田久鮓(たくずし)/すすきの

札幌で個性的なレストランを展開するTAKUグループ。総統のムッシュ渡邉卓也はパリの鮨屋「仁」で1ツ星をゲットし、すすきのにおける鮨屋「田久鮓(たくずし)」でもミシュラン1ツ星を獲得しています。店を預かるのは宮下政也シェフ。小樽の日本料理店からスカウトされたそうです。
酒が安い。生ビール650円に日本酒はグラスで800円前後。ミシュラン1ツ星の鮨屋としては破格の価格設定でしょう。しかもこの生ビールが旨くって、サーバーのメンテナンスからグラスのチョイスまで完成された1杯。ワインリストも拝見しましたが、鮨屋としてはかなり良心的、かつ、幅広いラインナップです。
1番バッター、黒アワビ。何これ最強じゃん。しかも客を煽る目的だけでなく純粋に美味しい逸品であり、思わず唸り声を上げてしまいました。
茶碗蒸しは毛ガニがたっぷり。先のアワビと同様、北海道における重要食材が魅力的に投入されており、道外の人間としては堪らない構成です。
ウニの味噌漬け。ウニだけでも美味しいのに味噌漬けにするだなんて嬉しいぴえんです。箸で少しづつ口に運びながら酒をクイ。至福のひとときである。
真鯛。一般的に鯛の刺身はミニサイズでサービスされることが多いですが、当店のそれはかなり分厚く大きく食べ応えがあります。むしゃむしゃ。
カツオはヅケに。強い鉄分に負けない調味であり酒が進む。
ボタンエビの塩辛。くわー何なんださっきからこの酒飲みラインナップはけしからん実にけしからん。こんなツマミ、美味しくないわけがなく、酒飲みの肝臓をわしづかみにする一品です。
ノドグロはブワっと炙って脂を引き立てます。ジューシーな肉汁が原始的な快楽を刺激し、スパチュラで脂の一滴まで残さず嘗め回したいほどでした。
にぎりに入ります。まずはヒラメ。お、当店のシャリはかなり攻撃的。米の1粒1粒がしっかり感じられるほど固めに炊かれており、赤酢の酸もかなり強い。旨味も強くまろやかさまで感じる熟成感。アジコイメ推しの私としてはかなりタイプのシャリ使いです。
春子鯛。鯛の赤ちゃんであるはずなのに結構大きい。当店は先の刺身にせよ、いま何を食べているのかがはっきりとわかるポーションなのが嬉しいです。
ブリ。決して脂っぽくは無く肉の旨さを感じる身質。燻製しているのか、軽くスモーキーなニュアンスも感じられました。後のカールスモーキーである。
シマアジはザックリとした食感を残す弾力のある歯ざわり。賢明な読者はそろそろお気づきかもしれませんが、私はこの店がどうやら大好きなようです。
赤身は王道の味わい。マグロの酸味とシャリの酸味の相乗効果。
大トロも嫌な脂はなく思いのほかサッパリと楽しむことができます。
アジ。大トロの次を張るには荷が重いタネと思いきや、中々どうして凄味のある味わいです。やっぱ僕、こういうザクザクした歯ごたえの魚が好きだな。
車エビ。私はエビにつき好物というよりも信仰の対象に近いものがあるので文句など一切ございません。
コハダ。肉厚でかなり強烈に〆ている気がするのですが、パワフルなシャリと共に食べればバランス良く感じる不思議。
ホタテもやはり特大サイズ。包丁をザクザクと入れ食べ易くなっていますが、ここはひとつプレーンなままで食べても面白かったかもしれません。私の口はスティーブン・タイラーのように大きいのだ。
ウニは絶句するほどの美味しさ。最近はインスタグラム映えを意識してとりあえず盛ってりゃいんだろという店が増えてきましたが、当店はしっかりと必要にして充分な量を意識したポーションであり、シャリの酸味ならびに海苔の風味を含めて調和のとれた軍艦でした。
アナゴはギュっと押し込んで形は保っているものの、口の中ではホロホロと崩れるように柔らかい。
ギョクには海老か何かが腹案れているのかなあ。卵だけでは決して表現できない隠しきれないプロの香りを感じました。
お椀も私好み。一見シンプルな味噌汁のようですが、実態は和風スープドポワソンともいうべき魚介の旨味が凝縮されています。この日たべた魚が走馬灯のように蘇る。美味しゅうございました。
以上を食べ、軽く飲んでお会計は2万円を切りました。ぬわー、何なんでしょうこの費用対効果の高さは。ゲストも地元の常連客ばかりで、皆、ワイワイと楽しそうに鮨を頬張っているのが微笑ましい。そうだぞ鮨はみんなのものだ。数年待ちの鮨屋なんて飲食業界に対する犯罪である。

食べログ グルメブログランキング 
 

関連記事
鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。