おにく 花柳(かりゅう)/人形町

人形町駅から徒歩7~8分ほど、日本橋小舟町にある「おにく 花柳(かりゅう)」。片柳遥シェフが選び抜いた和牛のみを使用した会席料理で有名。もともとは「然」という名でミシュラン1ツ星を獲得していましたが、2016年 に店名を変更しました。
厨房に面したカウンター席と個室がふたつ。サービス陣の感じが良く、個室ながら小窓からしっかりとテーブルウォッチする気遣い。勝負接待に完璧なお店です。
ワインリストが厚く、この格のお店としては良心的な価格設定です。我々はビールで始め、後はひたすら日本酒としましたが、エビス生は790円、日本酒は1合1,600円~と、やはり悪くないプライスでした。
秋限定の「和牛と松茸のおまかせコース」を注文。まずはジャガイモのすり流し。トッピングのトリュフの威力もさることながら、さりげなく忍ばせた和牛コンソメの風味が堪らない。
和牛ビフカツサンド。雑味の無い清澄な牛肉をシャラっと揚げ、軽く炙ったトーストと共に頂きます。中々の高さがあり噛み切るに覚悟がいるのですが、一口で一刀両断できるほどの柔らかさ。広がる肉の甘味。旨い。
和牛と生ウニの手巻き寿司。わおー、映えますねえ。ゲストのクラウドにスっと入って来るこの画力。味の良さは見ての通りであり、「けんしろう」系列の肉ドッグとの違いをまざまざと見せつけられました。
毛ガニとフカヒレのしんじょう。毛ガニとフカヒレを肉団子状態にしたお椀。他のお皿と違って肉が用いられておらず、美味しいですが浮いた存在。
ローストビーフの食べ比べ。手前はヒレ、奥はサーロイン。肉は当然に旨いとして、焼いた松茸の使途や大葉あんかけ、ミョウガの使い方にセンスを感じます。結構な量があるのですが、ピュアッピュアで綺麗な味覚であり、光の速さで食べ切りました。
和牛すね肉のシチュー。わー、美味しいですねえ。牛肉って煮込むと美味しさが逃げて行っちゃった挙句、臭味まで出て来るので好きな調理ではないのですが、こちらのシチューは肉そのものの美味しさが中心に置かれた手堅い味わいです。
カブを炊いたものに菊の花を散らし、和牛テールの出汁で楽しみます。次のメインディッシュまでに覚悟を決めるための程よい間。
和牛シャトーブリアン炭火すき焼き。すき焼きとは聞いていましたが、まさかこういう形で登場するとは。やはりエレガントな肉の味わいに濃厚な卵の天然ソースが堪らない。見た目複雑な調理ではないのですが、肉の美味しさを究極に引き出す計算し尽くされた味わいでした。
〆は松茸ごはん。つい先日「比良山荘(ひらさんそう)」にお邪魔した際のおおらかな松茸使いには参りましたが、なかなかどうして当店もそれに勝るとも劣らず。
味噌汁や和牛の佃煮、香の物など全てかお代わりOKと気前が良い。松茸ごはんもたっぷりあって、残ればお持ち帰りとして持たせてくれます。なお、先のすき焼きで用いた卵のソースと絡めて食べるのも享楽的でよろしい。
デザートは和三盆と和栗の塩アイス。細く(?)解かれた栗の身が独特の食感を奏で美味。和三盆の上品な甘さも当店の芸風にピッタリ。ごちそうさまでした。
お会計はひとりあたり3.5万円弱。絶対額としてはもちろん高価ですが、費用対効果としては悪くなく、何よりガッチリと旨いのが凄く良い。どの料理もハズレがなく、その美味しさが安定した台地のようにずっと続きます。「にくの匠 三芳(みよし)」とはまた違った素晴らしさ。気合いの入った接待にバッチリ。勝負個室にどうぞ。

食べログ グルメブログランキング


関連記事
和食は料理ジャンルとして突出して高いです。「飲んで食べて1万円ぐらいでオススメの和食ない?」みたいなことを聞かれると、1万円で良い和食なんてありませんよ、と答えるようにしているのですが、「お前は感覚がズレている」となぜか非難されるのが心外。ほんとだから。そんな中でもバランス良く感じたお店は下記の通りです。
黒木純さんの著作。「そんなのつくれねーよ」と突っ込みたくなる奇をてらったレシピ本とは異なり、家庭で食べる、誰でも知っている「おかず」に集中特化した読み応えのある本です。トウモロコシご飯の造り方も惜しみなく公開中。彼がここにまで至るストーリーが描かれたエッセイも魅力的。