綾小路 唐津(あやのこうじ からつ)/四条(京都)

四条駅から徒歩数分という好立地にある「綾小路 唐津(あやのこうじ からつ)」。築100年余りの町家を改装したエクステリアがカッコイイ。食べログは4.00(2020年7月)でミシュラン1ツ星獲得の実力派。
お庭もあり、かなりゆったりとした造りのお店なのですが、カウンター8席に個室のみと贅沢な空間使いです。唐津将作シェフは長崎にあるご実家の和食店で腕を磨いた後、京都吉兆へ。2017年11月に独立を果たし、新たなステージへの挑戦です。
素敵な八寸。9時から時計回りにバイ貝、タコの子、なんだっけ?噴火湾の毛ガニ、枝豆サツマイモれんこん、中央のちまきには明石のタコ。生ビールは700円で酒は1合1,200円~と良心的な価格設定であり、この八寸でかなり飲めてしまいます。
お椀はハモ。生臭さは一切なく、一方でかなり食べ応えのあるサイズであり、かなり満足度の高い1杯です。
お刺身はアコウダイ。薄切りながら深海魚らしくマッチョな歯ごたえならに味わいであり美味。チリ酢をたっぷりつけて至福のひととき。
カツオの藁焼き。大サイズのカツオを目の前でジュウジュウと炙ってくださるため、とにかく香りが良い。食べる前からああこれはきっと美味しいなと感じ、実際に旨いのである。やっぱり音や香り、温度も料理にとっては重要なファクターなのである。
琵琶湖の鮎。やはりこちらも目の前で時間をかけてじっくりと炙ってくれます。他店に比べると、待つ度胸の光る長時間炙りであり、その甲斐あってか味覚が上手く凝縮されているような気がしました。
うほー、炊き合わせにカニやらウニやらなんとも豪華。サトイモやシイタケが主題のはずではありますが、スター食材に囲まれるとどうも目尻が下がってしまう。
お食事は炊き立ての白米に卵黄、ちりめん山椒、お漬物。ごはんのお代わりはもちろんOKで、ちりめん山椒も好きなだけぶっかけることができます。赤だしには味の濃いトウモロコシが加わっており面白い味覚でした。

ちなみに私が少し日本酒を残しているのを見かねてか、オマケでカラスミを付けてくれました。なんていい人なんだ。きっと大将も酒飲みに違いない。この発想は下戸には無い。
甘味は水ようかん。終盤に濃厚な砂糖の塊を食べるよりも、こういったスっと溶けていく系のスイーツのほうが私は好き。品の良い甘さと共に、店主がその場で立ててくれるお抹茶で心地よいフィニッシュです。
以上をひと通り食べ、ビールとお酒を飲んでお会計は1万円ポッキリ。たまらん。何なんだこの費用対効果の良さは。お料理だけだと7千円という奇跡の価格設定であり、その金額の割にはかなり気前の良い食材使いです。
これはいい店だ。次回は夜にフルパワーのマックスコースでお邪魔したいと思います。

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京都はとにかく和食がリーズナブルですね。町全体の平均点が高いのはもちろん、費用対効果も良いことが多い。その文化に影響を受けてか、欧米系のレストランにも目が離せない魅力がある。
JR東海「そうだ京都、行こう。」20年間のポスターから写真・キャッチコピーを抜粋して一冊にまとめた本。京都の美しい写真と短いキャッチフレーズが面白く、こんなに簡潔な言葉で京都の社寺の魅力を表せるのかと思わず唸ってしまいます。

ファイヤーホール4000/麻布十番


絶品中華料理店、西麻布「4000 Chinese Restaurant」のセカンドライン「ファイヤーホール4000」が夏季限定で中華居酒屋を開催中。通常は五反田店と同じく火鍋の提供なのですが、2020年の夏に限っては「コロナを吹き飛ばす」のコンセプトのもと、実にリーズナブルな価格で営業してくれるという情報を入手。

