鮨 在(ざい)/広尾

六本木のミシュラン1ツ星鮨「鮨由う」の暖簾分け?姉妹店?広尾駅からすぐの商店街沿いのビル5階にあります。
平日ランチでお邪魔しました。カウンター8席の店内は満席。お店の奥にはカウンター個室があり、もう4~6人は入れるそうです。このクラスの鮨屋としては珍しく、個室であれば子連れもOKとのこと。

岡田貴裕シェフは鮨職人として飲食業界に足を踏み入れたのち、日本料理を経て再び鮨の世界へ。「鮨由う」の厨房を預かったのち、2018年5月に「鮨 在(ざい)」をオープン。
飲み物は全て保坂卓ソムリエにお任せしました。このペアリングが大当たりで、今まで鮨屋でワインを飲むなど邪道と考えていたのですが、当店に限っては鮨にドンズバで決まるチョイス。シェフとソムリエで議論を重ねているんだろうなあ。もちろんワインだけでなく日本酒ひいては焼酎まで合わせたりとセレクションは自由自在であり、量もしっかり。飲める方は必ずペアリングでお願いしましょう。
最初に白子と湯葉茶碗蒸し。上品なお出汁にトロンとした白子、湯葉の優しい味わいに温かいものが胸に満ちてきます。
ズワイガニのメスをギュっとしてウニをトッピング。いずれもスター級の食材ですが、喧嘩することなくむしろ混然一体となって味蕾に迫ります。海苔の風味も香ばしく、1回の表で2番バッターがソロホームランを打つという予想外の歓び。
対馬の迷いガツオ。しっかりと脂が乗っていて甘みが強く、ブラインドで食べればカツオとは答えられないかもしれません。ソースも魚の風味に負けず劣らず強く、フランス料理の前菜を食べたかのような印象を持ちました。
にぎりに入ります。春子鯛の昆布締め。ふんわりとした食感に昆布の良い香り。淡白ながらも食べ応えのあるにぎりです。
ガリはショウガ本来の食感を楽しめる大ぶりなカットで私好み。シャリはやや硬めに炊き赤酢でシャシャっとした味覚です。
スミイカ。陶器のようにつるんとした造形であり滑らかな食感。
赤身のヅケ。程よい酸味が心地よく、後から旨味が押し寄せます。「大間のマグロです!ドヤ!」のような押しつけがましいところは一切なく、客に聞かれるまで産地などは特に伝えない無防備な雰囲気がとても良い。
中トロ。やはり程よい酸味が心地よく、少しシャリの温度を上げてか脂がゆるゆると溶けてユニゾンします。
コハダはかなりしっかりと締めておりキリっとした印象で清々しい。身も厚くザクザクとした食べ応えです。
アジも品のいい足音を感じる味覚であり、青物で爽やかな味わいながら横に広がるボリューム感もあり、令和の青物横丁である。
カマトロをジュワっと炙り、マツタケと共にバリっと手巻きで頂きます。これまでの真っすぐな鮨から一転、圧倒的な存在感を放つ味覚です。ジューシーな脂と松茸の風味たるや。
イクラは粒が大きくサッパリとした味わいであり、濃密なウニと良く合う。当店は高級食材の使い方がサラっとしていて、成金主義じゃないのがいいですね。
湯がきたての車海老は一口では収まりきらないほどの迫力があり、そのサイズに負けない旨味の強さがあります。海老ってほんとうに美味しいですよね。
アナゴはふっくらと炊かれ口の中でホロホロと溶けていく食感であり、よく握れるなあと感心してしまいます。とろんとした脂も美味そのもの。
玉子は少し変わっていて、たっぷりの芝海老に黒糖とほうじ茶を起用しています。カステラのような玉子は最近どこの鮨屋でも出すようになりましたが、当店のそれはさらにもう一歩踏み込んだアイデア賞。
お味噌汁で〆てごちそうさまでした。

ランチとしてはかなりしっかり飲み食いしたにも関わらず、お会計はひとりあたり2万円を切りました。うわーお、これはお値段以上の幸せがありますねえ。はっきり言って紀尾井町「三谷」の4万円を超える鮨+ワインなんかよりもよっぽど食後感が良く、また来たいなと思わせる魔力があります。
「店の敷居は低く、寿司の志は高く」「雰囲気は気軽に、お寿司はレベルが高いものを」という店主も素晴らしく、これこれ、鮨とはこれですよと友人に勧めて廻りたい魅力に満ちたお店。次回は夜にお邪魔してみたいと思います。賢明な読者の皆さんはペアリングをお忘れなく。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。