日本料理かわしま/唐津

創業は寛政年間にまで遡る「川島豆腐店」。併設の飲食店は朝昼は「豆腐料理かわしま」として豆腐料理を披露し、夜は唐津の食材を目一杯盛り込む「日本料理 かわしま」として暖簾を掲げます。ミシュランにつき、朝昼はビブグルマン、夜は1ツ星を獲得。
凛とした雰囲気の店内。L字型カウンター8席のみの小さなお店。川島広史シェフは東京の賛否両論店「重よし」で腕を磨き、33歳で故郷に戻り厨房を預かります。
酒が安い。ビールの小瓶は400円であり、ミシュラン星付きレストランとしては最安値な価格設定でしょう。地元の日本酒も1合700円であり、自由飲酒党の我々は快哉を叫びました。
まずは小皿がふたつ。左は地元で獲れたカタクチイワシ。洋風のソース(?)に漬けられ前衛的なオイルサーディンのようで美味。右はイカを炊いたやつであり、イカの旨味にしっかりとした調味が酒を呼びます。
黒ゴマ豆腐。おお~、語感よりもずっと黒ゴマな色合いならびに味覚です。そのへんの黒ゴマアイスの15倍は密度があり、やや重くなりそうな部分を柚子味噌でザザっと投げ飛ばす。ありそうでない、深みのあるひと皿です。
お造りはやはり地元のヒラメにカンパチ。いずれも心から旨い。玄界灘に面した唐津のポテンシャルを感じた瞬間です。
しんじょうはアシアカエビ。シンプルに包丁で叩き、100%海老で臨みます。素材の勝利とも言うべきエビの味わいであり、シイタケの複雑な風味が全体を引き立てます。
酢牡蠣の牡蠣も唐津産。ほえー、このへんも牡蠣獲れるんだ。サイズこそちびまる子ちゃんですが密度は高く、また、貝柱の部分が大きく食べ応えあり。強い酸味と共にズバっと飲み下しました。
西京焼きはマナガツオ。押しつけがましい調味ではなく、サラっと必要最低限な西京風味。他方、カラスミはカマボコのようなサイズ感でこれが2枚も。ややもするとカラスミが主題なのではないかと思えるほどの存在感でした。
このへんで獲れたタケノコ。エグ味や渋みはなくピュアッピュアな味わいで、柔らかい。ヘンに高級な東京のタケノコよりも全く役者を感じます。
お味噌汁は白味噌で。地元のお野菜がたっぷりであり、こちらとゴハンだけで立派な食事とも成り得る食べ応えです。
お肉は佐賀牛。この近辺で育った牛肉のシャトーブリアンです。ヘンな脂っ気はなく純粋に肉として美味しい。
ごはんは少し硬めに炊かれており私好み。先の肉に合わせて食べて最高のごちそうです。
残りの日本酒を自家製のお新香をツマミで飲み切る。至福のひとときである。
デザートはミカンのゼリー。まさに素材といった味わいであり、素朴で美味しい。
〆は豆腐のプリン。想像以上に大豆感が強く、そのへんの軟弱な豆乳プリンとは一線を画す味わい。ごちそうさまでした。

お会計はひとりあたり1.5万円。なんと尊い費用対効果でしょう。それに一役買っているのはやはり酒の安さ。酒飲みであればあるほど多幸感を得られるお店でしょう。料理についても地元の食材オールスターであり旅行者にとっては堪らない演出。唐津を訪れた際には必ず寄りたいお店です。

食べログ グルメブログランキング


関連記事
和食は料理ジャンルとして突出して高いです。「飲んで食べて1万円ぐらいでオススメの和食ない?」みたいなことを聞かれると、1万円で良い和食なんてありませんよ、と答えるようにしているのですが、「お前は感覚がズレている」となぜか非難されるのが心外。ほんとだから。そんな中でもバランス良く感じたお店は下記の通りです。
黒木純さんの著作。「そんなのつくれねーよ」と突っ込みたくなる奇をてらったレシピ本とは異なり、家庭で食べる、誰でも知っている「おかず」に集中特化した読み応えのある本です。トウモロコシご飯の造り方も惜しみなく公開中。彼がここにまで至るストーリーが描かれたエッセイも魅力的。