ただし「夏季限定」が何月何日までを指すのかが不明なため、慌てて近所の港区女子をお誘いし、「13~19時までなら空いている」と暇なのか忙しいのかわからん回答を得、すぐ予約。
麻布十番商店街を六本木方面に進み、「マルゲラ」の上、「BULLS」と同じビルの5階です。
外飲みが気持ちよくなってきたのでテラス席にお邪魔しました。2卓しかないので屋外ながらちょっとした個室気分。ペット連れもOKのようです。
生ビールで乾杯。キレイなグラスで量もそこそこ多く、この立地で650円という価格設定なら悪くありません。飲み放題プランもあるようですが、私は明朝早くからディズニーランドに行くので軽めに軽めに。
大好物のよだれ鶏。さすがは超高級中華料理の系列だけあって抜かりない美味しさです。
加藤ポークのチャーシュー。私は当店が取り扱う「加藤ポーク」なる豚肉の美味しさを良くしっているため、真っ先に注文。食べて悶絶。想像以上に旨い。しっとりと水分を湛えながら弾力のある歯ざわり。甘い味付けに加えて肉そのものが旨い。本日一番のお皿です。
焼餃子は6粒で600円なのですが、これはめちゃんこ普通ですね。わざわざ注文する必要はないし、他の料理のクオリティを考えれば割高です。
魅惑の黒酢ソース酢鶏。鶏のから揚げを酢豚風に仕上げており安定の美味しさ。タレ(?)もたっぷりかけてくれ、ビールおかわりだ!

軽く飲み食いしたのでお会計はふたりで6~7千円に落ち着きました。おー、これはリーズナブルですねえ。この満足度は富麗華のセカンドラインである十番「紫玉蘭」での満足度に近いものがある。加えて当店の「加藤ポーク」は本当に絶品。私は加藤の回し者でも何でもありませんが、困惑するほど旨いので一度お試しあれ。

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当店の近所の中華料理店は下記の通り。どの店も圧倒的にランチがお得です。十番で中華は昼がオススメです。
  • 火鍋 三田 ←なんて素敵な地獄絵図。暑い夏に最適なレストラン。
  • 新中国家庭料理 浅野/麻布十番 ←杏仁豆腐が絶品。
  • 和チャイナ Roppongi/麻布十番 ←もっと早くに出会っていれば良かったと後悔するほどの納得感
  • 飄香 ←夜は高級店ですがランチは驚くほどリーズナブル!
  • 永新 ←単品モノは高いですが、スープの旨さに悶絶!
  • 登龍 ←ギョーザが1人前2,000円という地獄。
  • 御膳房 ←ここもランチ。ランチコースもありますが、一番安いセットメニューで充分。
  • 萬力屋 ←チェーン店ですが結構おいしくリーズナブル。
  • 北京 ←こういうお店、結構好き。
  • 富麗華 ←中国飯店グループの旗艦店。ですが、高いだけです。
  • 紫玉蘭 ←富麗華のセカンドライン。ランチは800円~と一気にお得に。
  • 麻布十番グルメまとめ ←ほぼ毎日、麻布十番で外食しています。その経験をオススメ店と共に大公開!
 
東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。雑誌なので売り切れ注意!

お茶と酒 たすき 新風館/烏丸御池(京都)

2020年6月11日に開業した烏丸御池駅に直結する「新風館」。エースホテルなどが入居する話題の複合施設です。
イマドキなテナントが多いのですが、最も話題をさらったのは祇園の有名かき氷屋「たすき」のテイクアウト専門店。祇園の本店は数時間待ちは当たり前といった異常な人気を博しているのですが、「より多くの方にかき氷を召し上がっていただきたい」という根源的な動機からこのような業態が実現したそうです。
テイクアウト専門店と言いつつも、ちょっとしたイートインスペースはあります。座って食べたい場合は列に並ぶ必要があるのですが、そうでない場合は店員に声をかければ待ち順列をすっ飛ばして注文を聞いてくれます。
ラインナップは伝統的なかき氷からアルコールを用いたもの、カクテルやビールなど少々大人に寄せています。酒を使ったかき氷は運転しちゃダメなレベルの度数なので、車で来た方は気を付けましょう。
我々は「抹茶みつ」と「焙じ茶みつ」を注文。いずれも千円弱です。祇園店では別添えの練乳をかけるらしいのですが、当店はテイクアウトで楽しみやすいよう、ホイップクリームと小豆は内部に組み込まれています。
「焙じ茶みつ」は思いのほか甘く、血糖値スパイクが約束されるレベルです。氷に滑らかさやフワフワ感はなく、どちらかというと伝統的なシャリシャリかき氷に近いタッチです。
「抹茶みつ」。こちらもお茶の苦みである程度マスキングされていますがかなり甘い。ちなみにこの銀色の器は銀紙でできておりそのまま捨てることができます。量はかなり多く、おやつであれば、ふたりでひとつをシェアするぐらいでちょうど良いかもしれません。
かき氷としては可もなく不可もなくまあこんなもんかというレベルですが、超人気店の商品がそれほど待つことなく手に入れることができるという意味では悪くないでしょう。午後は行列が途切れることはありませんが、夜間であれば結構ガラガラ。22時まで営業しているので、飲みの帰りのデザートに使用するのも良いかもしれません。

