AKAI(アカイ)/宮島口(広島)

広島は廿日市市、宮島口駅から徒歩10分ほどの場所にある「AKAI(アカイ)」。築80年の古民家をリノベーションしたフランス料理~イノベーティブ系のレストラン。
店内はオープンキッチンでカウンターのみ8席。このような誂えにした理由を「0.1秒でも速く、出来たお料理をご提供することを考えた結果です」と何かのインタビューで答えていました。

赤井顕治シェフはイタリアンレストランやワインバーで経験を積んだ後に渡仏。帰国後、日本の料理コンテスト「RED U-35」で優勝し、その数年後に当店を開業し故郷に錦を飾りました。
ワインはお料理に合わせて全てシェフにお任せ。特に値段は聞きませんでしたが、最終支払金額から逆算するに、4杯のペアリングで7~8千円ぐらいでしょうか。出てきたワインを考えるとちょっと高いかなあ。
ワタリガニwithもものすけ。「もものすけ」というのは最近話題のサラダカブ。旨味たっぷりのカニと共に素敵な走り出しです。
ウマヅラハギを揚げたものに、そのキモのペースト。魚の身よりもキモのペーストのほうが目立って美味しく、身が付け合わせのようになっています。
トラフグの白子の炭火焼はカブのお粥と共に。ねっとりとクリーミーで美味。なのですが、皿出しのテンポはめちゃくちゃ遅いですね。シェフひとりで調理とワインのサーブを行っており、完全に回っていません。そのくせ無駄口も多く、トークの間は作業が止まるタイプであり、振り返ってみればそれほど皿数が多いわけでもないのに3時間を要していました。「0.1秒でも速く、出来たお料理をご提供することを考えた結果です」とは何だったのか。
お魚はキンキ。トロっとした口当たりにふんわりとした舌ざわり。本体は優しい味なので、もうちょっとメリハリのきいた調味があっても良かったかもしれません。
ヒグマの肩肉のハンバーグ。野性味溢れる味わいであり、噛み応えを含めて力強い味覚です。バリっとした赤ワインによく合いました。
ヒラスズキはイマイチ。お酢を用いた調味は興味深いのですが、肝心の魚の調理に混乱をきたしており、ゴワゴワでカスカスな食感が記憶に残りました。また、悪いことは重なるもので、このお料理に合わせてワインを出すことを忘れられ、身のボソボソとした舌ざわりが切れ味の悪い刃物のように口の中に残ります。
鴨もお料理としてはとても美味しいのですが、インターバルに20分も要するのはいかがなものか。味が良くてもテンポが悪ければ美味しさは半減である。
〆のお食事に羊肉のカレー。カレーよりも羊肉の主張が強く、羊肉のスパイス風味、ライス添えといった印象。レモン系のさっぱりとした酸味が心地よい。
デザートは牛乳アイス。美味しいのですが、もう少しスピーディーに。どうも当店は料理を出したあとに客とおしゃべりし、ゲストが一通り食べ終わってからようやく次の料理に取り掛かる傾向があります。
プリンも既に焼いてあるものを盛り付けるだけなのにノンビリとしています。あとひとり手伝いもいるのですが、その方はひたすら洗い物ばかりをしているようで、どうにもコンビネーションがかみ合っていません。
コーヒーですら淹れるのが遅い。味が良いだけに勿体ない。でもあんまりシェフは気にしてるふうでもないんだよなあ。ここ数年お邪魔したレストランの中で、最強レベルの鋼の心を持っている料理人に感じました。
お会計はひとりあたり2.3万円強。料理とワインの写真だけザっと見れば悪くない費用対効果なだけに、食事のリズムが悪すぎであることがまことに口惜しい。もう少し皿数を絞って、その分のポーションは大きくして、サービスもしくは料理人をひとり増やしてスムーズに流れるようにすればかなり印象が違うと思うのだけれど。

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