祇園で9年連続3ツ星に輝いた老舗の割烹「板前割烹 千花(ちはな)」。残念ながら火災で移転を余儀なくされ、現在は三条の古美術店や呉服店が並ぶ静かな通りで営業を再開しています。
移転して無星となったことも影響してかゲストは我々のみであり、店内は霊安室のように静かです。カウンターが一列にテーブルがひとつとちょうど良いサイズ感。
永田恭規シェフは創業者の孫にあたり、そのムッシュ永田基男の時代には白洲次郎や川端康成、三島由紀夫、小林秀雄、五木寛之など名だたる文化人が足繁く通ったそうな。
酒の種類は限られているものの、そんなに高くはありません。ビールの中ビンは800円であり、日本酒も1合千円強い。メニューも用意されており、ビビらずグビグビいけます。
まずは鶏肉とイチヂク。清澄でクリアな鶏肉に爽やかな甘さのイチヂクがよく合います。生湯葉。これはまあ、生湯葉ですね。生湯葉の味がします。量がたっぷりあるのは嬉しい。
コトコトコトと小鉢のツマミが並べられ、酒を飲ませにかかってきます。
こちらは旬のキノコたちに生麩(だっけ?)。素朴で美味しいのですが、冒頭からずっと素朴な皿が惑星直列し、パっとしない印象が強まってきました。
サンマと百合根。美味しいのですが、やはりサンマと百合根の域を超えない味覚です。
お魚のしんじょうのお椀。お魚はなんだっけなあ。ピンポン玉クラスのサイズ感であり食べ応えがありました。お刺身は明石の鯛。身が強く引き締まっておりナイスな食感です。塩昆布で食べる試みも面白い。
カマスの幽庵焼き。カマスの隣に配備されたのは赤万願寺とうがらしであり、恐らく初めて食べる食材です。ビビッドな色合いに思わず背筋が飲みました。辛くないよ。
厚揚げに壬生菜。うーん、この辺になると居酒屋と大差ないなあ。
酢の物で口腔内を整理したのちに、、、〆のお食事。うるち米ではなくモチ米を用いた飯蒸しであり、キュウリの漬物と大葉がトッピングされています。やはり派手さに欠ける味覚であり決め手に欠けます。
デザートはパンナコッタにリンゴのコンポート。これは美味しいですねえ、デパ地下の有名スイーツショップと同等かそれ以上の味わいであり、白色部分のコクとリンゴの蜜のような味わいが心に残りました。
最も安価な1万円のコースを注文したからかもしれませんが、それぞれの料理にトム・ハミルトンのような手堅さはあるものの、記憶に残るスマッシュは無く、地味な結末を迎えたという印象です。私の内蔵がまだ若くスタイリッシュなせいもあるかもしれませんが、若干の物足りなさを感じた夜でした。
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