大将の真向かいの席を確保。目の前で生きた鰻が生きたままさばかれ、そのまま炙られていく圧倒的ライブ感。我々は初めてお邪魔するので全てを店主にお任せしましたが、常連客であれば色々とワガママを聞いてもらえるそうです。なお、天然鰻につき、初めてのゲストは味が良くわかっていないので出さず、養殖のみを提供するとのこと。
生ビールはサントリーのクラフトビール「東京クラフト ペールエール」。その他、ハートランドやプレモル(だっけ?)、日本酒などなど、酒類は良心的な価格設定でした。
お通しに大根の漬物。これはまあ、見たまんまの味わいです。
串に入ります。まずは「えりやき」。こちらは関東風で一度蒸しているとのこと。美味しいのですが、自由が丘「ほさかや」や武蔵小山「梅星」と大きく違うかと問われると私は上手く答えることができません。
こちらは関西風。うん、こっちの方がバリっと風味が香ばしく、酒のアテにピッタリです。
「焼き物ができるまで豆腐やお新香などいかがですか?量は?」と訊ねられるのですが、これがコース(?)に込みなのか従量課金制なのか不明であり困惑する。メインの鰻やライスまでサイズを聞かれるので、何がどうだったらいくらになるのか気になる人は気になるかもしれません。ちなみにこの寄せ豆腐はクリーミーでめっちゃ美味しい。
さばかれたばかりの鰻の心臓。まだピクピクと動いており度胸が試されます。また、落としたばかりの鰻の生首を天然と養殖で嗅ぎ分けるというイベントもあるのですが外人には厳しいかもしれません。もっと言うと、「一見には養殖モノしか出さない」と明言した上で天然と養殖と比べさせるというのはまさに格差社会。あまり気持ちの良いパフォーマンスではありません。「どうです?養殖モノは生臭く感じませんか?」とニコニコ訊ねられても、いや、俺ら今からその生臭いモノ食べるしか選択肢ないんだけど。
ヒレ焼きに
肝焼き(ひも焼き?)と串が続きます。このあたり鰻の部位について私は知識が乏しいので分析的に食べることが難しかった。
お新香は減農薬・無農薬のお野菜を用いているらしく、きちんとした割烹料理屋で食べるそれと同等の美味しさです。
一口蒲焼き。おっ、鰻っぽくなってきたぞ。いわゆる蒲焼の串タイプであり王道の美味しさ。
クシマキ(?)に
レバー。レバーはなるほど肝臓だなという味わいであり、どの動物であってもレバーは似たような味なんだなあと生命の神秘を感じた瞬間です。
白焼き。美味しいのですが、かなり待たされたなあという印象のほうが強い。味覚も「さすが食べログ1位や!」と悶絶するレベルかというとそうでもなく、いわゆる一般的な鰻の名店の白焼きとそう変わりません。個人的には河津「大川屋」の白焼きのほうがマッチョで好き。
かば焼き。やはりかなり待たされました。鰻とはそういう料理だと頭では理解しつつも、口元の淋しさからは逃れられません。味わいについても美味しいは美味しいのですが、これが世界最高峰の蒲焼かと問われると首を傾げてしまう。鹿児島「うなぎの美鶴」の鰻重のほうが私は好き。
ライスは普通のライスです。常連客はダバダバに鰻のタレをかけてもらっていたのでうらやましす。
肝吸いも、一般的な鰻屋のそれです。
ひと通りを食べ、そこそこ飲んでお会計はひとりあたり1.3万円ほど。都心で結構な量の鰻を食べたことを考えればリーズナブルと言えるでしょう。しかしながら1.3万円は1.3万円であり絶対額としては高価。加えて予約の困難さを考慮に入れると、おすすめするには人を選ぶなあという印象です。
さて、ここからは好みの問題なのですが、鰻のような個性的な食材を長時間かけて繰り返し食べ続けるという行為が私はどうやら苦手なようです。鰻を食べるなら名古屋「うな富士」のように即本番の一発勝負か、「と村」や「くろぎ」のように流れの中にアクセントとして忍ばせるという芸風のほうが私は好き。しかしながら、一緒にお邪魔した方は純粋な鰻ラヴァーであり「これは旨い!安い!」と褒めちぎっていたので、やはり好みは人それぞれです。
「食べログ1位だ!」などとネットの情報に踊らされることなく、うなぎ料理屋にのんびり飲みに行く、ぐらいのテンションで、気負わず訪れると良いでしょう。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。