車のナビにも載っていない住所を目指して山をぐんぐん登っていきます。丁寧に整備された葡萄畑を抜けると突如現れるオシャレな建物。感じの良い木々がたっぷりと茂っており、標高の甲斐もあって麓に比べると幾分涼しく感じました。
ワインや関連商品などが売られているショップに顔を出しチェックイン手続き。宿泊施設といってもホテルのような対応は1ミリもなく、注意事項だけ伝えられカギを渡されるのみというバケーションレンタルに近い仕組みです。夜間は無人となりトラブル時には警備会社が対応するとのこと。
お隣の建屋へと移動。建物に沿ってお庭が整備されており、テラスなどもあって雰囲気抜群。眼下には葡萄畑と富山湾。ワインラヴァーならずともこの世界観には必ずや感動するでしょう。
建物に入る前にアルコール消毒。こちらで作っている消毒液らしく、ラベルが「セイズファーム(SAYS FARM)」のエチケットそのものであり、思わずニヤりとする。
リビングダイニングはバドミントンコートほどの広さがあり、想像を絶する広さです。
大きなダイニングテーブルには椅子が12脚も用意されており、薪ストーブなどの家具(?)選びのセンスも抜群。私は不動産を所有しない主義なのですが、今日に限っては別荘が欲しくなりました。
キッチンも広々。調理器具や食器なども取りそろえられており、本格的なパーティにも対応できそうです。予約時に担当者からオススメ買い出しスポットなどもお伝え頂いていたので、自炊推しの宿泊施設なのでしょう。
冷蔵庫にはキンキンに冷えたシードル。基本的に併設のショップでの小売価格と同じ価格設定です。
長い運転に疲れたので、シードルのボトルを開けてごろんします。アルコール度数が7パーセントとリラックスするにちょうど良く、数分で1本を開けてしまいました。
ちなみにごろんしたリビングゾーンはこちら。テレビなどはなく、メディアはバングアンドオルフセンに接続されたiPadのみです。
館内散策を再開。逃げ水が見えそうなほどずどーんと長い廊下。いかにこの建物がデカいかが伝わりますでしょうか。
ベッドルームはコチラ。何とも味のある造りであり、窓から見えるグリーンに癒されます。このようなベッドルームが横並びで3部屋あり、最大3グループでの訪問が可能です。
お手洗いも清潔で機能的。
バスルームも広く、ここだけで10畳近くあるのではなかろうか。テラスにもつながっており、物理的には外でゆったりできる造りなのですが、山奥であるためどうしても虫が多いのが難点。
逆サイドから。シンプルですが機能的な設計です。
タオルなどはひとり1カゴごとに取りまとめられています。アメニティは「MATIN et ETOILE(マタン エ エトアル)」と、かなりニッチなブランドを採用。
扉を全部開けていくのですが、洗濯機も用意されていました。このあたりのテイストは沖縄「MAGACHABARU OKINAWA(マガチャバル)」に近いものがあります。また、バスルームにワインセラーがビルトインされているのはぶっとびです。
夕食の時間となったのでレストラン棟に向かう。宿泊棟と同じテイストの、シンプルで心地よい空間です。
飲み物はもちろん「セイズファーム(SAYS FARM)」のものを全制覇する勢いです。へー、アルバリーニョとかピノも造ってたんだ。初めて見た。
そうそう、夕食は17:30からと指示され、すげえ早ええなあと思いながら時間通りに席に着いたのですが、アミューズが出てくるまで30分も要しました。何だよそれなら最初から18:00って言えよ、部屋でゴロゴロ待ってるから。
やはり次の料理が出てくるまで30分を要します。ゲストは6人のみで従業員は4~5人いるというのにこのテンポの悪さは何なんでしょう。美瑛「バローレ(Valore)」での悪夢が頭をよぎる。
パンはまあまあ美味しく、料理が中々出てこないのでヒマつぶしに秒で食べきってしまうのですが、袋がカラになっても次のパンは持ってこようとしない、というかカラになったことに気づいていない。
また、他のテーブルの飲み物であるピーチネクターを自信満々で我々のテーブルに間違って置こうとするのですが、あのさあ、わざわざ氷見くんだりのワイナリーに泊まる奇特な客で、さっきからガブガブワインを飲みまくってる客が突然ピーチネクターを注文するわけないでしょ。少しぐらい「あれ?変だな?」って思ってもいいんじゃないの?
