心斎橋筋の賑やかな通りから一本脇に入ったところにある「新明石(しんあかし)」。「とにかくいっぺんおいなはれうまいもんくわそ」を理念に1930年にミナミで旗揚げしたフグ料理店。フグの他にもスッポンやハモなど関西系のニッチな食材に特化します。
掘りごたつ式の小上がりに大きなテーブル席がふたつ、そしてカウンターと程よい広さです。朴訥な大将が料理に集中し、賑やかな大阪のおばちゃんたち(従業員)が客席を盛り上げます。大阪だなあ、こういう雰囲気。飲み物メニューは特に見当たりませんでしたが最終支払金額から逆算するに、一般的な飲み屋と変わらない価格設定でしょう。高いのはフグという食材だけなのだ。
突き出しはクラゲにメカブ(?)。クラゲのコリっとした食感にヌルっとした舌触りが滑り込む。
てっさ。いわゆるフグの刺身ですが、物凄まじいボリュームです。東京のフグは非常に高価、かつ、量も少ないことが多いため、当店の体格の良さには思わず笑みがこぼれます。
唐揚げはじっくりと深く揚げられており、フグの旨味が凝縮されています。厚い衣とジューシーな肉はビールと相性が良く至福のひととき。もちろん量もたっぷり。
煮凝りは羊羹かと思う程の特大サイズであり、ゼラチンの王者とも言うべき旨さが詰まっています。
てっちり。フグ(テツ)のちり鍋です。フグのアラでじっくりとったスープに深みがあり、フグの肉はもちろんのこと、そのスープで煮込まれる野菜や豆腐も美味しい。
〆はもちろん雑炊で。てっちりのスープが煮詰まったところに米を放り込み、全てのエキスを一粒一粒にまで染み渡らせます。食欲を奮い立たす芳香が堪らない。フグは淡白だと言う人が多いですが、この雑炊を一口食わせてやりたい気分です。お新香も旨い。梅干しに結晶(?)が浮いており、漬物ながらサクサクとクリスピーな食感が面白かった。
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季節の果物で〆てごちそうさまでした。
以上を食べ、軽く飲んでお会計はひとりあたり2万円強。フグという高級食材を腹いっぱい食べてこの支払金額はお値打ち。本場大阪ならではの価格設定です。大阪グルメと言えば粉ものと串カツという印象が強いですが、少し背伸びしてフグなんてのもいかがでしょう。東京で食べることを考えれば安いものです。
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関西も食のレベルは高い。しかも東京に比べて1~2割物価が安く、予約も取りやすいので良いこと尽くめです。印象的だった有名店をまとめました。
- アニエルドール/阿波座 ←近年流行の奇抜なだけの料理とは一線を画す
- lumiere l'esprit k(リュミエールレスプリカ)/難波 ←何を食べているかはっきりと理解できるものが多く、素材が前面に出た実直な調理
- ハジメ/肥後橋 ←半額だったとしてもまだ納得いかない
- フジヤ1935/堺筋本町 ←これが苦痛で仕方が無かった
- ルポンドシエル/北浜 ←そのきっかけを与えてくれたお店となりました。おすすめです
- ラベ/西梅田 ←大好き、クラシックなフレンチ
- ユニッソンデクール/なにわ橋 ←現在は試行錯誤中
- カランドリエ/本町 ←この美味しさを維持したまま、突き抜ける何かを手にしたとき
- ピエール/大阪 ←笑っちゃうほど酷いオペレーション
- ラ・フェット ひらまつ 大阪/中之島 ←信頼できるお店です。大事な日に是非どうぞ
- リストランテ ル・ミディ ひらまつ/西梅田 ←ブラックスワン的な皿は無いものの、全てが及第点を超えている
- 弧柳/北新地 ←悪運に正当な客が付き合わないといけない仕組み
- とんかつマンジェ/八尾 ←6時間待ちですが、わが心のトンカツランキング、ダントツの1位です。
- 六覺燈/なんば ←客に対して、ここまであっけらかんと言い切れるのはすごい