日本料理 山崎/富山

北陸で唯一3ツ星を獲得した「日本料理 山﨑」。富山では元々評判の良いお店だったそうですが、ミシュランやゴエミヨで高評価されたこともあり、全国の食通がその動向に目を光らせる事態となりました。

ちなみにコロナ禍においてはテイクアウトの弁当を1,000円で売り出すと暴挙に出、閑静な住宅にソーシャルディスタンスを保った行列が生じるなど、人気のほどが伺えます。
スダチを絞った白湯で唇を湿らせ、お食事が始まります。山崎浩治シェフは富山・東京・大阪・金沢などで経験を積み、30歳で地元の富山にて当店を開業。「やあやあいらっしゃい、どうぞゆっくりしてってください」と、毛唐の評価に奢ることなく気の置けない雰囲気です。
お酒はワインなどを除けばいずれも千円前後です。店主のマインドに釣られてか、従業員の皆さん全員が気さくに話しかけてくれ、手酌は許すまじと、バンバン注いでくれるため、お酒が進むなりよ。

大将が常駐するカウンター席の他、個室なども用意されており、部屋を繋げれば26席の大宴会にも対応できるとのこと。ミシュラン3ツ星で宴会憧れる。
食前酒の梅酒とアイスモンスターのような物体が登場。上からだばだばとお出汁を注ぎ「箸で崩しながら召し上がって下さい」とのこと。なんやこれ。
答えは新生姜の葛切りでした。おおー、これは度肝を抜かれるプレゼンテーション!外気の暑さをうっちゃる氷の涼しさにショウガのきいた葛切りの爽やかさ。お出汁の味もしっかりとしていて、まさに心を奪われる1品でした。
お椀はハモしんじょう。正統的な味わいのお出汁にギュっと成型さえたハモのしんじょう。ハモってグロめな見栄えが当たり前とされていますが、当店のそれはケータイのストラップにしても良さそうなほどキュートです。レンコンならびにジュンサイの舌ざわりも楽しい。
お刺身はキジハタにバイガイ。キジハタの中にはシロエビというか、たっぷりのシロエビをキジハタで巻いてのご対面であり、これぞ北陸の美点ともいうべき鮮魚のクオリティでした。
鮎はまずはヘッドからかぶりつき、苦みのきいたビールにぴったり。ミドルからバックにかけては蓼酢(たでず)にチョイチョイつけながら大人の味わいです。
白トウモロコシの豆腐(?)の茶碗蒸し。かなりややこしい料理ではありますが、白トウモロコシの味わいがストレートに伝わる逸品。こういう、主題がハッキリとした料理を私はとても好むのです。
お食事は新生姜ごはん。土鍋で丁寧に炊かれたゴハンにショウガ・ヒジキ・そぼろ肉など。もちろんおかわりOKであり、食べきれない場合はおにぎりにして持って帰ることもできます。
お味噌汁は海苔の風味が強く美味。お漬物も当然に自家製であり、いずれも質の高さが伺えます。
デザートは新生姜のプリン。ショウガ特集というわけではありませんが、こうして食材を重ねてくれるとあの日あの時あの場所で何を食べたか強く記憶に残って良いですね。
お茶菓子は枝豆のおまんじゅう。ずんだ餅とはまた違う、甘さは控えめで豆の風味を大切にしたものであり、塩気を聞かせれば前菜のひとつとしても提供できそうな完成度を誇ります。
抹茶を頂いてごちそうさまでした。1万円のコース料理に少し飲んで1.4万円ほど。おおー、この店構えと料理でこの支払金額は大変リーズナブル。なんたってミシュラン3ツ星和食がこの価格で楽しめるのは富山の奇跡と言えるでしょう。これは1万円でなく1.8万円ひいては3万円のコースにすれば良かったと後悔。食べログ的には3.5ポイントとしましたが、これは1万円のコースとしてであり、夜に訪れより高価なコースを注文すれば4点超えは確実という予感がしたランチでした。

食べログ グルメブログランキング


関連記事
和食は料理ジャンルとして突出して高いです。「飲んで食べて1万円ぐらいでオススメの和食ない?」みたいなことを聞かれると、1万円で良い和食なんてありませんよ、と答えるようにしているのですが、「お前は感覚がズレている」となぜか非難されるのが心外。ほんとだから。そんな中でもバランス良く感じたお店は下記の通りです。
黒木純さんの著作。「そんなのつくれねーよ」と突っ込みたくなる奇をてらったレシピ本とは異なり、家庭で食べる、誰でも知っている「おかず」に集中特化した読み応えのある本です。トウモロコシご飯の造り方も惜しみなく公開中。彼がここにまで至るストーリーが描かれたエッセイも魅力的。