八代目松之助 翁(おきな)/恵比寿

恵比寿駅から徒歩7~8分にある「八代目松之助 翁(おきな)」。ビルの地下とは思えないほどの重厚な店構え。食べログ3.71(2020年12月)でブロンズメダル獲得、ミシュラン1ツ星と誉れ高いのですが、「とにかく高い」と賛否両論なお店でもあります。
居酒屋風の店内。客層もゲハハハと大声で笑う年配者が多く、若者にとっては居心地が悪いです。従業員はみな丁寧で感じが良く、接客は完璧なのが救いか。

中島潤シェフは麻布の更科系を経た後に独立。開業は1991年と恵比寿では老舗の部類に入るでしょう。
飲み物メニューに値段は記載されておらず、おっかなびっくり中ビンを注文しましたが、最終支払金額から逆算するに税サ込で1本千円程度でしょう。日本酒やワインも置いてありますが、「とにかく高い」と聞かされていたので不要不急のアルコールは自粛します。
お通しは白菜の漬物(?)。カツオの風味がきいて美味。
イクラは一人前でこのポーション。なるほど蕎麦屋だけあって出汁の風味が強く、これだけで丼にしてしまいたい誘惑に駆られました。
前菜6点盛りはズワイガニの味噌和え、白子の煮物、かぶら寿司、牡蠣にエンガワに車エビ。いずれも旨く酒のツマミに最適です。
お造りはヒラメ。シットリとコリッの間にある食感であり、たっぷりの薬味と共に素直に美味しい。
天ぷらはフカヒレ。中華系のレストランではスープと共にダラっとした食感ですが、天ぷらにすると程よく水分が抜かれ、凝縮感のある味わいです。新しいフカヒレの楽しみ方の発見でした。
ずいきのおひたし。サトイモの茎の部分であり、シャキっとサッパリとした良いお口直しです。
蕎麦の実蒸しには鯛と辛味大根。骨格のしっかりした出汁と共に心地よい歯ごたえを楽しみます。
〆にしてメインディッシュである更科蕎麦。素麺と見紛う程のブランドブラン。「一番粉」と呼ばれる色白の蕎麦粉を原料としており、絹のような高級感があります。しかしながら私はワイルドな野性味を楽しむ田舎蕎麦が好みであり、まあ、更科蕎麦とはこうだったなあというお気持ちでした。
以上を食べ、ビールを1本だけ飲んでお会計はひとりあたり2.5万円。なるほど高い。高杉晋作も驚きの高さであり、尊王攘夷を諦めたくなるほどの費用対効果の悪さです。どうしてこんなに高いんだろう。そしてどうしてそれでも客が入り続けるんだろう。「更科堀井」「永坂更科 布屋太兵衛」「麻布永坂」の麻布更科御三家をハシゴして豪遊してもこんな値段にはならんぞ。

バーキンにスカーフを巻いて1万円を100円ぐらいのつもりで使える人でないと素直に楽しむことができないお店なんだろうなと、身の程を思い知った夜でした。

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