店内はL字型のカウンターと個室の4名がけテーブルが1卓。カウンターは12席であり、コロナ対策のパーティションもあって割に圧迫感があります。また、従業員同士での掛け声が巨大でしばしばびっくりするので心臓の悪い方はご注意を。
中原貴志シェフは四代続く鮨職人の家に生まれ育ち、福岡「とき宗」や西麻布「鮨 真(しん)」を経て独立開業。
ビールは小瓶が700円、日本酒は片口で千円前後と悪くない価格設定です。熊本のものを中心に九州の地酒が取りそろえられているのが嬉しい。もちろんワインや焼酎なども用意されています。
ヒラメで開幕。ヒラメは当然の美味しさですが、何と言っても肝醤油がマックス美味しいですね。麗しき天然マヨネーズのようなコッテリとした味覚です。
ヒラメで開幕。ヒラメは当然の美味しさですが、何と言っても肝醤油がマックス美味しいですね。麗しき天然マヨネーズのようなコッテリとした味覚です。
毛ガニの餡に里芋を揚げたもの。こちらは中華料理風であり、真っ当な鮨屋でありながらかなり攻めたツマミを用意してくれるのが楽しい。
ここから握りに入るのですが、このアオリイカには度肝を抜かれました。フワフワというかテロテロというか今までにない舌ざわりであり、清廉な饅頭を食べているかのようです。じっとりとした甘味と旨味を湛えた会心の出来栄え。恐れ入りました。
酢締めのキス。そうそう、当店の大将は握りの速度が半端ないですね。しかもただスピーディーなだけでなく、タネやシャリが手の中で踊るように握り込まれていくのが面白い。外人をお連れすれば軽くどよめくことでしょう。
マアジも傑作。小ぶりながらその味わいが凝縮されており、あともうひとつとおかわりしたくなる、後を引く美味しさです。
イワシはワサビがわりにアンチョビを忍ばせており、スパイシーで強烈な旨味が酒を呼ぶ。これはキリっとした白ワインにすれば良かったかな。
イワシはワサビがわりにアンチョビを忍ばせており、スパイシーで強烈な旨味が酒を呼ぶ。これはキリっとした白ワインにすれば良かったかな。
赤貝は手榴弾のように大きく食べ応え抜群。まさにムシャムシャといったオノマトペがピッタリの1カンでした。
ブリは脂の乗り切った味わい。かなりどでかいタネではありますがシトシトと包丁が入れられており一口で優しく噛みほぐすことができます。
ブリは脂の乗り切った味わい。かなりどでかいタネではありますがシトシトと包丁が入れられており一口で優しく噛みほぐすことができます。
ところで当店の魚の殆どは熊本の田崎市場から仕入れているそうで、いきおい地元のものが多くなります。これは観光客にとっては嬉しいシステムです。
サワラもしっとりと旨味が増しており渋い味わいです。瀬戸内で食べるピチピチのサワラとはかなり印象が異なる。赤身のヅケは直球勝負の味わい。パンチの強いシャリと共に握りながら酒の進む一品です。
中トロは一転なめらかな味わい。赤身と脂の美味しいとこ取りといった味覚であり、世の鮨通も納得の美味しさでしょう。
中トロは一転なめらかな味わい。赤身と脂の美味しいとこ取りといった味覚であり、世の鮨通も納得の美味しさでしょう。
「お椀をご用意していますが、いかがなさいますか?」と問われ当然に頂くのですが、後から明細を見ると1人につき500円づつ別につけられていました。いや別にそんぐらい構わんけど「変なこと聞いてくるなあ」と微妙な空気になるので最初からコースに含んでおけばいいのに。今夜で唯一謎な仕組みでした。
ウニは程よいサイズ感であり、海苔の濃厚な磯の風味とバランスがとても良い。
トコブシのリゾット。やや緑がかったセメントのような色合いであり、その濃厚な味わいが外観からですら確認することができます。旨い。日本酒が、旨い。
トコブシのリゾット。やや緑がかったセメントのような色合いであり、その濃厚な味わいが外観からですら確認することができます。旨い。日本酒が、旨い。
巻物はひもきゅう。この日は2回転目もあり、その他の巻物を追加注文できる雰囲気ではなかったので(実際どうなんだろう?)、好物のカンピョウにはたどり着けず。
ツイート
海老の風味に満ちた玉子でフィニッシュ。ごちそうさまでした。
以上を食べ、割に気前よく日本酒を飲んだにも関わらずお会計はジャスト2万円に整いました。どひゃー。都心の狂った価格設定の鮨屋に比べると拍手を送りたくなるほどの費用対効果の良さです。シャリの味は強く、タネも大きめ。何より握りの数が多い。ズバリ私好みの鮨屋です。全体としてかなり味が濃い仕様となっているので左党にオススメ。熊本を訪れた際には是非どうぞ。
関連記事
鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
- すし匠/ワイキキ ←このお店の真価が問われるのは数十年後のはず。
- 照寿司(てるずし)/北九州 ←世界で最も有名な鮨職人。
- すし宮川/円山公園(札幌) ←人生でトップクラスに旨い鮨。
- 鮨とかみ/銀座 ←赤酢のシャリが印象的。
- 鮨さいとう/六本木一丁目 ←価格設定に色々と考えさせられる。
- 東麻布天本/赤羽橋 ←欅坂46のような鮨。
- らんまる/不動前 ←鮨の入門編として最適。
- 紀尾井町 三谷/永田町 ←単純計算で年間3億円近い売上。恐ろしい鮨屋。
- 鮨 猪股(いのまた)/川口 ←にぎりのみの男前鮨を喰らえっ!
- 鮨舳/瓦町(高松) ←真っ当な江戸前。銀座の半額で何度でも通いたい。
- 天寿し/小倉 ←何度でも行きたいし、誰にでもオススメできるお店。
- 鮨 安吉/博多 ←お会計は銀座の半額。ミシュラン2ツ星は荷が重いけれども、この費用対効果は魅力的。
- 鮨 一幸(いっこう)/すすきの ←真摯に鮨に取り組む好青年。
- ひでたか/すすきの ←鮨は好きだけどオタクではないライト層にとっては最高峰に位置づけられるお店。
- 鮨 志の助/新西金沢 ←とにもかくにも費用対効果が抜群すぎる。
- 小松弥助/金沢(石川) ←「まごころでにぎる」を体現する鮨屋。
- 太平寿し/野々市(石川) ←金沢の人が東京で鮨を食べると頭から湯気を出して怒るに違いない。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。