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男、かつ、左党の割にスイーツも大好きです。特にチョコレートが好きですね。JPHが基準なので、スイーツの評価は厳し目かもしれません。

難解な理論をユルいトーンで柔らかく読み解く専門書。チョコレートに係る基本的な素養から、文学や映画など芸能との関係まで解かり易く解説。ぜひチョコレートを食べながらのんびりと読んでみましょう。

ジャパ ソバ ハナコ(JAPA SOBA HANAKO)/麻布十番

麻布十番商店街を六本木方面へ向かい、ダイエーの手前を左折して坂を登るところにオープンした「ジャパ ソバ ハナコ(JAPA SOBA HANAKO)」。以前、タコ焼き居酒屋があったところです。「EBISU FRY BAR」の姉妹店であり、健康によくグルテンフリーな蕎麦の啓蒙を行う「ティ・アンド・ジー」グループの経営です。
店内はカウンター8席のみと小さい。その上コロナ的パーティションで区切られているため収納効率が悪く、場合によっては待つこともあるでしょう。そう、オープンしたばかりだというのに結構な人気なのです。
私は蕎麦と天ぷらのセットメニューを注文。まずは蕎麦から。「小麦粉などつなぎを使っていない、蕎麦粉100%の十割蕎麦です。お早目にどうぞ」と自信たっぷり。ちなみにこの蕎麦、店内で作られているのですが人間が打っているわけではなく、製麺機が作り出しているのです。
ヘンな言い方ですが、普通に美味しい。いやかなり美味しいです。蕎麦業界(?)は店も客も宗教じみた空気があってハードルは高めなのですが、機械でも全然美味しいじゃないかと拍子抜けする美味しさです。蕎麦粉は十和田湖産藪系蕎麦粉と中国産オーガニック更科粉を半分ずつ。
天ぷらもやはりヘンな言い方ですが、普通に美味しい。少なくとも「天や」レベルには達しており、蕎麦と天ぷらのセットで千円という価格設定を考えると最高峰の旨さではなかろうか。ちなみにこの天ぷらもグルテンフリーとのことでした。
蕎麦って満足感に乏しい割に妙に高くって、天ぷらと蕎麦のセットでも食べれば2千円前後は当たり前の世界ですが、当店は千円です千円。普通に旨くて千円。うーん、色々と考え込んでしまいました。ちょうどカウンターの鮨屋と回転寿司のような関係かもしれません。更科系を始めとする旧態依然とした十番蕎麦業界に一石を投じる存在になるでしょう。

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東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。Kindleだとスマホで読めるので便利です。

LURRA°(ルーラ)/東山(京都)

