそうですが、帰省する度に静岡の食材に魅せられ菊川の地での開業に至ったそうです。
飲み物全般が安く、グラスワインなど千円を切る価格帯です。私は運転があるのでノンアルコールドリンクなのですが、酒抜きのカクテルなども700円かそこらであり実に良心的。私はせっかくなので地元菊川産の玉露の冷茶を頂くことにしました。
アミューズはトマトとニンジン。トマトの泡に底にある赤いの、中間層はニンジンのムース的な何かです。トマトの酸味とニンジンの甘味が実に良く合う。互いの個性を認めてなお寄り添う素敵な一皿です。
続いてホタテとグレの白子。「グレ」とは「メジナ」のことであり「スズキ」の仲間であると今さっき検索して知りました。肉厚のアマイホタテに白子の官能的な舌ざわり。グレの卵を用いたソースも面白い味わいであり、フリットにしたネギの風味も手伝って前衛的な中華料理のようです。それにしても、日本の魚介類のシノニムどうにかならんもんか。
パンは3種でのご用意でしたが、いずれもシンプルながら深みのある味わいであり、当店の濃いめのソースの味わいに実によく合う。おかずパンも美味しいですが、やはりパンとは麦と技術で勝負するものである。
海鮮盛り合わせ。アサリ・アワビ・芝海老などなど地元の魚介類が百花繚乱。やはり地元の白アスパラも風味高く、ソース・サバイヨンの味覚と相俟って喜色満面。
お魚料理は御前崎(近所ね)で揚がったアカムツのポワレ。王道中の王道の調理であり、正統的な白ワインソースも美味。トッピングのフリットは「浜ぼうふう」というセリ科の多年草だそうで、ほんのりとした苦みが心地よいアクセントに。
メインはタンの赤ワイン煮込みにイノシシのカツレツ。煮込みは濃度高く濃密な調理であり赤ワインが欲しくなる。他方、イノシシは思いのほかクリアな味わいであり、イノシシ臭さは微塵も感じさせません。添えられた根菜も力強い味わいで二重丸。
デザートも凝っています。手前はほうじ茶のアイスであり鼻に抜ける香ばしいかおりが印象的。自家製のプリンもやんごとない奥行きを感じさせ、桜風味のマカロンは宮脇プロがさくらたん時代に「さくら咲け!」と気炎を吐いていたことを思い出させてくれました。
温かい紅茶で〆てごちそうさまでした。

お会計は食事代だけなら5,900円。5,900円ですよ5,900円。信じられない。この費用対効果の良さは地代の安さだけでは説明がつかない。今回はランチで最高値のコースでしたが、ディナーでもマックスで9千円であり、あびる優にワインを飲んだとしてもひとりあたり2万円を超えることはまずないでしょう。誰か運転好きな飲めない美食家が車で連れて行ってくれねえかなあ。

食べログ グルメブログランキング


関連記事
「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
日本フレンチ界の巨匠、井上シェフの哲学書。日本でのフレンチの歴史やフランスでの修行の大変さなど興味深いエピソードがたくさん。登場する料理に係る表現も秀逸。ヨダレが出てきます。フランス料理を愛する方、必読の書。