カーヴ ユノキ(Cave Yunoki)/岩瀬(富山)

富山で今もっともナウいエリアと言えば「岩瀬」。江戸時代から海運業で栄えた港町であり、満寿泉の5代目当主が再生を手掛け、古い町並みを残しながらも現代的な観光地へと変貌しました。本日は観光客なら誰もが訪れる「酒商田尻本店」の奥、同じ建屋にある「カーヴ ユノキ(Cave Yunoki)」へと訪れます。
1日1組だけの特別感溢れるレストラン。築100年の蔵(カーヴ)を改装した店内。天井は高く広々としたつくりであり、厨房・ダイニング・リビングがひとつの空間におさまります。
まずは薪ストーブが置かれたリビングエリアへと案内され食前酒を注文。和歌山の「ヴィラ・アイーダ(Villa AiDA)」に似た世界観です。
人心地つくとダイニングへとご案内。柚木栄樹シェフは生まれも育ちも富山県。富山や東京のレストランで腕を磨き、Uターン後に全日空ホテルの料理長を務めたのち、「カーヴ ユノキ(Cave Yunoki)」をオープン。
私は運転があるため炭酸水1本勝負ですが、遠慮という辞書の無い連れは泡から日本酒へと移行。当然に地元のセイズファームや満寿泉との組み合わせを企図したものが多いのですが、支払金額から逆算するにどれも1杯千円程度だったような気がします。
アミューズはシロエビ。のっけから地元の食材が炸裂で観光客にとってはテンアゲです。しかもシロエビの量がとんでもなく、アミューズながら食べ応えのある1口でした。
地元のタコ。レアめに仕上がっており食感の良さと甘みが冷静と情熱のあいだです。余計な調味は試みず、これが富山だというストレートなタコ味。
バイ貝。やはり地元で揚がった個体であり、ゴリゴリと新鮮な食感。熾火で照らしスモーキーな風味も食欲をそそる。ツルムラサキの大人の味わい。
他方、パンは一般的な味覚です。全体的にシンプルな調理が多いので、パンについてはもうちょっとややこしい味覚のものが用意されるほうが私は好き。
アオリイカも富山産。コリっとした歯触りにふっくらとした噛み応え。何ともイカした味覚です。やはり熾火での調理であり、そう、シェフがしょっちゅう建物の外に出ていくのは、、、
外にある薪ストーブやグリルを用いて火を入れているのです。東京のレストランでは逆立ちしても勝てない部分です。
トマトのムース(?)とジュレ。下層は生クリームを加えて滑らかに。上層はトマトのエキスを用いてサッパリと。センス溢れる口直しです。
富山湾のエイ。ふええ、エイってこんな風に食べれるんだ。軟骨のような噛み応えが食べて楽しく、フカヒレのような滑らかな舌触りが官能的。酸味溢れる濃厚なソースと共にコッテリと旨い1皿でした。ああ、酒が飲みたい。
どひゃー、フランス料理屋でノドグロ丼を食べれるとは!ただし単純に白米というわけではなく、そこはきっちりリゾット仕様。スダチの風味がたっぷりで、ノドグロを混ぜ込み口に頬張り、この時わたしは絶頂に達しました。
メインは富山が誇るジビエ、鹿肉です。天衣無縫なスタイルで実に清澄。雑味はなくスッキリとクリアな味わい。この鹿肉であれば500グラムくらい食べることができそうだ。
デザートは落花生のブランマンジェ。形を保っているのが不思議なくらいの柔らかさであり、それでも舌先から滲みよるピーナッツの奥深い味わい。
ハーブティーで〆てごちそうさまでした。今回は私が飲まなかったのでアレですが、お料理が1万円でそれなりに飲めばひとり1.5~2万円といったところでしょうか。富山としては高い部類のレストランですが、その価値は十二分にあります。
料理のほとんどを富山の食材で勝負しているのが素晴らしいですね。おそらくコンテンポラリーフレンチというジャンルに分類されるのですが、見せかけだけでなく1皿1皿がきちんと美味しいのが輝かしい。東京の泡食ってんのかタレ舐めてんのかようわからんイノベーティブ系レストランはこちらに勉強に来るように。富山の食材を突き詰めた唯一無二のレストランでした。

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