山本卓也シェフは「京都ホテルオークラ」「ハイアットリージェンシー箱根」「星野リゾート」などを経て当館へ。「テロワール発酵フレンチ」を標榜し、滋賀だけでなくその周囲の府県を加え、点ではなく面で食材を捉えているそうです。
アミューズが凝っている。左はニンジン系、中央はフォアグラ、右は竹炭に鮒ずし(?)にチーズのタルト。3番目のやつが超旨いっすねえ。魚の独特の酸味とコクにチーズの旨味が相まって、永遠に酒が進みそうな味わいです。
食前酒はコースに付帯しており、お茶(?)にイエーガーマイスター(ドイツの養命酒)のカクテルが出てきました。ここでワインリストを開くのですが、値付けの酷さに開いた口が塞がりません。 モエ・エ・シャンドン・モエ・アンペリアルのハーフボトルが11,000円であり、ここに税サが乗ってきます。私が知る限り日本一高い値付けです。そんなレストランには「水でいいです」の刑じゃ。
前菜は琵琶湖の鮎。ギッシリと密度の高い鮎であり食べ応え抜群。酸味のあるキュウリや古代米のカリカリと共に楽しい1皿です。
ニジマスにトマト、山菜。それぞれの素材は悪くないのですが、全体としてまとまりがなく調和が感じられませんでした。
パンは3種類ありますが可もなく不可もなく。バターの他、鴨のリエットが添えられオマケのオカズとしてナイスです。
タケノコに地元の鶏肉のムース。表面に山椒味噌を塗っており、透き通ったタケノコの味わいに鶏肉の旨味、山椒味噌のパンチ力と記憶に残る味わいです。
リゾットはイカの風味が濃い。ヌチっとしたイカそのものの食感も良く、ワサビ菜の軽快な味わいと共に素直に美味しい。量もたっぷり。
お口直しのソルベはバジル風味。あれ、こういうのって肉料理の前に出ることが多いような気がする、という狭量な疑念が脳を支配しまともに味覚に取り組めませんでした。
三重県産のシマアジが分厚い。しっとりと水分も保っており美味。ただしこのトリュフは余計。お皿を置いた後にライブでスタッフが摺ってくれるくれるのですが、その量の少なさといったらなく、ケチ臭い印象しか残していきませんでした。チリは積もってもチリのままである。
メインは地元のエース、近江牛のロースです。マンゴーを主体とした不思議な味付けであり、隠し味にフルーツをすり下ろしたタレで食べる焼肉のような印象を持ちました。
デザートにピスタチオクリームのミルフィーユにピスタチオのアイス。これは美味しいですねえ。ピスタチオよりもピスタチオの味が濃く、もったりコッテリと贅沢な味わいでした。
抹茶とニンジン(ニンジン好きやな)の焼き菓子で〆。ごちそうさまでした。
なるほどゴ・エ・ミヨが評価しただけあって、どの皿も外すことなく安定的に美味しい料理でした。ゲストの数がそれなりに多いにもかかわらずテンポ良くコースを出し切る手際の良さもお見事。
他方、料理以外の部分、例えば乳幼児をOKにしている点や極端にカジュアルな服装も認めている点で、高級フランス料理としてはどうなんでしょうという印象は拭えません。ワインの値付けの酷さについては既に述べた。ただしひとり信念を持ったサービスのプロが入れば大化けするような気もします。
関連記事
「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
- ガストロノミー ジョエル・ロブション ←最高の夜をありがとう。
- アピシウス ←東京最高峰のレストラン。
- ナリサワ ←何度訪れても完璧。
- ナベノイズム ←世界観がきちんとある。
- ル・マンジュ・トゥー/神楽坂 ←接客は完璧。料理は美味そのもの。皿出しのテンポも良く、とにかく居心地の良いお店。客層も好き。
- TAIAN TOKYO(タイアン トウキョウ)/西麻布 ←流行り廃りに捉われないマッチョな料理。
- メシモ(MECIMO)/小田原 ←重厚長大なレストランの裏をかく魅力的な設計
- ア・ニュ Shohei Shimono/広尾 ←リニューアルしてリベラルに、旨けりゃなんでもいいじゃん的に
- ラフィナージュ(L'affinage)/銀座 ←王道中の王道。銀座とは考えられない値付け。
- ル・マノアール・ダスティン/銀座 ←まさに正統。
- SUGALABO ←料理だけなら一番好きかも。
- エクアトゥール ←天才によって創られる唯一無二の料理。
- ete(エテ) ←美食の行き着く先はお抱えの料理人。
- レヴォ ←人里離れた場所にありながら、日本いや世界でもトップレベルのフランス料理店。
- マノワール・ディノ(Manoir d'inno)/表参道 ←料理は直球勝負。ワインは高くない。
- フロリレージュ ←間違いなく世界を狙える。
- クレッセント/芝公園 ←グランメゾン中のグランメゾン。
- アサヒナガストロノーム/日本橋 ←そこらのフランス料理店とは格が違う。
- ティエリー マルクス ←料理の良さはもちろんのこと、ワインのペアリングが見事。
- エステール(ESTERRE)/大手町 ←料理もサービスもパーフェクト。外せない食事ならココ。