と、このように、予約客の情報がサービス陣の頭に全く入っておらず、テーブルウォッチングなどもダメダメであり、コース料理が8千円の店としてはサービスレベルが最低クラスでした。開店前のミーティングとか何もやってないんだろうな。
話を食事に戻しましょう。こちらは能登で獲れた鰻。蒲焼とはまた違った魅力があり、農園卵の卵黄も天然のソースと化してグッドです。料理が結構美味しいだけに、皿出しのテンポの悪さやサービス品質の低さが余計に悪目立ちします。
肉厚のサワラは表面をササっと炙っただけで、素材そのものの風味を楽しみます。美味しいのですが、どうしてこんなシンプルな料理に30分もかかるのでしょうか。ゲストはたった6人だぜ?私がホームパーティを開く際は10人ほどのゲストをおもてなしすることが多く、調理はもちろん抜栓からワインのサービスまで全てをひとりでこなしており、それでも「食べ物が無くてヒマ」という状況は絶対に無いよう気を付けているというのに。
メインは氷見牛。いわゆる和牛のような脂臭さは一切なく、凝縮感のある濃密な味わいで美味。
〆の炭水化物は鮎。こちらも美味しいのですが量が少ない。コースの最後に持ってくるのであれば、食べる量の調整ぐらいしてくれたっていいのに。
デザートを用意するのにも20分以上を要しました。こんなん盛り付けるだけやろーがい。ガラスで隔てられた厨房を見遣ると、従業員同士がヘラヘラと笑顔で雑談しており、さすがに腹が立ちました。ダラダラ仕事しやがって。しかし従業員の仲が良いのは良いことである。
食後のお茶につき、他のテーブルにはコーヒーかハーブティーを聞いて回っていたのに、我々は選択肢は無くコーヒーが突き出されました。ほんと何なんでしょうこのアトランダムなサービスは。
というわけで、宿泊予約の際にレストランの利用よりも暗に自炊を勧められた理由が何となくわかった気がします。料理はそこそこ美味しいですが、これだけの素材をあれだけ時間をかけて調理すれば当たり前品質であり、これなら同じ予算で自炊したほうが総合的に楽しかった気がします。
チェックアウトもあくまで塩対応であり、コンビニで水を買うぐらいの客あしらいでした。この宿泊施設に泊まるのはこのワイナリーの大ファンであることがわかりきっているというのに、この顧客接点はあまりにクールです。勝手に片思いして勝手に失恋した気分を久々に味わいました。
好きなワインの生産拠点にせっかく泊まれたというのに、逆に印象が悪くなってしまった滞在でした。「セイズファーム(SAYS FARM)」のファンの方は、逆説的ではありますが来ない方が幸せかもしれません。ただし希少価値の高いワインを適正価格でたっぷり飲めるという意味では、「ワイナリー」として正しい姿勢とも言えるのかもしれない。ナパのようなワインリゾートを期待すると肩透かしを食うので、「あくまでワインだけ」と覚悟して訪れましょう。
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富山は食の宝庫。天然の生け簀である富山湾にジビエや山菜が豊富な山々、そして米と水。レストランのレベルは非常に高く、支払金額は東京の3割引~半額の印象です。だいぶ調子に乗ってきた金沢が嫌になってきた方は、是非とも富山に。
- 鮨 大門 ←銀座の半額で味と居心地の良さはそれ以上。
- ひまわり食堂 ←こねくり回すことなく、いま何を食べているのかハッキリとわかる味と量。
- 日本料理 山崎 ←ミシュラン3ツ星和食がこの価格で楽しめるのは富山の奇跡。
- 鮨人 ←富山で一番人気のある鮨屋。
- 冨久屋(ふくや) ←ナイスな費用対効果。東京の調子に乗った和食店であれば余裕で倍は請求されることでしょう。
- 天ぷら小泉 たかの ←富山駅から近く昼も夜も空いているのが旅行者にとっても便利。
- 鮨 難波 ←富山の食材オールスターをにぎりで腹いっぱい楽しんでこの支払金額。
- KAWAZ(カワズ) ←「レヴォ(L'evo)」でスーシェフだったムッシュ川崎淳が富山市内で開業。
- レヴォ(L'evo) ←人里離れた場所にありながら、日本いや世界でもトップレベルのフランス料理店。
- ぼてやん多奈加 ←お好み焼きが座布団というかクッションというか、四角い!分厚い!