前はスナックだったのかなあ。独特の間取りの店内はシェフズテーブルが8席。昭和の香りが漂うシックな雰囲気です。今回はコースで注文しましたが、アラカルトでの注文もOK。アルコールはタップマルシェ(キリンのクラフトビール)は700円~と居酒屋価格であり、グラスの赤ではジスクールのセカンドが1,400円とかなり安い。
前菜盛り合わせ。右手前の蝦夷鹿のハムカツのサンドイッチが抜群に旨い。揚げるというよりは衣をたっぷりつけて鉄板で揚げ焼きするというスタイルがあり、こういう調理法もあるんだなあと感心しました。
「渡部のこと大丈夫?東京じゃ大変なんでしょ?ヘンな美人局に捕まってない?多目的トイレでヤってない?」のっけからワイドショーな女である。やれやれ、これだから女子校出身者は。
カボチャのクリームスープ。王道の味わいであり率直な味覚です。量もたっぷり。
お気遣いありがとう。でも、僕はコロナよりずっと前からエレベータはグーで押すぐらいの潔癖症だから、多目的トイレでは絶対に無いよ。だってあそこ、ウンコするとこじゃん。
カレイもたっぷりの油で焼いたのち、冷たいトマトを散らします。外さずベーシックな味わいです。
「東京女子図鑑は見た?どう思った?やっぱりあのドラマは東京に住んでる人じゃないとピンと来ないと思うんだよね」うーん、あれはどう考えたって最初の三茶の男が一番イケてると思うけどね。細かいことを言えば、そんなワンピ買うぐらいならその金でロブション行けよ、って思ったことと、グッチのオフィスは銀座でなく表参道でフランス語は使わないだろって気になったぐらいかなあ。
メインは黒毛和牛のステーキ。脂を保ちつつも思ったよりもサッパリと食べることができ、肉の味も濃い。
「あんた自閉症スペクトラム?そんな細かいことはどうだっていいの。あのドラマはアラサーの女の子の琴線に触れるエピソードをうまーく表現してると思うけどね」
〆のお食事はガーリックライスを始めとした色々な炭水化物からの選択制なのですが、私はオムライスをチョイス。目の前で白ゴハンからチキンライスが作られ、オムレツをチョンと乗せられる工程を眺めるのも目で美味しい。
「あたしたちの年頃って人間関係が難しい。仕事・結婚・子供、それぞれの有無の組み合わせによって置かれた立場が全然変わって来るの。『あー、高校の時は仲良かったけど、仕事辞めて子供しか育ててないコイツとはもう話合わねーなー』みたいな感情が女には芽生えてくる。男なんてラクなもんね、せいぜい年収ぐらいでしょ?変数って」
デザートはパイナップル特集。乾燥させたチップス、アイスクリーム、スパイスに漬け込んだものなどあの手この手でパイナップルの魅力を引き出します。
確かに男性陣は昔の友達と会ったとしても、仕事や家族の話はあまりせず、学生時代のバカ話(主に下ネタ)を掘り返してゲラゲラ笑うことのほうが多いかもしれません。「女性特有の、人間関係の濾過装置ね」彼女はグラスにキスをするようにシャンパーニュを口に含んだ。
ハーブティーで〆てごちそうさまでした。お会計はひとりあたり1万円ほど。鉄板焼き屋で和牛まで食べてこの金額に落ち着くのであればリーズナブルでしょう。「うかい亭」であれば倍以上請求されるかもしれん。唯一無二の絶品料理ぎょえー、という芸風ではなく、仲間と語らないながらしみじみと味わう雰囲気のお店。肩肘張らず気楽に訪れましょう。
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