カウンターは8席ありましたが、感染症対策かギュウギュウ詰めにはせず我々のコマでは6名の入りでした。狭く小さな掘立小屋ではありますが、窓という窓は全開であり全く密ではありません。
席についても注文をする必要はなく、黙っていても料理が出始めます。なぜならメニューは「ビーフステーキ」の単体メニューのみだから。酒はおろかライスなどのサイドメニューも無く、あくまで1名12,000円税込み現金のみというハードボイルドなスタイルです。
着席後10分もしないうちに着丼。サイドメニューが無いとは言え、この野菜の量と280グラムという肉塊は大迫力。食べやすいように既にカットされており、箸でモグモグと頂きます。
う、旨いっっっっ!1.2万円という支払金額を考えれば奇跡のクオリティです。私はNYのピーター・ルーガー、エンパイア、ベンジャミン、ウルフギャングス、ルビージャックスと、それなりに本場のステーキハウスのステーキは食べ込んできたつもりですが、はっきり言って「ひよこ」が一番、そしてダントツに美味しいです。
肉は黒毛和牛1頭からわずか14人前しか取れない最高品質のものであり、それを油でマリネして数日間熟成させてからお店に出すそうです。そのあたりのメカニズムについて私は詳しくないのですが、理屈抜きに直感に訴えかけてくるような美味しさがこの皿には詰まっています。
付け合わせの野菜たちの質も上々。大振りにカットされたプレゼンテーションはスープカレーの具材を凌駕するほどの迫力です。肉汁と和風ソース(?)の素朴な調味も乙な味。こんがりと焼き目のついた凝縮感のある豆腐が名脇役。
妙にホースラディッシュを推してくるので試してみると、これが、旨い。最初はピリリと刺激的な辛さなのですが、次第に肉の旨味と溶け合いクセになる味わいに。結局2人で1ビン使いきってしまうほど多用してしまいました。
美味しかった。本当に美味しかった。メニューを1本に絞りとにかく上質な肉を客に食わせまくるというコンセプトがすごくいい。きっとこれは「いきなりステーキ」の最終形態であり、まさに選択と集中。ステーキ業界のジャック・ウェルチである。
入店から退店まできっかり30分というのも潔くてすごくいい。金沢から東京に帰る日は夕食選びに難儀することが多いですが、当店は16時オープンであり、最終の新幹線へも余裕で間に合います(我々は18:00の予約で19:18の「かがやき」に乗りました)。金沢は肉のイメージに乏しいですが、騙されたと思って一度は是非。世界一の費用対効果を誇るステーキ屋でした。
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