大渡真人シェフは福岡県出身。大阪の調理学校を卒業後、そのまま大阪で修業を重ね、奥様のご実家である京都に居を移し開業。「草喰なかびかし」と繋がりがあるようで、かまどなどは、そこと同じものを使っているそうな。かなりひょうきんでテンションの高い方で、一見と常連を分け隔てなく接し、平たく言うととても感じの良い接客です。お弟子さんのイジり方を含め小倉「照寿司(てるずし)」のような盛り上がりのあったランチでした。
まずは長芋そうめん。たっぷりのトマト酢にじゅんさいでサッパリ頂きます。塩気と旨味のアクセントにキャビアと毛ガニを用いておりセンスが良い。
「もう塩焼きは飽きたでしょう?」ということで、鮎がフライになってきました。しかしただフライにするだけでは重くなるのでお腹の部分にだけ衣をつけているとのこと。料理に対して分析的な姿勢であり私の好みの芸風です。
スッポンの冷たいお粥さん。かなりパンチの強いスープをジュレ状にしていますが、冷製であるためサッパリと食べることができます。
ハモの焼霜。ワサビをたっぷりつけて、やはりサッパリと頂きます。調味を強めたい場合は添えられたハモの塩辛で調整。これが実に旨く、酒のアテとしておかわりしたいぐらいでした。
お椀はアコウダイ。強めの出汁に赤子のゲンコツほどのお魚がぶち込まれています。ムシャムシャと食べ応え抜群。飲むというよりも食べるという表現が適切な食べ応えのある逸品。
花街でよく出される鯨餅(くぢらもち)に着想を得て作られた1品。もともとは米粉を胡桃や砂糖などと共に練って蒸したものらしいですが、当店は塩っ気たっぷり味濃いめでの提供。まだまだ知らない料理が世の中にはたくさんあるなあ。
牛しゃぶ。低温調理で仄かにピンク色。しつこさは全くなく、かなりの量があるのですがモリモリと瞬で食べきってしまいました。冬瓜の爽やかな風味もいとをかし。
スズキを焼き上げ、千切りのウド、ならびに蓼酢や山椒オイルで頂きます。お魚のふんわりとした食感がどこまでも優しい。「スズキとウドはとても相性が良くてですね、ウド鈴木なんですよ」とスマッシュを決める店主。
全くお茶目な方である。
さてアワビのお鍋。カチカチに焼かれた鍋に大量のアワビを放り込み、アラミニュットで仕上げます。魅力的な弾力を湛える上質な個体であり、肝醤油をたっぷりとつけて至福のひととき。鮨のようにバクっと一口で食べるのも良いですが、こうして1切れ1切れをたっぷり頂くのも乙な味。
ごはんが炊き上がりました。まずはシンプルに白米で。ちりめんやお漬物がいちいち旨く、ブリのへしこに至っては残りの日本酒を全てかっさらっていきました。
おかわりからは卵かけゴハンも選択できます。黄身だけでズズズとやる背徳感。
食後の甘味は本わらび粉の黒糖わらび餅。粘着力がマックスであり、これが本当のワラビのパワーなのか。あとオマケでメレンゲのお菓子も頂きました。
店主がたてるお薄を頂いてごちそうさまでした。
一通りを食べ軽く飲んでお会計はひとりあたり3万円弱。雰囲気や素材を考えればリーズナブルな価格設定です。東京であればおいくら万円することやら。加えて前述の通り店主の客あしらいが抜群であるため、実にリラックスして食事を楽しむことができました。純粋な京料理ではないため観光客向けではないかもしれませんが、予約が取れるのであれば一度はお邪魔しておきたいお店です。
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