ウシマル(Ushimaru)/山武市(千葉)

走り屋の女の子が車でどこへでも連れて行ってくれるというので、九十九里浜から少し内陸に入った千葉県山武市にある「ウシマル(Ushimaru)」を予約。食べログ4.27でブロンズメダル獲得の実力店です。
さすが走り屋、レース仕様の外車を巧みに操り迷いなく車線変更を繰り返し、追い越し追い抜きを重ねながらぶっ飛ばし続けます。周りの車が止まって見えるため、不思議と恐怖は感じません。
光の速さで移動したため、予約時間よりもかなり前に到着してしまいました。レストランの駐車場で待つのもアレなので、近くの「道の駅 オライはすぬま」で時間を潰します。
入店時はマスク着用、アルコール消毒必須と注文の多い道の駅。「お買い物の有無に関わらず必ずカゴを持って入店して下さい」という謎ルールが新鮮。
しかし人間というのは不思議なもので、カゴを手に取ると何故だか購買意欲が掻き立てられるのです。車で来ているということもあって、なんやかんやで野菜を大量に購入してしまいました。オライの思う壺である。
本題に入りましょう。地産地消を千産千消と謳う「ウシマル(Ushimaru)」。のどかな田園風景の中にある一軒家レストランであり、まるでフランスのオーベルジュを訪れたかのようです。
友人の別荘に遊びに来たかのような雰囲気の店内。ピアノの上にあるチーバくん(千葉県のマスコットキャラクター)が印象的。この立地の平日ランチで満席と、人気のほどが窺えます。

打矢健シェフは都内や軽井沢のイタリアンレストランで経験を積んだ後に当レストランのシェフに。自ら農家や漁師の元を駆け周り、その日の旬の食材での料理を繰り広げます。
運転の無い私は遠慮なく8千円のアルコールペアリングを注文。立地の割に(失礼)強気の価格設定ですが、これらのペアリングの量も質もマリアージュもすこぶる良い。
連れは6千円のノンアルコールペアリング。ジュースやお茶を出すだけでなくカキ氷ふうにしたりシャーベット状にしたりとアルコールペアリング以上に凝っています。「ここのノンアルコールペアリングはかなりいい。茶禅華のペアリングは草」とは彼女の談。
地元のキノコとエンドウ豆で開幕。緑の味わいが濃密で美味。
九十九里の天然の岩牡蠣。ぐわー、これはもう、めっちゃんこ旨いですねえ。火を通した後に冷やしているのにこのサイズ感。藁で燻した香りに濃密な海の旨味。本日一番のお皿でした。
やはり地元の伊勢海老にフカヒレ。素材を活かしたシンプルな調理であり、おおー、海老ってやっぱ甘いなあと思わず唸る1皿です。
地元のアワビ。先の伊勢海老やフカヒレと同様に素朴な調理ではありますが、素材の味覚が最強です。「でも、このヌルヌルした食感の草は要らなくない?アワビだけでいいや」とは彼女の談である。
コノシロ。コハダがおっきくなった魚ですが、鮨屋のように強烈な酢締めはしておらず、なるほどコノシロそのものの味とはこういうものなのかと気づきを与えてくれる1皿です。
自家菜園のアーティチョークに山ワサビ。一般的なアーティチョークよりもギュっと小さく丸まったような個体であり凝縮感があります。
やはりこの辺りで採れたキノコ。サイズは小さいものの香りが強く、旨味と甘味を感じます。千葉って地味にすごいなあ。海も山もあって、東京も近い。
フォカッチャが焼きあがりました。まるで座布団のようなサイズであり、切り分けるだけで湯気が立ち上り嬌声が上がります。店内のゲストが一体となった瞬間です。
近くで採れた貝。カタツムリのような外観がグロめですが、味そのものはナイス。添えられたキュウリの青い味わいが実に爽やか。
花ズッキーニにチーズを詰め、シラスのお出汁を注ぎます。このシラスのスープが濃厚で、シラスを直で食べるよりもシラスの味がします。トロりととろけるチーズの食感もグッド。記憶に残る1皿でした。
ついさっきまで生きていたイシダイに軽く火を通します。調味はごくごく控えめであり、食材の上質さがダイレクトに伝わってきます。「でも、このヌルヌルしたおかひじきは要らなくない?」とは連れの談。彼女と濃厚接触する際はヌルヌルしないように気を付けよう。
自家菜園のサラダでメインディッシュへと内臓を整えます。野菜の味が濃く、大地の力やパワーを強く感じました。コーンのヒゲの部分が地味に旨い。
メインディッシュじゃジャージー牛のロースにナントカ豚(忘れた)のソーセージ。牛につき、状貌はパワフルなのですが味わいは実にクリア。他方、ソーセージは濃厚にして濃密な味わいであり脂が旨い。私があまりによく飲むため、スタッフたちが面白がってジャンジャカ酒を持って来てくれるのも最高に楽しい。
自家菜園のハーブを用いたグラニテでお口を整え、、、
千葉県産の小麦を用いた手打ちパスタでフィニッシュ。メガ大中小とサイズを指定できるので、大盛りでオーダー。トマトの強さを前面に押し出したシンプルな味付けなのですが、とにかく麺が美味しいですね。これぞパスタとも言うべき、小麦を楽しむ1皿です。
ところでオーナーの実家が酪農家らしく、デザートには絞りたての新鮮な牛乳を用いたヨーグルト風味のジェラートが登場しました。乳を強く感じる味覚であり、デザートながらパワフルな味わいです。
コーヒーで〆てごちそうさまでした。11時半に頂きますで15時過ぎにごちそうさま。そんなに長く食べていたのかと驚くほど、あっという間に過ぎ去ったランチタイムでした。料理の素晴らしさについては既に述べましたが、都心の気取りくさった雰囲気は一切ない心温まるサービスも絶妙。これでひとりあたり2万円強というのは見事な費用対効果です。

和歌山の「ヴィラ・アイーダ(Villa AiDA)」にせよ、NYの「Blue Hill At Stone Barns」にせよ、レストランの最終形態は「田舎の一軒家」に尽きるのではないかと強く意識した食体験。ちょっとした海外旅行に来たような満足感があるお店でした。オススメ!

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