西麻布は星条旗通り沿いにオープンしたばかりの「焼鳥 篠原」。「リニュ(Li.nu)」や「フレンチモンスター(FRENCH MONSTAR)」などあのへんです。「高坂鶏」という希少なブランド鶏を食べることができるのが最大の売り。篠原有登礼シェフは三軒茶屋「床島」や大阪「市松」などで腕を磨き、この地での開業に至りました。
店内は西麻布らしいというか何というか、大変にスタイリッシュであり、客層はオラついたスタートアップゥや外資系、港区おじさんならびにその女子ばかりです。君たちもうちょっと上品に食事できんかね。おぼこいカップルなどが訪れると居心地が悪いかもしれません。
ところで、この界隈の民は焼鳥にはワインを合わせるのが当然というスタンスですが、それって超難しくないですか?鮨と同様に焼鳥はひと口ひと口の料理の方向性がてんでバラバラであり、本気でマリアージュを追求するなら20杯ぐらい注文しないと味覚が釣り合わないと思うのだけれど。ちなみに私は全員を助けられないなら誰も助けないほうがマシという主義なので、全てビールで通しました。
お椀で開幕。「高坂鶏」で取った出汁とのことですが、鶏の旨味というよりは塩気のほうが強く感じられます。他方、後述する〆のラーメンは鶏の味わいビンビンだったので、スープにも色々あるのかもしれません。
淡雪いちごとキウイの白和え。味は悪くはないのですが、なぜこのタイミングで出てくるのかは疑問。中盤~終盤にかけてお口直しで出てくると嬉しい味覚です。
お造り盛り合わせ。むね、もも、はつ、レバー。わさび醤油やごま油で食べ分けるのですが、いずれもべらぼうに旨いです。この日は「高坂鶏」という単語を延べ20回は聞くことになるのですが、なるほど素材名を推したくなる気持ちがよくわかる刺身です。続いて生つくね。トップを飾るのはキンカン(柑橘ではなく卵のほう)です。こちらも「高坂鶏」やるなあと思わせる肉の味わいであり、高級な鮨屋でトロでも食べたかのような味覚です。キンカンの濃密な味わいがテイエムオペラオーのように差して来るのも心憎い演出。
続いてむねともものたたき。やはり素材そのものの良さが直に感じられる仕様です。生肉原理主義者にとっては魅力的な構成です。
かしわはスパイシーなソースがたっぷりかかっており、どこか知らない中国の地方料理を食べているかのようで面白い。
つくねは中心部がレアレアであり、序盤の生つくねの表面を軽く炙ったような仕組みです。やはりトロの炙りのようなニュアンスがあり、生肉原理主義者にとっては至福のひととき。
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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
それほど焼鳥に詳しいつもりは無いのですが、私のコメントが掲載されています。食べログ3.5以上の選び抜かれた名店を選抜し、お店の料理人の考えを含めて上手に整理された一冊。
そういえば当店は焼鳥屋であった、と、うっかり忘れるタイミングで串が登場。このあたりツマミ中心の鮨屋のようです。部位はかた。マッチョで魅力的な歯ごたえであり、野球選手であっても大成したことでしょう。
鬼おろしは1回食べたらおかわり無しなのは少し寂しい。ここはひとつ鮨屋のガリレベルにじゃんじゃん持って来て欲しいところです。
ねぎま。といっても挟んでいるわけではなく、とにかく肉の存在感が凄い。バリっとした皮目の香ばしさにムキムキの肉。ステーキとその付け合わせのような1本でした。
ねぎま。といっても挟んでいるわけではなく、とにかく肉の存在感が凄い。バリっとした皮目の香ばしさにムキムキの肉。ステーキとその付け合わせのような1本でした。
従業員が全ゲストを周り、毎度毎度恭しく木箱を開けてプレゼンテーションするハーブサラダ。この演出はカメラ映りを意識し過ぎて余計だなあ。もちろんそうさせているのはお店ではなくSNSひいては社会そのものなのかもしれませんが。
砂肝。正肉がマッチョであれば肝まで力強いです。
皮付きのせせり。ゴリゴリした食感ながら脂はとろけるように甘く、美味しい部位です。
ホワイトアスパラに自家製のカラスミを。一度茹でてから焼いているのか、ホワイトアスパラ特有の繊維の強さが消失しておりグンニャリしていて食べ応えに乏しいのが残念。
レバーのパテは美味しいのですが悲しくなるほど量が少ない。他方、パンの量は潤沢であり、結果として口の中パッサパサになります。
手羽先が旨い。全身が腱なのではないかと思うほどパワフルな食感であり、プロメテウスの鎖のように頑強な歯ごたえ。それでいて肉ならびに脂の旨味が強く、記憶に残る1本です。
皮付きのせせり。ゴリゴリした食感ながら脂はとろけるように甘く、美味しい部位です。
えのきステーキはバターの風味がプンプンで、素朴ながら美味。こんど自宅で真似してみよう。
スカモルツァ。これはアッフミカータ(燻製もの)じゃないのかなあ?見た目よりもスムーズな味わいであり、サラっと調味しても良かったかもしれません。ホワイトアスパラに自家製のカラスミを。一度茹でてから焼いているのか、ホワイトアスパラ特有の繊維の強さが消失しておりグンニャリしていて食べ応えに乏しいのが残念。
ちょうちんと目が合う。序盤の生つくねのキンカンとは毛色が異なり、ゴムマリのような舌触りが気になりました。生つくねのトッピングのほうがすち。
トマト酢漬け。ジューシーで爽やかな味覚。贅沢なお口直しです。レバーのパテは美味しいのですが悲しくなるほど量が少ない。他方、パンの量は潤沢であり、結果として口の中パッサパサになります。
手羽先が旨い。全身が腱なのではないかと思うほどパワフルな食感であり、プロメテウスの鎖のように頑強な歯ごたえ。それでいて肉ならびに脂の旨味が強く、記憶に残る1本です。
かしわはスパイシーなソースがたっぷりかかっており、どこか知らない中国の地方料理を食べているかのようで面白い。
つくねは中心部がレアレアであり、序盤の生つくねの表面を軽く炙ったような仕組みです。やはりトロの炙りのようなニュアンスがあり、生肉原理主義者にとっては至福のひととき。
締めのお食事はタケノコと鶏肉の土鍋ごはんなのですが、ハーブサラダと同様に従業員が全ゲストを周り、毎度毎度恭しく土鍋の蓋を開けてプレゼンテーションするのに苦笑い。もちろんそうさせているのはお店ではなくSNSひいては社会そのものなのかもしれませんが。
ラーメンも出てきました。このスープはべらぼうに旨いですねえ。一見、透き通って繊細な味わいのように思えるのですが、実にアグレッシブな鶏の旨味であり鮮やかな味わいです。
〆のデザートは田中農園(だっけ?)産の卵を用いたクレームブリュレ。美味しいのですが、あれ?自慢の「高坂鶏」はどこいった?と、卵の行方が気になります。
以上を食べ、軽く飲んでお会計はひとりあたり1.8万円。焼鳥と捉えればぶっ飛びの高価格ですが、希少な「高坂鶏」をたっぷり食べることができるという意味では妥当な価格帯かもしれません。かと言って「ろばたやき山ろく」のように素材良ければ全て良しと割り切っているわけではなく鶏肉を多用した割烹といった流れです。「今夜は焼鳥でもいきますか!」というノリではなく、しっとりとした日本料理を食べに行くテンションで訪れると良いでしょう。
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