キノシタ(RESTAURANT Kinoshita)/参宮橋

1996年にオープンし、元祖「予約が1年先まで埋まっているフレンチ」として名を馳せた「キノシタ(RESTAURANT Kinoshita)」。代々木と初台と参宮橋との重心あたりに位置します。
昔はキチキチに席数が多かったようなのですが、現在はテーブル4卓にカウンター席とちょうど良いサイズ感です。従業員の全員が坊主であり礼儀正しく、体育会系の鮨屋を訪れたような気持ちの良さがあります。

木下和彦シェフの前職はタコ焼き屋。調理師学校へ通わずフランスで修業もせずと珍しい経歴です。
3,000本の在庫が自慢とのことですが、グラスのワインのラインナップも魅力的であり、写真のような立派なものがデキャンタで注文できるのが面白い。せっかくなので、泡グラス→白デキャンタ→赤グラスという流れで参ります。
グジェールとパン。パンは素朴な造形ながら仄かな酸味と穀物の深みがあり、中々の美味しさです。注文したコースは最高値の「シェフのおまかせコース」。それでも8,500円と、クロスを張ったフレンチとしては良心的な価格設定です。
まずはカニのほぐし身にアボカド、ガスパチョ。王道の組み合わせであり素直に美味しい。ガスパチョの爽やかな酸味が記憶に残りました。
牡蠣は熱を入れ味わいに凝縮感を持たせています。まさに酒のツマミといった味わいでありワインが進む。
白子のリゾット。お米は少なめ白子は多めという嬉しい配合であり濃厚な味わい。白トリュフも必要にして充分な量であり好感が持てます。
フロマージュ・ド・テート。ブタの頭部のあらゆる部分を用いてゼリー寄せにしたグロ目の料理ですが、表面をかなり強く焼き上げているため、語感ほどの覚悟は不要です。濃密なミミガーとでも言うべき独特の食感を放ち、濃厚な味わいです。
カッペリーニにはウニ・イクラ・甘海老・サーモンと最強海鮮丼的な組み合わせ。文句なしに美味しいですが、素材の勝利でもあり、自宅でも作れるかもしれません。
メインはエゾジカ。「ガッツリ肉系のフレンチ」という思い込みがあったのですが思いのほか上品な量ならびに調理であり、どストレートな美味しさがあります。付け合わせのお野菜がたっぷりなのが嬉しい。
お口直しにヨーグルトのソルベ。酸が立っており乳の濃密な風味も楽しめるという、かなり旨いお口直しです。
デザートはフォンダンショコラにピスタチオのアイスクリーム。フォンダンショコラはアツアツのトロトロで直感的に美味。ピスタチオも濃密でコッテリとした味わいであり私好みです。
ハーブティーで〆てごちそうさまでした。

以上を食べ、そこそこ飲んでお会計はひとりあたり1.5万円ほど。王道中の王道のフランス料理ならびにワインを楽しんでこの支払金額はリーズナブル。真っすぐで、混じりっ気のないフランス料理であり、新手のアホなキラキラ系とは一線を画す味わい。フランス料理大好き仲間や枯れたカップル、品の良いご家族でどうぞ。

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