Lien(リアン)/池尻大橋

池尻大橋駅から徒歩7~8分、住宅街も住宅街の中にポツンと佇む「Lien(リアン)」。都内でもトップクラスの費用対効果を誇るフランス料理店として話題となりました。店名はフランス語で「繋がり」の意味。
店内に大きく段差がある変わった空間設計です。上段は厨房に沿ったカウンター席であり、下段はテーブル席。席の間隔は狭く会話は丸聞こえでありかなり密です。

上原浩一シェフは西荻窪「サン・ル・スー」やパリ「エレーヌ・ダローズ」で経験を積み、2014年に当店を開業。当店のほか、パン屋や菓子屋も営業しています。
当店は従量課金制のプリフィクスコース。前菜やデザートの取る数を決め、メニューの中から食べたいものを自由に選ぶスタイルです。驚くべきはそのラインナップ。食事だけで30近い選択肢があり、デザートでさえも10種以上が取りそろえられています。しかもグループで統一して欲しいなどの制限は全くなく、もはやアラカルト注文とも言って良いほどのフリーダム。これは「これだけの仕事量を捌くことができますよ」という宣言に他ならず、この段取りの良さはマルチタスクを通り越してトヨタである。この時点でこの店は只者ではないぞとの確信に至りました。
ペアリングは3杯コース、4杯コース、5杯コースとあり、5杯でもシャンパーニュ込みで5千円かそこらだった気がします。なのですが、ワインの流れは全て固定されており、選んだ前菜によって変わるということはありませんでした。これはちょっと「ペアリング」ではないような気がするのだけれど。
前菜の前にアミューズも2皿供されます。イワシを乗せたタルトが美味。ちなみにハコの中に海の絵柄があるのですが、サン・セバスティアン「ARZAK」のタブレットの上で食べる料理を思い出す。次はいったいいつになったら海外に行けるのやら。
コチラはフォアグラを練り込んだアイスクリーム(?)でしょうか。スティックタイプで
食べやすく、率直に美味しい。ハコ買いしてOLに差し入れたいレベルです。
私は前菜を3皿取るコースを注文。まずは牡蠣のリゾット。牡蠣の旨味が上手く凝縮されており、米にヒタヒタと染み込んでベリーグッド。黄身の黄色い温泉卵の天然のソースのようでナイスです。
仔山羊のコンフィのパートブリック包み焼き。仔山羊のコンフィはコンビーフのようにほぐし身状態となっており、それらを詰め込んだ洋風春巻きといった味わいです。肉の味の濃さにまろやかなソースが絡まり合い、個人的にかなりツボなお皿でした。
アナゴの炙りなのですが、これは全然美味しくなかった。付け合わせのトウモロコシや米ナスのソテーならびにソースは悪くなかっただけに、アナゴの個体が良くなかったのかしらん。このようにどうしてもハズレが生じてしまうのが皿数が多いお店の宿命ですね。しゃあない。
パンもフランス仕込みの本格派。アミューズに添えられていたブリオッシュのレベルの高さも含め、なるほどブーランジェリーとして活躍するだけあります。フランス帰りの料理人とドメスティックな料理人の大きな違いのひとつとして、パンに対する意識を挙げることができるでしょう。
魚料理はアマダイのうろこ焼き。悪くないのですが、アミューズから前菜に至るまでのトキメキに比べると、まあこんなもんかという印象は拭えない。多皿で量が多いと、食べ手のハードルがどんどん上がっていくのが辛いところです。
メインは鹿肉のロースト。多皿と言えどもかなりしっかりとしたポーションであり食べ応え抜群。王道ともいえる調理ならびに調味であり、どストレートに美味しかった。
デザートは2種。まずはモモのパフェ仕立て。モモだけでなくムースやソルベ、マスカルポーネチーズ、ジュレなども折り重なり、パフェとして相当にレベルが高くまさにパフェ(完璧)でした。
2皿目は牛乳のアイスクリーム。こちらも乳が濃厚でありながら空気をたっぷり含んでおり、見た目以上にサラっと食べることができる逸品。
お茶菓子もしっかりと用意され、それぞれがきちんと美味しい。フォアグラのチョコレートも乙な味。序盤のフォアグラのアイスクリーム(?)も含め、当店はフォアグラの風味を活かすのがとても上手い。
プリンも出てきました。卵の味がはっきりと伝わる濃厚で硬質なものであり食べ応え抜群。もう腹いっぱいや。こんなにフランス料理を食べたのは「銀座 大石」ぶりかもしれません。
ハーブティーで〆てごちそうさまでした。お会計はひとりあたり1.3万円ほど。うぉーと思わず唸ってしまう費用対効果です。だってこれだけ食べて料理なんて7千円ですよ7千円。加えてこれは食べ過ぎコースであり、普通の女子であれば4千円や5千円のコース(皿数)で充分に満足できるでしょう。しっかり飲み食いして1万円でお釣りがくる。池尻の奇跡。
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