2019年夏にオープンしたイノベーティブ・フュージョン系のレストラン「LURRA°(ルーラ)」。東山の町家を改装したカッコイイお店であり、あまり深く考えずにジャケ予約しました。12席一斉スタートの2回転制であり東京っぽいオペレーション。実際この日のゲストは全員が東京からでした。
ニュージーランドのレストランで働いていた3人の同僚が意気投合して京都に創りあげたお店。ベンチャー企業のような闊達とした雰囲気のティームワークであり、誰が偉いのか誰が下っ端なのかわからないフラットな組織です。名刺誰から渡せばいいか困るやつです。従業員のほとんどが面積の広いタトゥーを入れており、レッドホットチリペッパーズのホームパーティにお邪魔したような気分。
当店は一通りのコース料理と飲み物のペアリングがついて総額3万円チョイ。お料理に合わせた飲み物を提供することが前提のパッケージ商品であり、一体的なものとして捉える必要があります。アルコールのラインナップはドンペリの無い81といったところであり、カクテルや日本酒多めのワインは少な目といった構成でした。
最初にチュロス。これは美味しいですねえ。うげげ最初から揚げ物かよと懐疑的に口にしたのですが、思いのほか軽くサクサクと食べ進めることができ、また、チーズの旨味やタマネギの甘味との組み合わせが素晴らしく、ひとつの料理として一体化して楽しむことができました。
続いて枝豆、ピスタチオ、湯葉、キャビアなど。うっかりキャビアに目が行きがちですが、枝豆の食感と逞しさ、湯葉の濃密な風味を楽しむ1品です。
トマトに山羊のチーズ、エルダーフラワー。トマトの中にはセミドライしたトマトが詰め込まれて凝縮感に溢れる酸味が印象的。山羊のチーズは自家製のものなんですが、もうちょっとパンチというか、山羊らしさがあっても良いと思う。
馬肉に牡蠣の風味を貼り付けて、パリパリと葉っぱを並べます。悪くないのですが、いつまでも手軽なフィンガーフードが続いているという印象もあり、もっと素材を前面に押し出しながらしっかりと量を食べたいなと思い始めた瞬間です。
鮎をLURRA°流に仕上げました。見た目は派手ですがシンプルな調味であり、鮎の苦みがしっかりと活きた調理です。鮎って美味しいけれど映えないことが多いので、このようなプレゼンテーションはお見事。

ところでLURRA°とはバスク語で「地球」という意味であり、最後のマルは新手のモーニング娘。ではなく地球を周る月を意味しているとのこと。ドラクエのルーラもバスク語から来てるんかな。
お野菜特集。京都北部の大原という地域の畑から獲れるものを美しく展開します。見た目はもちろん、ハーブやスパイスの使い方、塩加減などを含めセンスに溢れた1皿です。ちなみに当店の火入れにはガスを用いず、薪火での調理を徹底しています。
お肉は乳牛の経産牛。凝縮感があって逞しい味わいなのですが、ちょっと雑味が強いというか脂身の多いスルメ感があります。肉だけで食わすのであればもう少しクリアな個体のほうが私は好き。
〆のお食事はトウモロコシごはんを焼きおにぎりにしたお茶漬け。中華風のスープを注ぎ、万人受けする美味しさです。装飾のパリパリがチボリ公園の夜景みたい。
デザートは場所を移動してこの日のゲストみんなでひとつの丸テーブルを囲み、無理くりトークさせられるのですが、この仕組みは好きじゃありません。私は他人に身の上話をすることが苦手だし、かといって他人の自慢話を聞くのはもっと嫌。中目や上原、三茶あたりにいそうなクリエイティブ系の30代がサステナビリティについて語り合う空気感であり、特大の丸メガネは必修科目。港区おじさんとその女子みたいなのが来れば相当に浮くことでしょう。この席に移動したい人はすればいいし、苦手な人はカウンター席のままでいるという選択肢を残して欲しいところです。
他人の話なんか興味ないけど、かといってガン無視すると雰囲気を乱すしなあ、うわーなんか時計回りに自分の職業とか説明していく雰囲気じゃんやべーもうすぐこっちの番だトイレでも行くかうげートイレ誰か入ってんじゃんさては先に逃げやがったな、のようなお気持ちが脳内を支配していたので、デザートについては味もへったくれもありませんでした。
ちなみにトイレへのアプローチは一旦外に出て坪庭を経由します。ストックされた薪や象徴的に植えられた3本の木、空へとつながる丸い窓などカッコイイ。
席に戻ると未だに身の上話が続いていたので、ラストのスイーツをちょっぱやで頂いて逃げるように退店。このドーナッツは中に桃のアイスクリームが詰まっており美味しい気配があったのですが、やはり食べる環境というのは重要なのである。
かなり特殊なお店でした。飲食店として限定して見れば、食事はまあまあ美味しいレベルでありながら皿出しのテンポが悪く(何であんなにスタッフが大勢いるのに仕事が遅いんだ!)、食材や酒の質を考えれば3万円はちょっと高いなあというのが素直な感想です。

他方、味覚だけでなく体験や世界観を楽しむという意味では価値のあるお店であり、レストランという業態の在り方を世に問い、新しい世界を提案し続ける存在意義は大きい。ヒロユキ・マチダと共にどうぞ。

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