八寸/帯広

帯広の駅前飲み屋街から徒歩10分の「八寸」。かなりしっかりとした店構えであり、玄関で靴を脱いで上がるスタイルです。ミシュラン1ツ星。
木幡好斗シェフは祇園の老舗割烹で修業を積んだ後、1994年に独立。「最高級のカツオと昆布を仕入れた出汁が自慢」と何かのメディアに書いてありました。

個室に案内され居心地は良いのですが、照明が白色の蛍光灯でギンギラギンなのと、BGMが拍手でも起きそうな仰々しいクラシックピアノ(しかもマイナー調)であり、上品な和食を食べるという雰囲気ではありません。
酒も高い。国稀の純米大吟醸が1合1,800円と西麻布価格です。量り売りでの選択肢は少なく殆どが4合瓶売りであり、さあ飲もうというゾーンに入りづらい品揃えです。
「前菜です」とだけ言って皿を置いていく給仕。見ればわかるだろという意味でしょうか、客単価1万円を超える店であればもう少し料理に愛情を持って接して欲しいところです。エビと水ダコは美味しかった。
今度は何も言わずにこの物体を置いていきました。実家にテポドンでも撃ち込まれてPP(プチパニック)のまま仕事に出てきたのかと心配になるほど塩対応です。ちなみにこのお料理は冷製茶碗蒸しであり、具材にアナゴ・カニ・じゅんさい・百合根など。結構ややこしい皿なので、これはきちんと説明すべきと思うけれど。
配膳係が代わり、「炊いた穴子の棒鮨です」と、3皿目にしてようやく料理についてご紹介頂きました。しかしながらその味は京樽などのテイクアウト寿司と変わらないクオリティです。
すっかりやる気を失ってしまった私は、お刺身の写真を撮り忘れてしまいました。覚えている限りのことを記すと魚はスズキにマグロ、タイ、カンパチ、塩水ウニ。マグロはまあまあ良かったですが、白身魚の色が悪く瑞々しさも欠落しており、デパ地下の刺身のほうが質は上でしょう。
ハモの柳川風でしょうか。ゴボウの風味と濃いめのスープが調和し、これは中々美味しかったです。
これは焼き物という位置づけでしょうか。魚はスズキであり刺身と食材かぶっとるやん。海老も冒頭の前菜で食べた味。美味しいですが、せっかくの外食なのだからもう少しレパートリーが欲しいところです。
天ぷらは賀茂茄子にヤングコーン、オクラ、シシトウ、胡麻麸と急遽ボリュームが増えてきました。味は可もなく不可もなく。旅館の夕食で出てくる天ぷらと同等です。
食事は新ショウガとホタテの炊き込みご飯。まあまあの味ですが、どうも投げやりな味覚に感じてしまいます。お漬物は美味しくないを通り越して不味かった。
水菓子はアップルマンゴー。美味しいですが、切って出しただけの素材でもある。それにしても、抹茶をたてろとまでは言いませんが、食後にはせめて温かいお茶でも出して欲しかった。

控えめに飲んでお会計はひとりあたり1.3万円。ミシュラン1ツ星の和食というブランドから考えれば悪くない価格ですが、どうにも料理から愛情が伝わって来ず、魂が抜けたルーチンワークに感じてしまいました。あまり気負わず、高級居酒屋に行くつもりで訪れましょう。

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