2019年11月にオープンした「クロデグルメ(Clos Des Gourmets)」。目黒駅から目黒通りを白金方面へ少し進み、イケてるイタリアン「トラットリア ダル・ビルバンテ・ジョコンド(TRATTORIA DAL BIRBANTE GIOCONDO)」のすぐ近く。1階が美容院のスケスケなビルの2階です。
店内は小さく10席強。キッチン真ん前のカウンターが2席とテーブル。おふたりで回されており、これぐらいのサイズ感が一番好き(写真は公式ウェブサイトより)。ちなみに当店はパリに実在した同名のビストロの店名を引き継ぎ「フランス料理を普段使いできるように」をコンセプトとして掲げ、一番安いコースだと驚きの5,500円という価格設定です。
良く飲む我々はガッツリなペアリングコースでお願いしました。それでもお料理と合わせてお会計はひとりあたり1.3万円と良心的。グラスワイン数杯に留めれば飲んで食べて1万円でお釣りが来るミラクルなフランス料理店です。アミューズが凝っており、しかもほんのりと温かい。このあたりの仕組みは小箱の美点といったところでしょう。5,500円のコースに結構な量のキャビアが乗るのはシェフの矜持の現れでしょう。
冷製カッペリーニはホタルイカをあしらいクルミのソースで。クルミのソースって欧米系のお店では珍しく、くるみだれの蕎麦を想起させる親しみやすさ。ホタルイカの旨味も強く日本酒に手を伸ばしそうになる勢いです。
パンが旨い。素朴でしみじみとした味わいなのですが、深みのある趣き深いパンです。フランス帰りの料理人はパンに対する拘りが強い気がする。日本人がごはんに拘るように。
ホワイトアスパラにハマグリ。春の味覚のツートップであり、それぞれのエキスをバターでつないだソースもお見事。お魚はハタ。ビョンビョンと弾力のあるマッチョな個体であり、強い甘味のタマネギと合わせて心地よい味わい。フキノトウの香りも季節感があっていいですね。
スペシャリテの「テット・ド・コション」。テットは頭、コションは豚の意味であり、豚肉のいろんな部位が入ったテリーヌをカリカリに焼いたようなお料理。部位ごとに食感が異なりミミガー的コリコリ感やゼラチンのネッチョリ感が組み合わさり、濃密な味覚と共に食感を楽しむ逸品です。敷かれた酸味のサラっとした味わいが素敵な口直し。
メインは「土佐あかうし」。高級和牛は黒毛一辺倒の昨今、褐色の毛色をした生産量の少ないブランド牛を持ってきました。先にも書きましたが5,500円のコース料理でこのメインはアンビリバボー。噛めば噛むほどに味が滲み出る赤身の旨いお肉でした。付け合わせのお野菜がたっぷりなのもいいですね。
デザートもしっかりしており、ホワイトチョコレートのしおらしい味わいがパイナップルの酸味に良く合う。妙にガチャガチャしておらず率直に美味しい甘味です。
紅茶で〆てごちそうさまでした。
くどいようですが、グラスワイン数杯に留めれば1万円でお釣りが来るミラクルなフランス料理店です。お食事代が5,500円という価格設定の世界においては限界もしくは表面張力とも言える企業努力を感じられるクオリティ。気楽なデートやお友達との食事会にどうぞ。
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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
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- ナリサワ ←何度訪れても完璧。
- 銀座 大石/銀座 ←自分が働くならこういう職場。
- ナベノイズム ←世界観がきちんとある。
- ル・マンジュ・トゥー/神楽坂 ←接客は完璧。料理は美味そのもの。皿出しのテンポも良く、とにかく居心地の良いお店。客層も好き。
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