鮨 太一(タイチ)/銀座

銀座の裏路地の路地裏にある「鮨 太一(タイチ)」。両手を広げれば完全に通せんぼになるほどの細い道にあります。1階の行列のできるラーメン屋が目印です。
L字型カウンター7~8席のみの小さな店内。「昔はパってひとりで入って来れたんだけど、最近はもう人気がでちゃって」と眉をひそめる連れ。とりわけランチは費用対効果が良く、予約が取り辛いそうです。

石川太一シェフは愛嬌たっぷりでお茶目な雰囲気。ニコタマの「鮨 逸喜優」出身だそうです。
いきなりマグーロです。スジを抜いてあるのかフワフワとした口当たりで舌に心地よい。香りと酸味にえも言われぬ品格が感じられ、先頭打者ホームラン。
煮ハマグリ。特大のハマグリにはじっとりと味が沁みており、思い出しただけで生ツバが湧いてきます。それでいて無理な煮詰まり方はなく、しっとりとした食感で美味。
サンマは大サイズのカットで迫力満点。大口を開けて頬張ると、ほろ苦さが口中に広がります。風味強めの赤シャリと良く合う。
イクラには嫌な塩辛さは一切なく、いくらでも食べることができそうなスムーズさ。
キリっと締めたコハダ。かなり強めに締められており、トロワグロの魚料理を思わせる酸味の強さです。
海老は本当に美味しいなあ。ナウシカの中に1匹まぎれていてもバレないほどの迫力であり、美味しさが素早くDNAに届きました。
アナゴはふんわりフワフワ、それでいてジュブジュブとしたジュブナイルな食感。「こういうの食べるとさ、江戸前って言うの?やっぱお鮨って、タネが新鮮なだけが全てじゃないよね」と連れ。そう、平たく言うと旨いのである。
カツオも特大サイズ。海の動物の生肉とも言うべき逞しい味覚であり、この後プールに泳ぎに行きたくなるような力強さを感じます。
ウニも旨いとしか言いようがない。強い味わいのシャリに負けないウニの風味の濃さ。私はウニは軍艦巻き派ですが、こちらに限っては海苔の風味に邪魔されたくない一途さを感じました。
白身は昆布締め。淡白で気品があり、飲み下すころに鼻の奥から昆布の風味が押し寄せてきます。
海老のお味噌汁も実に濃厚。先のナウシカを思い出させる強い味わいです。
細巻は赤身とトロ。マグロに始まりマグロに終わる、由緒正しき銀座の鮨。ギョクについても海の香りと卵の甘味が上手くマッチし、冷蔵庫に常備したいほどの余韻を感じながらフィニッシュです。

以上、一通りを食べて5千円ポッキリ。私は基本的には「安くて旨いものなど存在しない」と考えているクチですが、当店は例外中の例外であり、しかもザギンでシースーという意味では奇蹟とも言える費用対効果の良さです。1万円と言われても何の疑いもなく支払ってしまいそうなクオリティ。そりゃあ予約が取れなくなるわけだ。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。