吉越謙二郎シェフはひらまつグループのイタリア料理部門の切り込み隊長であり、料理長として活躍した「リストランテASO」「リストランテ オルケストラータ」はいずれもミシュランの星を獲得。厨房から聞こえてくる威勢の良い掛け声が高校の部活のようで耳に心地よい。
ワインは全てソムリエにお任せ。ひらまつのPBであるドゥラモットに始まり、白→赤→デザートとたっぷり飲みました。食前に温泉につかってきており、火照った身体にシャンパーニュがよく沁みる。
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アミューズが派手。仙石原の雲海に見立てたドライアイスこぽこぽから生えるのは凝縮感のある生のトマトにトリッパのコロッケ。このトマト何やろめっちゃ旨い。
並べて出された流しそうめん、ではなくカッペリーニ。ハモを添え出汁(スープ?)を注いでお茶目な一皿です。
続いてガスパチョ。濃密ながら程よく酸味もきいており美味。中にはリコッタチーズを纏った巨峰を配置するなど興味深いアレンジ。トップの海老は文句なしの美味しさです。
パンはチャパタ的に素朴な味わい。なのですが、お隣に抹茶をまぶしたホイップバターを添えるなど遊び心たっぷりです。
パスタは二段重ね。棒葉の上に置かれるのはラビオリ的なパスタ。中身はイノシシのミンチ肉であり西洋風のイノシシ餃子の完成です。さりげなく添えられたフォアグラのキューブも適度に脂質を与えまろみを感じさせます。
2段目はスパゲティ。ソースはトマトに白味噌を加えており興味深い味わい。再びリコッタチーズが再登板であり、程よい酸味がマッチして美味しかった。
お魚料理は本マグロのトロ。ザっと炙って脂を落ち着かせ、新ショウガのピクルスでクドさを排除します。黒トリュフのリッチな香りも良く合う。一見は創作料理風の企画モノですが、それぞれの構成要素に存在意義のある完成度の高い一皿でした。
メインはフランス産の小鳩のロースト。王道中の王道といった調理であり、さすがはひらまつといった完成度の高さです。添え物にフェトチーネが置かれており、舞茸とラグーで和えてあるのがちょこっとイタリアン。
デザートはキャラメルとエスプレッソのセミフレッドに洋ナシのマリネ。いずれも気をてらわないベーシックな味わいですが素直に美味しい。ふんわり香るシナモンが良いですね。
お茶菓子も手抜き無しに美味しい。ジャスト満腹。ごちそうさまでした。美味しかった。メニューを見た時はイタリア語・フランス語・スペイン語・英語・日本語が混在して記載されており大丈夫かいなと心配したのですが、それらのエスプリが上手くまとまり不思議と統一感のあるコース仕立てでした。まさにシェフ独自の世界観であり奇抜ではあるがしっかりと美味しい料理の数々。このあと歯を磨いただけでそのまま眠りにつけるのもすごくいい。この幸せはオーベルジュの醍醐味。泊まった人にしかわからない幸せです。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。